「ええええええ?!」
可愛らしい少女の絶叫が夜の教会に響き渡る。ベルのむき出しになった逞しい、けれど引き締まり細い背中に跨がった見目麗しく、童顔と小さな体に不釣り合いな豊満な乳房を持つ紐のようなものを身につけた少女、ヘスティアは自らの眷属である少年、ベル・クラネルの異常なステイタスの伸びに心底から驚愕していた。ヘスティアはこれでも女神のうちの一柱であるのだが、神としての威厳もへったくれもない無様な驚き様であった。
「な、なんだいこのステイタス?!まだ君に
どうやらベルはミノタウロスを倒したことによる
「あ、あはは…いやちょっと5階層でミノタウロスと遭遇しまして…」
「ミノタウロスって…!大丈夫だったのかいそれ?!」
「あ、はい。怪我もしませんでしたし…いえまあ一撃でももらってたら死んでたんですけど…」
そう、実はベルはミノタウロスとの戦いで傷一つおってはいない。というのもミノタウロスの一撃は全てベルにとっての致命の一撃であり、一撃たりとも当たってはいけない、というのが前提条件であったからだ。ベルがミノタウロスに勝利したのがいかに奇跡的で有り得ないことであったかがよくわかる。当然、ミノタウロスは有名なモンスターなのでヘスティアもよく知っていた。故にベルの安否を気遣ったのだが、その返答にヘスティアは顎が外れるほど驚いた。
「んな…!ミノタウロスと遭遇して無傷?!い、いやそれよりもベル君、さっきの言い方だとまるで君がミノタウロスと戦ったように聞こえるんだけど…?」
「あ、はい戦いました…ちゃんと勝ちましたよ?」
「んなんだってえええええええええ?!」
ヘスティアはツインテールにまとめた髪を振り乱し、全力で絶叫した
「ミミミ、ミノタウロスと戦って勝った?!Lv1のベル君が?!
スキル…つまりは特殊能力をベルは持っていない。魔法も同様である。元々田舎暮らしだったことと、本人にあまり素質がないこと、そして何よりベルにとって魔法は憧れはするが欲しいものでなかったことが原因となっている。
「いや、でも結構卑怯な手を使っちゃいましたし…決して誉められたものでは…」
「何をいっているんだい?!とんでもない偉業じゃないか!もっと胸を張るべきだぜ!ぃやったー!ボクのベル君がLv2、しかもこんなに早くだなんて!自慢できるぞ~!ボクは鼻が高いぜベル君!」
ヘスティアは無邪気に喜びを露にし、ベルの背中の上で跳び跳ねる。ヘスティアの言は正しく、ベルのやったことは間違いなく偉業であり、誇るべきもの。たとえ卑怯な手を使ったといっても今の今まで誰にも出来なかったことを成したのだ。最もそれを成した当の本人は未だその自覚はないのだが、それでもイヤでも理解せざるをえなくなるだろう。
「あ…いや、ダメだ!こんなのがバレたら他の神々にボクのベル君がとられちゃう!」
そう、娯楽に飢えた神々にとって、スキルも魔法も無く、ただ己の知恵と技術、そして何より勇気をもってミノタウロスを打倒したベルは格好の玩具なのだから
「あはは…大丈夫ですよ神様、誰かに言う気も無いですし、それに話したとしても神様たちしか信じてくれませんって」
神々には嘘を見抜く力があり、それによってベルが嘘を言っていないと理解するだろうが、下界のものからしてみればベルはただの少年、むしろ弱そうに見えてしまうのだ、ベルの言う通り誰も信じないだろう。
「そ、そっか、なら暫くは大丈夫だね…よかった…」
「あ、でも…」
「え?なにかあったのかい?!」
「はい、その…ミノタウロスと戦っているところを見られてしまって…」
「何だって?!大変じゃないか!どんなヤツだったんだい?!」
「はい…金髪のすごく綺麗な人でした…でもその、僕ビックリしてすぐに逃げてしまって…そのときにミノタウロスの魔石も忘れてしまって…」
「う~む金髪の綺麗な人…それだけじゃちょっとな…ま、いっか!きっと大丈夫さ!さ、ベル君!今日はお祝いだ!外に食べに行こう!…といきたいがもう遅いしね、明日にしよっか」
「はい、神様!」
アイズにとって幸運だったのは、この二人が楽観的だったこと。そして打ち上げを翌日に持ち越したことであろう。
アイズが自室で自分を慰めていたころのやり取りである。
~翌日~
「あ、君…」
「あ、あああ貴女は…!」