トランプが目論む「ウクライナ停戦」の行方…「プーチンを交渉の場に引きずり出す」ことはできるのか
トランプのディール(取引)
トランプは、東欧の同盟国に対するアメリカの支援の対価として、ウクライナのレアアース資源を入手する案をあたためているという。トランプ自身は、これを「ディール」と称している。トランプは、今後のウクライナ支援は融資と位置づけられるべきだとしており、見返りのない支援はしないという方針である。ゼレンスキーは、この問題も協議するとしている。 アメリカの武器支援が止めば、ウクライナは戦争を継続することはできない。ヨーロッパ諸国による援助には限界がある。一方、ロシアは、石油や天然ガスなどのエネルギー資源、小麦などの食糧資源など豊富であり、また核兵器も保有している。ロシアが敗北することを想定するのは困難である。 トランプは、アメリカ第一主義を掲げて、対ウクライナ支援の規模を縮小する。負担は、ヨーロッパ諸国に押しつける。 ヨーロッパのNATO加盟国の2023年の国防費については、30ヵ国のうち19ヵ国がGDP比の2%という基準に達していない。ドイツ、ノルウェー、フランスなどである。 これに対して、バルト3国、ルーマニア、ハンガリー、フィンランドは2.3~2.7%、ポーランドは3.9%である。このように防衛費を増やしているのは、ウクライナ戦争でロシアに勝利させると、ロシアがバルト三国をはじめ隣接する諸国を次の侵略の標的にする可能性が高まるからである。 昨年の2月、サウスカロライナ州で開かれた選挙集会で、トランプは「NATO各国は軍事費を十分に負担していない。彼らが払わないのであれば我々は防衛しない」と述べている。トランプは、NATOのためのアメリカの負担が重すぎるという認識である。
停戦の条件
トランプがどのような停戦案を提示してくるかは不明だが、ロシアとウクライナの主張を再検討してみよう。 ロシアにとっては、ウクライナのNATO加盟は絶対に許されない。かつてはソ連の傘下でワルシャワ機構軍に参加していた東欧の衛星国が、ベルリンの壁崩壊後、次々とNATOに加盟するという屈辱的な経験を重ねてきた。国境を接するウクライナは最後の聖域なのである。 ところが、ゼレンスキーがそのタブーを破ろうとした。そこで、3年前に軍事侵攻を敢行したのである。したがって、停戦交渉に臨むロシアは、欧米諸国によるウクライナへの軍事支援を削減するとともに、ウクライナがNATOに加盟しないという確約を求める。ロシアが「ファシスト」と呼ぶウクライナ民族主義者の活動を停止させる。クリミアは当然のこと、東部などロシアが占領している地域(ロシア系住民が多く住む)をロシア領とする。 しかし、一方的に侵略してきたのはロシアであり、ウクライナがそのような条件を受け入れるはずはない。 アメリカは、ウクライナのNATO加盟交渉を20年間は保留する、引き続きウクライナに武器支援を続ける、ロシアが占領している地域は現状で固定するという案を考えているようである。武器支援継続は、プーチンを交渉の場に引きずり出すための脅しである。 副大統領のバンスによると、トランプはウクライナ領内に非武装地帯を設けるという。それは、ロシアが現在の占領地を維持することを意味する。また、トランプはウクライナを中立化し、NATOへの加盟は拒否する方針だという。 このバンスの説明のほうがトランプの本音に近いのではあるまいか。しかし、これはウクライナにとっては、あまりにもロシア寄りであり、受け入れがたいものである。