OpenAIのDeep Researchで期待通りの結果を得るためのプロンプト作成
はじめに
近年、生成系AIを活用したリサーチ手法が急速に普及しており、医療・生命科学分野でも論文検索や調査、レビュー作成などの効率化が期待されています。その中でも2025年2月3日に発表されたOpenAIの「Deep Research」。GoogleのDeep Researchと同じネーミングで、こちらは学術目的ではあまり実用レベルで無かったですし、多くのAI検索サービスはPubmedの文献を沢山引っ掛けることができないので、正直あまり期待しておらず、o1Pro使うために一旦課金していたChatGPT Pro(200ドル/月)に再課金するのは躊躇していました。そんな時にEARL先生のツイートを見て課金を決意しました。
ChatGPT Deep Research、こりゃすごいわ。
— EARLの医学ノート (@EARL_med_tw) February 3, 2025
論文検索させてみたんだけど
「pubmedサイト限定でPICOSも指定して論文抽出させて、全該当論文を漏れなく抽出し、かつ余計な論文も抽出してこなかった」
ってのは、これまでのAIモデルの中で初めてだわ。システマティックレビュー自動化できちゃうやん。 https://t.co/z1QT8FVUVr
実際に使ってみて、そのリサーチ能力には驚きました。Deep Researchは、o3モデルの力で、ウェブ、論文などの資料を縦横無尽に駆け巡り、人間では1-2時間要する作業を10分前後で情報を整理・分析してくれます。医療・生命科学分野の研究者にとって、Deep Researchは 一度使ってみる価値はあると思います。文献の網羅性はやや低いのですが文献のセレクトは良くて、重要な文献が抜けていることが少なく、あとはまとめのレポートが要点を押さえていて読みやすいです。ただし月100回と限られた回数しか使えない(Plusユーザーも将来的に月10回程度使えるようになるとのサムアルトマン氏のコメントあり)上に一回リサーチが始まると10分前後中断できないのでプロンプトは抜かりなく完璧なものを入れる必要があります。
本記事では、このDeep Researchの真価を引き出すための「プロンプト作成術」を、詳しく解説します。また調べたいテーマを重要なポイントに沿って補完して適切なDeep Research用のプロンプトを作成してくれるGPTも紹介しています。(一応リサーチ開始前に逆質問されますが、こちらのGPTの方が細かく指示が出せます)
1. 調査目的の明確化
1.1 ゴールを具体的に記述する
まずは「何を明らかにしたいのか」を明確にしましょう。
例:
「臨床試験デザインの最新動向を把握する」
「特定疾患に対する新規治療法の有効性を検証する」
「ゲノム編集技術の安全性に関する研究動向を調べる」
ポイント:
自分が最終的に得たい成果や目的を具体的に示す。
1.2 なぜその情報が必要かを明確にする
深堀りしたい背景や理由を書き添えると、AIが適切な視点をとりやすくなります。
例:
「学会発表に向けて最新の参考文献を整理したい」
「新薬開発のレポート作成の一環で、競合他社の動向を把握したい」
「次回の研究計画書に引用できるエビデンスを集めたい」
ポイント:
研究や業務で必要となる「コンテキスト」を伝えることで、不要な情報が省かれ、必要な情報が濃縮されやすい。
2. 調査範囲の絞り込み
2.1 キーワードの選定
含めるキーワード: 調査テーマの核心をなす用語は必須で指定
除外するキーワード: 調査目的に無関係な情報をフィルタリング
例:
含める: 「癌免疫療法」「PD-1阻害剤」「臨床試験」
除外する: 「広告」「一般ニュース」「販売促進」
2.2 情報源の指定
医療・生命科学の信頼性の高い情報を得るには、専門データベースを活用するのが重要です。
データベース例:
PubMed, Scopus, Web of Science, Embase, CINAHLなど
情報タイプの指定:
査読付き論文(オリジナル論文、レビュー論文)、特許情報、公式ガイドライン、学会発表など
ポイント:
自分の調査テーマに合わせて、最も利用価値の高いデータベースを選定する。
「最新のレビュー論文を優先」「特許情報を含める」など、どのタイプの情報を重視するかの基準を事前に決めると効率的。
2.3 期間と言語の設定
発表年: 最新研究に焦点を当てたい場合は直近3〜5年の論文に限定。
言語: 日本語、英語、など、必要に応じて指定。
ポイント:
新規性が重視される場合は最新論文に特化し、基礎から理解が必要な場合は10年以上前の論文も含めるなど、目的に応じて柔軟に調整する。
3. 求める情報の質を明示する
3.1 情報の深さ
「概要レベルでの解説」なのか、「実験手法やデータ解析手順など専門的詳細」が欲しいのかを指定。
例:
「研究の背景と臨床的意義」
「主要な研究手法の詳細とプロトコル」
「未解決の課題や将来的展望」
3.2 情報の信頼性
「査読付き論文を優先」「政府機関や学会のガイドライン中心」など、信頼度の高い情報源を明記。
ポイント:
臨床研究などエビデンスレベルを重視する場合、メタアナリシスやRCT(ランダム化比較試験)などを優先的に検索するように指示する。
3.3 分析の視点
例:
「疫学的観点から傾向やリスクを分析」
「費用対効果(Cost-Effectiveness)の側面に注目」
「分子生物学的メカニズムにフォーカス」
ポイント:
分析したい切り口を具体的に示すことで、一般論ではなくターゲットを絞り込んだ情報を得やすくなる。
4. 出力形式と文体の指定
4.1 文体
学術論文調(「である」調)、レポート調(「です・ます」調)など、最終用途に合わせて指定。
プレゼン資料用であれば箇条書き中心、解説記事用ならやや平易な言葉遣いにするなど工夫しましょう。
4.2 引用形式
参考文献リストを作成するかどうか
番号付き引用にするか、参考文献を文末にまとめるか
特定のジャーナルスタイル(Vancouver式、APA式など)があれば指定
4.3 構造
章立て・見出し・サブセクションの有無
表形式や箇条書きなど、研究ノートやスライド化に便利な形式
ポイント:
実際に論文原稿として活用する場合、あらかじめ学会やジャーナルのフォーマット要件を確認しておく。
5. 最も重要なポイント:リサーチ前の文献リスト要求
リサーチ後に追加チャットで文献リストをお願いすると、実在しない論文タイトルや著者名(いわゆる「ハルシネーション」)が生成されるリスクがあります。また文献は最低何本引用してというのもリサーチの幅を持たせるのに有効です。
ポイント:
AIにリサーチさせる前に、「参考文献のリストを最後に提出してください」とリクエストする。
「文献は最低20本引用して」とリクエストする。
Deep Research Prompt Maker
このGPTにDeep Researchで調べたいクエリを投げると上記のポイントに沿って情報を補完をしてくれて、Deep Researchに適したプロンプトを作成してくれます。
まとめ
OpenAIのDeep Researchは、研究者にとって非常に有力なツールですが、適切なプロンプト(指示文)を作成しないと思ったほどよい結果を得られないこともあります。また一回リサーチが始まると10分程度は中止できないため、確実に良いプロンプトを入れることが大切です。特に医療・生命科学分野ではエビデンスベースが重要であり、リサーチの質を高めるためには以下のポイントを押さえましょう。
調査目的を明確化し、必要とする情報の背景や理由も示す。
キーワード、情報源、期間、言語を明確に指定し、リサーチ範囲を絞る。
求める情報の深さや信頼性を具体的に示し、専門的視点や解析レベルを提示。
出力形式と文体(論文調、レポート調、箇条書きなど)を用途に応じて設定。
リサーチ前に文献リストを要求し、実在性と信頼性をチェックしてから詳細をAIに尋ねる。
これらのポイントを踏まえてプロンプトを設計することで、医療・生命科学分野におけるリサーチの効率化や精度向上に大いに役立つはずです。皆さんもぜひ、次回の研究や文献収集において実践してみてください。



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