予算削減から始まる悪夢…Twitter買収騒動の再来か
マスク氏の「改革」で思い当たるのが、2022年10月のTwitter(現X)買収をめぐる混乱だ。
マスク氏は買収後、支出削減を強行。モデレーション(不適切な投稿内容の監視)部門を大幅に縮小し、メディア対応を担う広報部門もほぼ機能停止。方向性への懸念から多くの広告主が出稿を停止し、収益性はかえって悪化した。サンフランシスコ本社の清掃チームも解雇したことから、一時はトイレが詰まり悪臭がTwitter社オフィスに流れ込む騒動になっている。
ユーザーからは、Twitterが破壊されたとの恨み節が聞こえる。現在のXは、ヘイトスピーチやミスインフォメーションが跳梁跋扈する不快な空間となった。さらに、有料会員による投稿を優先表示したことで、タイムライン(基本画面)に流れるコンテンツの質は大きく低下したと言われる。ワシントン・ポスト紙は、拙速な支出削減による悪影響が、今度は米政府に及ぶのではないかと懸念する。
人事権の濫用も懸念のひとつだ。元Twitter従業員のエリック・フロンホーファー氏は同紙に、ソーシャルメディア上でマスク氏と見解を戦わせた翌日、突如システムアクセスを遮断され、解雇通告を受けたと打ち明ける。フロンホーファー氏は「マスク氏にとって合法性は二の次で、とにかく物事を急いで進める」と証言する。
テスラでの人事も容赦なかった。昨春、業績悪化を理由に、テスラ車専用の急速充電網「スーパーチャージャーネットワーク」の担当者約500人を真夜中に一斉解雇。ところが数週間後、運営に欠かせない人材として一部を復職させる事態に追い込まれた。
専門家「IT業界ならスピードは評価されるが…」
コロンビア・ビジネススクールの行動科学教授マイケル・モリス氏は、こうした経営手法について「IT業界なら、突飛で予測不能な行動も才覚として評価される」と解説する。しかし「政府組織となれば、その影響力は比較にならない」と警鐘を鳴らし、「場当たり的な経営判断」だとする批判的な見方を示している。
実際にマスク氏は、2022年のTwitter買収直後と似た手法を、米政府に次々と導入している。
ニューヨーク・タイムズ紙の報道によると、1月30日、連邦職員の元に「Fork in the Road(岐路)」という件名のメールが届いた。新たな職場改革を受け入れるか、退職するかの二者択一を迫る内容で、マスク氏が2022年にTwitter従業員に突きつけたメールと酷似していた。政治活動委員会のPACは、この施策により連邦職員の5~10%が退職パッケージを選び、「約1000億ドル(約15兆2000億円)の削減効果が見込まれる」としている。
連邦政府の調達・管理機関であるGSAで技術変革サービスを率いることになったテスラ出身のトーマス・シェッド氏は、着任早々エンジニアたちに「最近の技術的成果」の提出を求めた。これは、マスク氏がTwitter買収直後にエンジニアにコードの提示を命じた時とまったく同じ行動パターンだ。













