皇居・宮殿 知られざる美の世界

皇居・宮殿 知られざる美の世界
国の公的な儀式や宮中行事が行われる皇居・宮殿。

私たちが皇室関連ニュースでよく取材する現場ですが、テレビ画面に映し出されるのは、実はほんの一部。

「日本の顔」とも言えるこの建物の美しさを多くの人に知って欲しいと思い、宮内庁の許可を得て、最新の機材で計9日間じっくりと撮影しました。

招かれた賓客の目線で、宮殿を歩いてみましょう。

(社会部 橋本佳名美・映像センター 佐々倉大)

威厳より親愛を 荘重より平明を

この言葉は、国民に親しまれるものにすることを目指した宮殿造営のコンセプト。

大屋根と柱、はりで構成される日本古来の建築美を生かしたつくりになっています。

鉄骨鉄筋コンクリート造りの地上2階地下1階。延べ面積は、2万4175平方メートルあります。

完成したのは、高度経済成長期の昭和43年。第二次世界大戦の空襲で焼失した前の宮殿に代わって建設されたため、当時は「新宮殿」と呼ばれました。

麗しき “宮殿の玄関口”

ここは、天皇皇后両陛下が国賓など外国からの賓客を出迎えられる「南車寄」です。

さぁ、中に入ってみましょう。
建物に入ったところにある玄関ホール、広さ528平方メートルの「南溜」です。

2基の大シャンデリアが目を引きます。1基あたり3485個のクリスタルガラスが使われていて、直径3メートル、高さ2.14メートル、重さは1基2.3トンあります。

床には山口県産の「松葉石」と呼ばれる黒御影石、壁面には宮崎県産の日向松と沖縄県産の勝連と呼ばれる大理石が使われています。奥には、緑豊かな庭が見えます。
階段を上ったところにある、広さ248平方メートルの「波の間」。

縦およそ3.8メートル、横およそ14.3メートルの巨大な壁画、日本画家・東山魁夷が描いた「朝明けの潮」が訪れた人を出迎えます。

山口県の青海島の岩をモデルにしたとされ、顔料には金やプラチナなどが使われているといいます。
宮殿は、「正殿」を中心に7つの棟で構成されています。

ご覧いただいた南溜や波の間は、一般参賀の会場となる「東庭」に面した「長和殿」にあります。

東庭は、広さおよそ1万5000平方メートル。

宮殿の玄関口にあたる長和殿は長さおよそ160メートルあり、北側には国内の賓客が参入する際の玄関として使われる「北車寄」もあります。
長和殿には、このほか、天皇誕生日などに際して記者会見が行われる広さ245平方メートルの「石橋の間」などがあります。

この部屋には、能を題材にした「石橋」など日本画家・前田青邨作の絵画が飾られています。

正殿へと続く 長い回廊

では、正殿に向かって進んでいきましょう。
長和殿と正殿を結ぶ、長さ74メートル、幅6.6メートルの通路、「回廊」。

国賓などが来日した際、両陛下が賓客とともに進まれるこの場所からは、左右それぞれ、趣の異なる庭の眺めが楽しめます。
回廊の突き当たりにある絵は季節や行事に応じて掛け替えられ、新年と天皇誕生日、国賓来日の際は、日本画家・奥村土牛作の「富士」が飾られます。
回廊の北側にある「中庭」は、広さおよそ4800平方メートル。白那智石が敷かれ、紅白の梅が対角線上に植えられています。

皇位継承に伴って、令和元年秋に天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿の儀」が行われた際は、参列した外国の元首や王族などが、この中庭越しに、古式ゆかしい儀式の様子を見守りました。
回廊の南側に広がる「南庭」は、自然の山の趣を大切にした緑豊かな庭です。

元々の地形の高低差をいかした流れがあり、渓谷の趣があります。今も周辺にはホタルが生息しているといいます。
正殿で儀式や行事に臨む前の休所として使われている、広さ66平方メートルの「千草の間」と85平方メートルの「千鳥の間」。

宮殿では唯一の曲面天井で、通常は間仕切りのふすまを開けて1部屋として使われています。

南庭に面していて、渓流の音が聞こえてきます。

最も格式高い 正殿

正殿には、松・竹・梅の3つの部屋があります。
「竹の間」は、広さ182平方メートル。

国賓との会見や外国首相や離任大使との引見、それに赴任大使や国内各界功労者との拝謁などに使われます。

また、宮中祭祀の「節折の儀」もこの部屋で行われています。
こちらは、この竹の間の扉の把手飾台座です。黒田辰秋作の螺鈿で、室内側には日本産蝶貝が、外側にはメキシコ産あわび貝が使われています。

室内には、絵画「竹」(福田平八郎作)と、ひときわ目を引く高さ1.5メートル余りの「緑地金襴手飾壺」(加藤土師萌作)が飾られています。
正殿の中央に位置する「松の間」は、宮殿内で最も格式高い部屋です。

平成と令和の時代の天皇の即位の儀式が執り行われたほか、内閣総理大臣と最高裁判所長官の親任式、新任の外国大使の信任状捧呈式、勲章や文化勲章の親授式、新年祝賀の儀、それに歌会始などの儀式に使われています。

ニュースで目にする映像は、実は両側の壁面に設けられた「報道室」からガラス越しに撮影しています。

宮殿内で唯一の板張りの部屋で、幅およそ80センチメートルのけやき材の板が87枚並べられています。儀式の際には、広さ370平方メートルのこの空間に、出席者のカツカツという靴音が響き渡ります。
正殿の東廊下には、「桜」(橋本明治作)と「楓」(山口蓬春作)が描かれた2面の大杉戸があります。

「梅の間」(152平方メートル)は皇后誕生日の祝賀で使われていて、正殿の奥には天皇陛下が公的な事務を執られる部屋や侍従らの控え室がある「表御座所棟」があります。

宮中晩さん会が開かれる饗宴の間

北側にある「豊明殿」は、広さ915平方メートル。宮中晩さん会の会場となる、宮殿で最も広い部屋です。部屋の名前は、昔の宮中の饗宴の一つ「豊明節会」にちなんだものとされています。

天井は32のクリスタルガラス製シャンデリアに彩られ、床には杉山寧作の「草」を図案化した手織りのじゅうたんが敷かれています。

天皇誕生日の宴会の儀やその他大人数の宴会、勲章受章者の拝謁などの場としても使われています。
正面の壁画は、中村岳陵作の原画によるつづれ織の「豊幡雲」です。

西陣織などを手がける京都の会社が織り上げました。

変幻自在の小食堂 連翠

外国からの賓客をもてなす昼食会などが開かれる「連翠」。

この部屋がある棟が、道潅濠や紅葉山、それに吹上御苑の緑に連なる場所にあることから、中国の古い詩からとってこう名づけられたとされています。

桂離宮にある白と濃い青の市松模様のふすまをモデルとした4段の無双窓が印象的なこの部屋には、ある仕掛けがあります。
部屋の中央にある壁は、上下に動かせるようになっているんです。

壁を下げると、広さ371平方メートルと大人数の行事にも対応できるようになります。

最新の映像技術で宮殿を再現

今回の撮影では、宮殿の姿を後世に残すため、3D映像化にも取り組みました。
様々な角度から撮影した写真を解析し立体モデルを作成する「フォトグラメトリー」と呼ばれる手法です。

建物や空間の3Dスキャンと、8K画像によって、原寸大で正確に再現しました。まるで現場にいるようなリアルな質感の映像表現ができます。

今回のプロジェクトでは、このほかにも、ふだん目にすることができない皇居内のさまざまな「美」を撮影することができました。

その内容は、
2月16日(日)の「おはよう日本」で放送しました。↓↓↓
また、番組「美の壺スペシャル 皇居」(BSP4K=2月22日(土)夜7:30~、BS=3月1日(土)夜7:30~)、17日(月)以降の「午後LIVEニュースーン」17日(月)でも放送します。

「美の壺」番組サイトはこちら↓↓↓
社会部記者
橋本 佳名美
2010年入局
司法担当などを経て、2021年から皇室担当
映像センター チーフカメラマン
佐々倉大
1997年入局
皇位継承に伴う儀式など皇室関連ニュースの撮影を数多く担当
皇居・宮殿 知られざる美の世界

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特集
皇居・宮殿 知られざる美の世界

国の公的な儀式や宮中行事が行われる皇居・宮殿。

私たちが皇室関連ニュースでよく取材する現場ですが、テレビ画面に映し出されるのは、実はほんの一部。

「日本の顔」とも言えるこの建物の美しさを多くの人に知って欲しいと思い、宮内庁の許可を得て、最新の機材で計9日間じっくりと撮影しました。

招かれた賓客の目線で、宮殿を歩いてみましょう。

(社会部 橋本佳名美・映像センター 佐々倉大)

威厳より親愛を 荘重より平明を

威厳より親愛を 荘重より平明を
この言葉は、国民に親しまれるものにすることを目指した宮殿造営のコンセプト。

大屋根と柱、はりで構成される日本古来の建築美を生かしたつくりになっています。

鉄骨鉄筋コンクリート造りの地上2階地下1階。延べ面積は、2万4175平方メートルあります。

完成したのは、高度経済成長期の昭和43年。第二次世界大戦の空襲で焼失した前の宮殿に代わって建設されたため、当時は「新宮殿」と呼ばれました。

麗しき “宮殿の玄関口”

ここは、天皇皇后両陛下が国賓など外国からの賓客を出迎えられる「南車寄」です。

さぁ、中に入ってみましょう。
画像をクリックしてみてください
建物に入ったところにある玄関ホール、広さ528平方メートルの「南溜」です。

2基の大シャンデリアが目を引きます。1基あたり3485個のクリスタルガラスが使われていて、直径3メートル、高さ2.14メートル、重さは1基2.3トンあります。

床には山口県産の「松葉石」と呼ばれる黒御影石、壁面には宮崎県産の日向松と沖縄県産の勝連と呼ばれる大理石が使われています。奥には、緑豊かな庭が見えます。
波の間
階段を上ったところにある、広さ248平方メートルの「波の間」。

縦およそ3.8メートル、横およそ14.3メートルの巨大な壁画、日本画家・東山魁夷が描いた「朝明けの潮」が訪れた人を出迎えます。

山口県の青海島の岩をモデルにしたとされ、顔料には金やプラチナなどが使われているといいます。
宮殿は、「正殿」を中心に7つの棟で構成されています。

ご覧いただいた南溜や波の間は、一般参賀の会場となる「東庭」に面した「長和殿」にあります。

東庭は、広さおよそ1万5000平方メートル。

宮殿の玄関口にあたる長和殿は長さおよそ160メートルあり、北側には国内の賓客が参入する際の玄関として使われる「北車寄」もあります。
石橋の間
長和殿には、このほか、天皇誕生日などに際して記者会見が行われる広さ245平方メートルの「石橋の間」などがあります。

この部屋には、能を題材にした「石橋」など日本画家・前田青邨作の絵画が飾られています。

正殿へと続く 長い回廊

では、正殿に向かって進んでいきましょう。
回廊(画像をクリックしてみてください)
長和殿と正殿を結ぶ、長さ74メートル、幅6.6メートルの通路、「回廊」。

国賓などが来日した際、両陛下が賓客とともに進まれるこの場所からは、左右それぞれ、趣の異なる庭の眺めが楽しめます。
奥村土牛作 「富士」
回廊の突き当たりにある絵は季節や行事に応じて掛け替えられ、新年と天皇誕生日、国賓来日の際は、日本画家・奥村土牛作の「富士」が飾られます。
正殿の前に広がる中庭
回廊の北側にある「中庭」は、広さおよそ4800平方メートル。白那智石が敷かれ、紅白の梅が対角線上に植えられています。

皇位継承に伴って、令和元年秋に天皇陛下が即位を内外に宣言される「即位礼正殿の儀」が行われた際は、参列した外国の元首や王族などが、この中庭越しに、古式ゆかしい儀式の様子を見守りました。
南庭
回廊の南側に広がる「南庭」は、自然の山の趣を大切にした緑豊かな庭です。

元々の地形の高低差をいかした流れがあり、渓谷の趣があります。今も周辺にはホタルが生息しているといいます。
千草の間(奥)・千鳥の間(手前)
正殿で儀式や行事に臨む前の休所として使われている、広さ66平方メートルの「千草の間」と85平方メートルの「千鳥の間」。

宮殿では唯一の曲面天井で、通常は間仕切りのふすまを開けて1部屋として使われています。

南庭に面していて、渓流の音が聞こえてきます。

最も格式高い 正殿

正殿には、松・竹・梅の3つの部屋があります。
竹の間
「竹の間」は、広さ182平方メートル。

国賓との会見や外国首相や離任大使との引見、それに赴任大使や国内各界功労者との拝謁などに使われます。

また、宮中祭祀の「節折の儀」もこの部屋で行われています。
「竹の間」の扉(画像をクリックしてみてください)
こちらは、この竹の間の扉の把手飾台座です。黒田辰秋作の螺鈿で、室内側には日本産蝶貝が、外側にはメキシコ産あわび貝が使われています。

室内には、絵画「竹」(福田平八郎作)と、ひときわ目を引く高さ1.5メートル余りの「緑地金襴手飾壺」(加藤土師萌作)が飾られています。
松の間
正殿の中央に位置する「松の間」は、宮殿内で最も格式高い部屋です。

平成と令和の時代の天皇の即位の儀式が執り行われたほか、内閣総理大臣と最高裁判所長官の親任式、新任の外国大使の信任状捧呈式、勲章や文化勲章の親授式、新年祝賀の儀、それに歌会始などの儀式に使われています。

ニュースで目にする映像は、実は両側の壁面に設けられた「報道室」からガラス越しに撮影しています。

宮殿内で唯一の板張りの部屋で、幅およそ80センチメートルのけやき材の板が87枚並べられています。儀式の際には、広さ370平方メートルのこの空間に、出席者のカツカツという靴音が響き渡ります。
夕暮れの正殿東廊下
正殿の東廊下には、「桜」(橋本明治作)と「楓」(山口蓬春作)が描かれた2面の大杉戸があります。

「梅の間」(152平方メートル)は皇后誕生日の祝賀で使われていて、正殿の奥には天皇陛下が公的な事務を執られる部屋や侍従らの控え室がある「表御座所棟」があります。

宮中晩さん会が開かれる饗宴の間

宮中晩さん会が開かれる饗宴の間
豊明殿
北側にある「豊明殿」は、広さ915平方メートル。宮中晩さん会の会場となる、宮殿で最も広い部屋です。部屋の名前は、昔の宮中の饗宴の一つ「豊明節会」にちなんだものとされています。

天井は32のクリスタルガラス製シャンデリアに彩られ、床には杉山寧作の「草」を図案化した手織りのじゅうたんが敷かれています。

天皇誕生日の宴会の儀やその他大人数の宴会、勲章受章者の拝謁などの場としても使われています。
「豊幡雲」(中村岳陵 原画)
正面の壁画は、中村岳陵作の原画によるつづれ織の「豊幡雲」です。

西陣織などを手がける京都の会社が織り上げました。

変幻自在の小食堂 連翠

変幻自在の小食堂 連翠
連翠
外国からの賓客をもてなす昼食会などが開かれる「連翠」。

この部屋がある棟が、道潅濠や紅葉山、それに吹上御苑の緑に連なる場所にあることから、中国の古い詩からとってこう名づけられたとされています。

桂離宮にある白と濃い青の市松模様のふすまをモデルとした4段の無双窓が印象的なこの部屋には、ある仕掛けがあります。
画像をクリックしてみてください
部屋の中央にある壁は、上下に動かせるようになっているんです。

壁を下げると、広さ371平方メートルと大人数の行事にも対応できるようになります。

最新の映像技術で宮殿を再現

今回の撮影では、宮殿の姿を後世に残すため、3D映像化にも取り組みました。
画像をクリックしてみてください
様々な角度から撮影した写真を解析し立体モデルを作成する「フォトグラメトリー」と呼ばれる手法です。

建物や空間の3Dスキャンと、8K画像によって、原寸大で正確に再現しました。まるで現場にいるようなリアルな質感の映像表現ができます。

今回のプロジェクトでは、このほかにも、ふだん目にすることができない皇居内のさまざまな「美」を撮影することができました。

その内容は、
2月16日(日)の「おはよう日本」で放送しました。↓↓↓
また、番組「美の壺スペシャル 皇居」(BSP4K=2月22日(土)夜7:30~、BS=3月1日(土)夜7:30~)、17日(月)以降の「午後LIVEニュースーン」17日(月)でも放送します。

「美の壺」番組サイトはこちら↓↓↓
社会部記者
橋本 佳名美
2010年入局
司法担当などを経て、2021年から皇室担当
映像センター チーフカメラマン
佐々倉大
1997年入局
皇位継承に伴う儀式など皇室関連ニュースの撮影を数多く担当

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