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男女のあいだに「対等な関係」は成り立つか?

 ぼくは「成り立つはずだ」と思うのだ。が、完全な形でそれを描いた作品は、まだほとんど見ない。

①インターネットはやめられない

 苦虫うさるさんの記事「「男向けバトルモノ」と「女性向け恋愛モノ」を分けるのは「その人の魂とは何なのか」という価値観である。」を読んだ。

 あまりに面白かったので、さかのぼって「「少女漫画の恋愛モノ」と「少年(青年)漫画のバトルモノ」は、だいたい同じことをしているのではないか。」も読み耽った。

 こちらもたいへん面白い。

 ぼくが色々な物語について考えてきたこととかなり近い論考でありながら、根本的なところで違っていて、自分の発想と照らし合わせることで非常に理解が進む。

 とても納得度が高く、なおかつ勉強になった。こういう記事と出逢えることがあるからネットはやめられない。ありがとうございました。

 これらは「男性向け」とされる物語(主に少年マンガのバトルもの)と「女性向け」とされる物語(主に少女マンガの恋愛もの)が「同じ構造を持っている」と指摘する内容で、慧眼だと思う。

②「対等の相手との一対一での全力のコミュニケーション」と「装飾」

 上記の記事ではこう書かれている。

 「男性向け」におけるバトル、「女性向け」における恋愛の本質はともに「対等の相手との一対一での全力のコミュニケーション」であり、それがバトルであるとか恋愛であるとかは「装飾」に過ぎない、と。

 くりかえすが、慧眼である。素晴らしい。この整理は自分のなかになかった。

「対等の相手との一対一での全力のコミュニケーションをすることで、己を知る道筋」が女性向けにおいては「恋愛」、男向けにおいては「バトル(闘争)」という装飾をされることが多いのは何故か。

以前「アンチマン」の記事で書いたように、「物理的に強く性欲も強いため、男は『男らしさ』という『枷』を社会的にも内面的にもはめられている。そのため女性相手に全力で相対することが出来ない」からだ。

 一般的に男性は女性と比べて、物理的に(つまり肉体的に)強い。それにもかかわらず、女性に対して強い欲望を抱くようにできている。

 ゆえに、男性がそのまま行動したら女性を傷つけてしまう。これは「社会的に」許容されない行為である。そのため、社会の要請に従って「男らしさ」という概念が用意された。そういうことだろう。

 なるほど、わかりやすい。

③先天的な男らしさ(暴力的な欲望)と後天的な男らしさ(「道」)

 ただ、ここで少し混乱する読者もいるのではないかと思う。

 ここでいう「男らしさ」とは、何らかの「社会的な禁忌」、つまり男性が自分のなかにいる猛獣のような欲望をコントロールするための「枷」を指しているわけだが、一般的にはその「欲望」をコントロールしようとせず、欲望のままに行動する態度も「男らしい」とされるからである。

 わかりやすいのは、『刃牙』の範馬勇次郎だ。勇次郎は作中できわめて「男らしい」とされるキャラクターだが、自分の欲望をコントロールすることをしない。

 平気で女性を(男性も)殺すし、レイプするその態度こそが、「とても男らしい」とみなされるわけである。

 かれは自分のなかの欲望に忠実に従っているという意味で非常に男らしいが、社会的規範としての「男らしさ」はまったくそなえていないといういいかたでも良いだろう。

 この前者と後者の「男らしさ」は、分けて名づけたほうがわかりやすいのではないか、と(余計なことながら)感じた。

 ここでは仮に前者を「先天的な男らしさ」、後者を「後天的な男らしさ」と呼ぶことにしよう。

 男性が社会的な存在であるためには「先天的な男らしさ」を飼いならし「後天的な男らしさ」を身につける必要がある。

 同じように「男らしい」とされていても、先天的な意味で男らしいキャラクターと後天的な意味で男らしいキャラクターはまったく異なっている。

 一般的にいって少年マンガのヒーローは「先天的な男らしさ」と「後天的な男らしさ」のあいだで揺れ動いているといえるだろう。

 ちなみに、「後天的な男らしさ」は極限のところまで洗練されると、武士道とか騎士道といった「道」と呼ばれるようになる。

④「宿敵」と書いて「とも」と読む

 さて、一般論として、その物理的な優位性のために男性は女性に対して「全力を出す」ことができない。

 つまり、究極的に突き詰めたとき、男性にとって女性は「対等な存在」ではありえない(ここは異論があるかもしれないけれど、あくまでフィクションにおける性差の問題を一般論として語っているに過ぎないので、とりあえず呑み込んでもらえれば嬉しいです)。

 多くの物語において、男性にとって対等な存在は、同じ男性である。

 いくらでも例が挙げられるのだが、不動明にとっての飛鳥良(『デビルマン』)。ガッツにとってのグリフィス(『ベルセルク』)。ロイエンタールにとってのミッターマイヤー(『銀河英雄伝説』)。

 これらの物語では、ともに最高の親友でもあり最大の敵手でもあるような「対等な」関係が描かれている。「宿敵」と書いて「とも」と呼ぶ、というアレだ。

⑤「対等な関係」は揺らぎつづける

 ただし、これは重要なことだが、これらの関係は決して「対等」なまま安定しているわけではない。

 この関係を構成する両者はふたりとも全力を出して成長していっているので、初めは釣り合っていた力関係が崩れることがありえる。

 これは上記の記事で例に挙げられている『ベルセルク』や『バガボンド』がわかりやすい。ひとりの力量がもうひとりを圧倒的に上回ったとき、その「対等な関係」はもろくも崩れ去ってしまうわけだ。

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 『ベルセルク』の場合、ガッツの力量がグリフィスを上回った結果、ふたりの友人関係は崩壊し、それを嫌ったグリフィスはすべてを捨て「ゴッドハンド」になることによってもとの関係を回復しようとした。

 ところが、そうなったらなったでこんどはグリフィスのほうがガッツに対し優位に立つこととなり、ガッツは窮地に追い込まれる。

 つまり、男性と男性の「対等な」関係とは、このように果てしなく続くパワーゲームが、瞬間的にかろうじて均衡を保っているように見える状態のことをいうのだ。

 それは最高の親友ともいえるし、最大の宿敵ともいえる。というか、親友とか宿敵というのは他者がその関係に貼りつけるわかりやすいラベルであるに過ぎず、本質的には「一対一での全力のコミュニケーション」を行うことが可能な「対等な相手」ということになるだろう。

 だから、たとえばアムロとシャアはたがいを見つけた瞬間に殺し合おうとするのである。あれがかれらのコミュニケーションなのだ(ぶっそうな奴らだな!)。

⑥男性同士の「対等な関係」から女性は排除される

 こういった「対等な関係」において、女性はまったくの蚊帳の外である。それこそ『機動戦士ガンダム 逆襲のシャア』あたりが端的だが、他にも無数に例がある。

 曽田正人の『シャカリキ!』で、全力を出したレース中に、心から惚れているはずの女性と目があった選手が興味なさげにぷいと視線を逸らす、というシーンがあったが、あれは「対等な相手」との「一対一での全力のコミュニケーション」に比べれば女性との「手加減した」関係は生ぬるい、という少年マンガ的な表現だったのだと思う。

 先述の『ベルセルク』においてもキャスカはガッツやグリフィスから「対等な」存在として尊重されているようには見えない。

 少年マンガにおいて最も重要なのは「少年」どうしの「対等な」関係であって、構造的に全力を出すことができない女性との恋愛は二の次だ、ということがわかる。

 少年マンガにも恋愛ものはあるじゃないか、といわれるかもしれないが、上記リンク先の記事でも書かれている通り、その物語は構造的にまったく異なるものである。

 それでは、物語のなかにおいて、男性と女性はどこまでも「対等」ではありえないのだろうか?

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⑦クリアーな視界でものごとを見る

 そういうわけで、この下は有料箇所。

 まだまだ書きたいことはたくさんあるのだが、何について話をしよう?

 そう、無料箇所では「少年マンガのバトルもの」について語ったので、ここでは「少女マンガの恋愛もの」の話をするとしよう。

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