「赤ちょうちん」「妹」「バージンブルース」。1974年に公開された藤田敏八監督の主演3部作で、秋吉久美子さんの人気は一気に高まった。映画やテレビの出演依頼が殺到し、超多忙な日々が続く中で、今も鮮明に覚えている出来事が、秋吉さんにある。
「『おまえ、あんまりうまくなるなよ』と、パキさん(藤田監督)に言われたことです」
「妹」の撮影現場だった。リハーサルの演技を見た監督がつぶやいた。「怒鳴られてはないのですが、怖かった。1作目の『赤ちょうちん』では自由にやらせてもらったし、私も少し得意になっていたのだと思います。そんな気持ちが演技に表れたんですね」
半世紀たった今も、演技について考える時に、この言葉を思い出すという。「肝に銘じています。演技が巧みになることと、いい俳優であることとは別なんですね」
凍える海へ
当時は立ち止まる余裕はなかった。74年7月に20歳...












