AI過剰利用の懸念
テクノロジー畑出身のマスク氏は、米政府におけるAIの起用を積極的に推進する構えだ。この点も論争の的となっている。
米インタレスティング・エンジニアリングは、「イーロンマスクのAIによる米政府乗っ取り」という「大混乱」が進行中だと報じる。
DOGEメンバーのなかでも特に注目を集めているのが、23歳のルーク・ファリトー氏だ。AIを活用して2000年前のパピルスの解読に成功し、70万ドル(約1億680万円)の賞金を獲得した経験を持つ。
ファリトー氏を含むDOGEチームはすでに、教育省の内部システムへのアクセス権を取得。マイクロソフトのAzureクラウドサービスを通じて、助成金管理者の個人情報や内部財務データを入手し、契約案件から出張経費まで、あらゆる支出の精査をAIを駆使して始めている。
さらにDOGEは、連邦政府の調達業務を統括するアメリカ連邦調達庁(GSA)の改革にも乗り出した。1万2000人の職員の業務効率化を目指し、職員向けのAI搭載チャットボット「GSAi」を導入。このシステムで政府調達の契約データを分析し、連邦政府の業務の近代化を図る構えだ。
こうした大胆な改革について、マスク氏は「密室での密約ではない。すべてを公開する」と強調し、透明性の確保を約束している。だが、懸念は尽きない。インタレスティング・エンジニアリングは、マスク氏が所有するxAI社の権限拡大や、OpenAIの買収を視野に入れるマスク氏の民間・政府両部門での過剰な影響力を憂慮する。
リスクありきのビジネス改革は政府運営に適さない
Twitter(現X)買収時の混乱を彷彿とさせる強引な手法と急進的な改革は、深刻な懸念を引き起こしている。複数の巨大企業を率いるマスク氏は、確かにビジネスを急速に変化する才覚に富んでいる。
だが、19歳の若手エンジニアの起用や、AIの積極活用など、シリコンバレー流の改革手法は、政府機関の安定性や信頼性と相容れない可能性が高い。特に「悪意ある家政婦問題」に象徴される内部からのセキュリティリスクは、国家の根幹を揺るがしかねない重大な問題だ。Twitter改革では組織運営が一時的に破綻するリスクを負って大きな賭けに出たが、政府をこうした危機にさらすべきではない。
民主主義の根幹である三権分立を脅かし、選挙で選ばれていない一個人が政府に強大な影響力を持つ現状は、まさにアメリカの民主主義の危機と言える。政府組織は民間企業とは異なり、効率性だけでなく、安定性、透明性、そして何より民主主義的な価値観が求められよう。
過去のTwitter買収での混乱を教訓として、米政府は適切な監視体制を整え、マスク氏の暴走に歯止めをかける必要があるだろう。












