「君の名前を、教えてください」
アイズの満面の笑みによるお願いは、ベルに多大な動揺をもたらした。とはいえオラリオに来て半年ほどしか経っていないベルであってもその経験は文字通りの百戦錬磨、直ぐに落ち着きを取り戻した
「べ、べる、ベルクラネルでしゅ…」
まあ盛大に噛んだ上に耳まで真っ赤だったが
「ベル、ベル・クラネル…うん、いい名前」
「~っ///!?」
さらに微笑みながら誉められたことで完全に取り乱してしまったが
「ア、アイズたん?!だ、誰やその馬の骨はー?!」
「…さっき話してたミノタウロスを倒した子だよ」
「…なんだって?」「ああ?!」「なんやて?!」
フィン、ベート、ロキの三人は驚きを露にする。とはいえ他の面々にいたっては、ベルの予想外すぎる容姿と、アイズの見たこともない満面の笑みに思考が着いて行かず、完全にフリーズしていたのでこの三人はまだましな部類だっただろう
「その、本当にその子がミノタウロスを?」
「うん、確かにこの眼で見た…ね、ベル」
「ひゃ、ひゃい…」
「嘘は…言っとらんみたいやな」
「ええええええええええぇぇぇぇぇ?!!?」
完全に呆けてしまっているベルの言葉が
「うっそマジ?!いっそ女の子みたいなこの子が?!」
「…あり得ない…!クラネルさんはまだLv1のはずでは…」
「「「な?!」」」
「…そうなの?ベル」
「はい…」
リューというエルフの給仕がベルのレベルを口走ってしまい、困惑はさらに深まる。ベルはもう何を言っても無駄と観念したらしい
「あり得ない…!Lv1の人間にミノタウロスを倒せるはずが…!」
「…ロキが嘘ついてねえってんなら本当のことなんだろうよ…。悪かった、ベル・クラネル、勝手な思い込みでそこらの雑魚と一緒にしちまってよ」
「?!あのベートが素直に謝った?!なにどうしたの?!明日何が降るの!」
「どーいう意味だてめえこらあ!」
アマゾネスの双子の片割れ、ティオナの発言に突っかかるベート。これはいつも通りの光景だが、ベートが素直に謝罪する、というのは紛れもなく異常な出来事だ。といっても今回に関しては
「つってもよお、やっぱまだ信じきれねえんだわぁ。ってことでよお、ちょぉっと表に出て手合わせしてみねぇかあ?なあ、ルーキーィ…!」
「おお、いつも通りだ…」「…やっぱあれかな、アイズが明らかにあの子に…」
「黙れこらあ!おうどうすんだルーキー、まさか断ったりしねえよなあ、ええおい…!」
単に絡む理由がほしかったからだが
「ベートさん、そういうのはベルに…」
「いや、アイズ。止めない方がいい。ベル君といったね?君もできれば受けてくれると嬉しい。君の実力にはかなり興味がある」
「え、でも…」
「当然ただでとは言わない。うちが贔屓にしているヘファイストスファミリアの武器を1000万ヴァリスまでなら都合しよう。どうかな?」
「やります!」
…一応弁明しておくと、今回ベルはナイフを失っており、かつベルの実力がLv1としては頭1つ…いや、2つか3つ抜けているとはいえ所詮はLv1、1000万ヴァリスなど有り得ないほどの大金であり、しかもロキファミリアを通して注文出来るというのは、その武器や防具が一級品であることが確約されたようなもの、受けないという選択肢はなかったのだ。
(Lv1でミノタウロスを倒せる、というのはつまり元々が強かったということになるが、あの体格でそれは考えにくい…つまり何かしか秘密があるはずだ、それがわかるなら安いもの…!)
フィンとしてもただの個人的な好奇心からではなく、ファミリア全体の進退のためでもあった。…まあベルの実力はステイタスによらないものなので、別に的外れなわけではない。元から強かった、というのはそうだが(実際ステイタスなしでもLv1の冒険者なら普通に勝てた)
「話は決まったな…!さあ殺ろうぜぇおい…!」
(((文字が違う…)))
「ええ、殺りあいましょう!」
(((?!こっちも?!)))
ちなみにアイズはベルが受けると決めたときに手を強く捕まれ、首筋から耳まで真っ赤になっていた。ベートのベルに対する殺意が膨れ上がったのは言うまでもない