トランプが目論む「ウクライナ停戦」の行方…「プーチンを交渉の場に引きずり出す」ことはできるのか
反故にされたブダペスト合意
ソ連時代のウクライナは世界第三位の核大国であったが、ソ連邦崩壊後の1994年12月5日に署名された「ブダペスト覚書(合意)」によって、ベラルーシ、カザフスタンと共に非核化され、核拡散防止条約(NPT)に加盟した。三カ国の核兵器はロシアに移管された。 アメリカ、イギリス、ロシアの合意によるもので、非核化の代償として、この英米露三カ国が非核化された国々の安全を保障するという約束であった。 しかし、その保障が全く効果をもたらさなかったことは、ウクライナのその後を見ればよく分かる。2014年3月にはロシアがクリミア半島を併合し、2022年2月には、ロシアがウクライナに軍事侵攻した。 昨年10月、ゼレンスキーは、ブダペスト合意に触れて、「核大国のどこが攻撃されたか。核兵器を放棄したウクライナだけだ」と述べ、「ウクライナは核兵器を持って防衛するか、それとも何らかの同盟を持つしかない。NATO以外の効果的な同盟を私たちは知らない」と強調した。 ウクライナでは、「核を手放すべきではなかった」という批判的な意見も多い。 ブダペスト合意による非核化によって、ウクライナでは、核関連の技術者や科学者が大量に失職してしまった。それに目をつけたのが北朝鮮で、彼らをリクルートしたり、古い潜水艦を購入したりしたのである。 金正恩は、もしウクライナがソ連邦時代のように核兵器を持っていたら、プーチンも容易には侵攻できなかっただろうと思ったはずである。だから、ウクライナの二の舞にならないためには、核武装しかないと再認識したと考えてよい。 アメリカが支援を止めれば、ウクライナは戦争を継続することはできなくなるが、ウクライナにとってあまりにも不利な停戦は今後に大きな禍根を残すことになる。トランプ政権が主導する今後の停戦交渉の行方が注目される。
舛添 要一(国際政治学者)