虎でもわかる!「ラグだから打つ」はウソ
1. はじめに
はじめまして!ポーカー専業5年目の虎、そっちのとらじろうです。慶應義塾大学を卒業後、すぐにポーカープレイヤーの道を選び、5年間のプロ生活で約200万ハンドを戦い抜いてきました。その間、一貫して勝ち越しを続けています。
この経験を活かし、ポーカーで勝ち続けるために必要なスキルと考え方を、皆さんに分かりやすくお伝えしていきます。今回は、「ラグカード」の考え方について、データに基づいた検証を行います。
2. よくある誤解
「ラグだから継続ベット!」という考え方は、アミューズメントポーカーでよく耳にします。この考えが広まった理由は、弱いカードが出た時に相手のハンドが改善していないだろうという単純な推測からです。
ポーカーにおけるラグとは、ボートと関係のないカードまたは、価値がないカード、弱いカードのことです。例えば、K♦️6❤️2❤️のボードに対してのターン3♠️や4♣️といったカードがラグと呼ばれます。
3. 具体的な例の分析
BTNがオープンしてBBがコール、K♦️6❤️2❤️のフロップで33%サイズのベット、BBがコールしてターンを迎えました。ここで3♠️というラグカードが落ちた場合を詳しく見ていきましょう。
この時のBTN戦略はこちらです。
BTN戦略において、予想以上にチェックが多いですね。
この結果だけを見ると、「3♠️だからたまたまチェックが多い」と思うかもしれません。
次に、ターンで異なるカードが出た場合の結果を見てみましょう。
ここで使用するのがGTO Wizardのターン集合分析です。この機能では、様々なターンカードのパターンをシミュレーションし、どのカードがBTNにとって有利(EVが高い)なのかを分析することができます。
4. データによる検証
GTO Wizardのターン集合分析を使用して、様々なターンカードのパターンをシミュレーションしました。
上図は、縦軸:EV量、横軸:A→2となっています。
この分析から、K以外のT以上のカードがBTNのEVを上昇させる一方、8以下のカードではEVが低下することが判明しました。
分析結果のポイント
・ローカードはアグレッサーのレンジEVを下げる
・データが一般的な考えとは異なる結果を示す
フロップでベットした後、ターンで弱いカード(ラグカード)が出たからといって、必ずベットするべきではありません。ポーカーソフトウェアの分析によると、実は弱いカードが出た時の期待値は思ったより低く、むしろベットせずにチェックした方が良い場合が多いことがわかっています。つまり、「弱いカードが出たからベットすべき」という一般的な考え方は、実は正しくないのです。
しかし、ここで疑問が生まれます。「BTNがAKを持っているとき、低いカードが落ちた方が有利なのではないか」ということです。
BTNがA♠️K❤️を持っている場合を分析してみましょう。下図によると、すべてのターンカードにおいてチェック頻度は25%で、ベット頻度は図のように示されています。
その結果、下図のように各ターンカードにおけるAKのベット頻度が示されています。
分析から、6とハート以外のカードが出た場合にベット頻度が高くなることが明確です。
「Kヒットの場合も高頻度でベットしているじゃないか!」と思われるかもしれません。分析の結果、ターンでラグカードが出た場合、フロップで強いハンドや高いエクイティを持つハンドであれば、ベットを継続する傾向にあることが確認できました。
次に、各ターンカードにおけるEVを確認してみましょう。
興味深いことに、ラグカードではベット頻度が高いにもかかわらず、BTNのEVはそれほど上昇していません。
つまり、ラグカードが出ることは必ずしも有利ではありません。フロップで強いハンドを持っている場合に継続ベットの選択肢が増えるだけなのです。
では、ラグカードがアグレッサーレンジEVをそれほど増加させないという事実を踏まえて、先ほどのK♦️6❤️2❤️3♠️のケースを再度詳しく見てみましょう。
ターン3♠️における、BTN戦略を役とドローの種類別に分析したものが以下の図です。
役
オーバーペア以上:コンボ数は限られているが、125%のオーバーベットを選択
トップペア:約半数のコンボが125%ベットを選択
Aハイ:純粋なブラフとして使用
ドロー
コンボドロー:125%ベットを選択
フラッシュドロー:エクスプロイトを防ぐため、一定頻度でチェックレンジに含める
ガットショット:125%ベットを高頻度で選択
このようにターンでハンドのEQに応じてベットアクションを行なっています。
具体的には、BTNレンジにおけるトップペアです。
弱いキッカーのKヒットのEQは75%〜80%程度です。このような中途半端に強いハンドではチェックを行なっています。
5. 実践的な戦略
以上の分析結果から、ラグの時には以下の2つの効果的な戦略が導き出されました:
大きいサイズのベット
EQ90%以上のバリューハンドの継続:強いハンドでの積極的なベット
大きいサイズのベット
なぜ、ラグの時に大きいサイズのベットが効果的なのでしょうか?
これは、BBとBTNのエクイティ(EQ)の差が主な理由です。ラグカードはフロップの状況を変えないため、フロップでBBがコールした時点で何らかの手を持っていることを意味します。その結果、レンジEQはBBの方が高くなります。
一方で、BTNはフロップでCBを行い、BBはチェックレイズせずにコールしているため、非常に強いハンドはBTN側にあることは明らかです。そのため、BTNのレンジEVは高くなります。
上図を見るとレンジ全体のEQはBB側が約55%と上回っていますが、EVはBTNが有利な状況となっています。
このような状況では、BTNはポットの125〜150%程度の大きいベットサイズを選択します。この大きいベットサイズが効果的な理由は、BTNのベットレンジが純粋なバリューとブラフに明確に分かれているのに対し、BBのレンジは中程度の強さのハンドで構成され、ブラフのキャッチ以外の機能を果たせないためです。
つまり、BTNの大きいベットに直面したBBは、コールでもフォールドでもEVがほぼ0になってしまうのです。
その結果、バリュー or ブラフの両極に分かれた戦略をとることで、BTN側が有利なレンジEVを確保できることになります。戦略があなたのレンジEVを決定しているのです。
BTNが175%のベットをした場合のBBの戦略を見てみましょう。
Kヒットの弱いキッカーのコールEVが0に近づいていますね
EQ90%以上のバリューハンドの継続:強いハンドでの積極的なベット
強いバリューハンドを持っている場合、ターンでのラグカードは実はチャンスと捉えることができます。なぜなら、相手のレンジは中程度の強さのハンドが多く、大きなベットに対して適切に対応することが難しいためです。このような状況では、90%以上のエクイティを持つハンドで積極的にベットすることで、最大のEVを獲得することができます。
一般的に、ターン以降の戦略は、ハンドEQに応じてチェックやベットを行います。
実際のインプレイ中のイメージ図を示します。これはターン時点のハンドEQと危険度、アクションの目安を可視化したものです。
この図で示されているように、ハンドEQが90%以上の場合は積極的なベッティングが推奨され、70-80%の範囲では状況に応じた判断が必要となります。30-70%の範囲のハンドでは、通常チェックが推奨されます。
以上の分析から、ターンのラグカードに対する適切な戦略は以下のようになります:
90%以上のエクイティを持つ強いハンドでは、125-150%の大きなサイズでベットする
70-80%のエクイティを持つ中程度の強さのハンドは、状況に応じて判断する
30-70%のエクイティを持つハンドは、通常チェックを選択する
この戦略を実践することで、「ラグだから打つ」という単純な考え方ではなく、ハンドの強さに応じた適切な判断を行うことができます。特に強いバリューハンドを持っている場合は、相手の中程度の強さのハンドに対して効果的にプレッシャーをかけることが可能です。
まとめ
本記事では、「ラグだから打つ」という一般的な考え方が必ずしも正しくないことを、データに基づいて検証しました。主なポイントは以下の通りです:
ラグカードはアグレッサーのレンジEVを必ずしも上昇させない
ハンドの強さとエクイティに基づいた判断が重要
強いバリューハンドの場合は、大きめのサイズでベットすることが効果的
中途半端な強さのハンドではチェックが適切な選択となる場合が多い
結論として、ラグカードが出た際の判断は、単純に「ラグだから」ではなく、ハンドの強さ、エクイティ、レンジ全体のバランスを考慮して行う必要があります。これにより、より収益性の高いプレイが可能となります。
6. 用語解説
レンジ(Range)
プレイヤーが特定の状況で持ちうる手札の組み合わせ全体を指します。
EV(Expected Value)
期待値のこと。特定のアクションを取った際に長期的に期待できる利益を表します。
エクイティ(Equity)
現状の勝率を示します。
7. よくある質問
Q: ラグカードが出た時は常にチェックした方が良いのですか?
A: 必ずしもそうではありません。ハンドの強さとエクイティに基づいて判断する必要があります。特に強いバリューハンドやナッツドローを持っている場合は、積極的なベットが推奨されます。
Q: オーバーベット(125%)の判断基準は?
A: 主にオーバーペア以上の強いハンドや、コンボドロー、ガットショットなどで選択します。ナッツアドバンテージが大きい状況で効果的です。
Q: ドローヘビーなボードでのラグカードの扱い方は?
A: ドローヘビーなボードでは、ラグカードが出ても注意が必要です。相手のレンジには依然としてドローが含まれており、それらのハンドは高いエクイティを持っています。このような状況では、より慎重なベットサイズの選択が求められます。
Q: 小さいペアを持っている時のラグカードの扱い方は?
A: 小さいペアは、ラグカードが出た場合でも、通常チェックが推奨されます。これは、相手のレンジに対して十分なエクイティを持っておらず、ベットした場合に良い結果を得られにくいためです。
Q: マルチウェイポットでのラグカードの扱い方は?
A: マルチウェイポットでは、より慎重なアプローチが必要です。プレイヤー数が増えるほど、誰かが強いハンドを持っている可能性が高くなります。このような状況では、非常に強いハンドを除いて、チェックを選択することが多くなります。
著者プロフィール
そっちのとらじろう
・慶應義塾大学卒業
・ポーカープレイヤー歴:5年
・総プレイハンド数:約200万ハンド
・Twitter: @torajiro_poker
・POKER GYM メンズコーチ
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コメント
3BTNvsBBでフロップK,6,2に対してターンローカードはラグではないのではないでしょうか?
CBについてきたガットショット系がストレート完成させたり、
フラッシュドロー+ランナーランナーストレートドローがフラドロ+ガットショットに進化してて十分スケアカードに感じてしまいます。
これがUTGvsMPだったり、フロップハイカード2枚以上でターンローカードが落ちたらラグだと思いますが…
コメントありがとうございます!
今回リバーカードについては扱ってませんので、なんとも言えません😭
たとえば、K62、7、2である場合はほとんどラグに近いですね!
UTG vs MPである場合、フロップUTG基本戦略がチェックになると思いますので、別ノードで考える必要が出てきそうですね
コメントありがとうございます!これからもよろしくお願いします🙇
すみません。ターンカードのことをリバーと呼んでいました。修正します。