映像ジャーナリストの伊藤詩織さんは10日、東京新聞の望月衣塑子記者に対して執筆記事で名誉を毀損(きそん)されたとして330万円の損害賠償を求め東京地裁に提訴した。弁護士が13日明らかにした。伊藤さんが自らの性暴力被害をテーマに監督したドキュメンタリー映画を巡る望月記者の記事を挙げて「伊藤さんが利己的な人との印象を与え、社会的評価を著しく低下させた」と指摘している。
元代理人弁護士は映画を問題視
映画は「ブラック・ボックス・ダイアリーズ」で、性暴力を自ら調査した様子を描き、1月23日発表された米アカデミー賞の候補作で長編ドキュメンタリー映画賞部門に選ばれた。日本では公開されていない。伊藤さんは元TBS記者から性暴力を受けたとして提訴し、令和4年に同意がないのに性的行為に及んだとする判決が確定している。
一方、映画を巡っては、伊藤さんの元代理人弁護士らが、現場となったホテルの防犯映像を「裁判以外に使用しない」と誓約書を出して提供されたにも関わらず映画に使用し、捜査の問題を告発した捜査員の音声を加工せずに映画に盛り込まれているなどと訴え、問題を指摘していた。
東京新聞も1月14日、望月記者の署名で「日本の女性記者たちが性被害などを語った非公開の集会の映像が、発言者の許諾がないまま使われていた」などとする記事を公開した。
これに対し、伊藤さん側は、この集会について「性被害を受けた人たちが性被害を語る目的ではない」として、「発言者のうち自らの性被害について語ったのは、女性1人のみで、伊藤氏はこの女性から映画での映像使用について事前の承諾を得ている」と指摘した。
望月記者「記事に誤りはない」
映像について「映されているのは、いずれも顔をぼかしたり、斜め後ろからの撮影などになっている」と主張した。
伊藤さん側が東京新聞に抗議したところ、2月7日に記事の見出しと本文は一部訂正された。「誤解を招く表現だった」として謝罪も追記された。
ただ、この記事によれば、集会に参加した女性の一部は、映画で使用されることについて「許諾していない」としている。そのうち1人は、発言している場面が映画に使用されたため、伊藤さん側に削除を要求しているという。
望月記者は産経新聞の取材に「記事に誤りはないが、可能な範囲で伊藤さん側の意向に沿った対応をした」とした上で「記事を掲載した社を訴えずに個人に訴訟の負担を負わせるこの訴訟は、言論活動を抑えようとの意図を感じざるを得ず、まことに遺憾」とコメントした。(奥原慎平)