「くたばれChatGPT!」生成AIの尻拭いをする仕事人たちの悲哀
■画像生成AIにタジタジ 昨年夏頃より、グーグル検索でトップに表示されるようになった「AIオーバービュー」(AIによる概要)。これのせいでよけいな心労が増えているという職業も。まずは弁護士Cさん(40代男性)の嘆きの声から。 「受任当初から『依頼人にとって難しいケースである』と何度も説明しているのに、依頼人がAIオーバービューやChatGPTの情報を持ち出してきて絶対に折れてくれない。こちらは実務経験や実際の判例を基に話しているのに、自分に都合のいい情報しか信じないんです。 結局こちらが依頼人の希望を受け入れざるをえず、裁判でも残念な結果になってしまいました。依頼する側も弁護士費用を無駄にすることになるので、AIやネットの情報を真に受けすぎないでほしいですよ......」 「まったく同じ目に遭っている」とため息をつくのは、不動産管理会社に勤めるDさん(30代男性)。 「退去時や設備故障時の金銭負担について借り主とトラブルになったとき、AIオーバービューに書かれた誤った知識で食い下がられたことがあります。間違いを指摘しても『Googleが言ってるから!』となかなか引き下がってくれないので困りましたね」 意外な業界にもしわ寄せが。地下アイドルのEさん(20代女性)が言う。 「新規のファンが、チェキ会のときにニヤニヤしながら『君、○○って俳優と付き合ってるんでしょ?』と言ってきたんです。私はその俳優の名前を知っているけれど、面識はない。情報の出どころを聞いたら、AIオーバービューの画面を見せられて。 そこには確かに、○○さんと私が交際していると書かれていました。どうしてAIにそう解釈をされてしまったのかは謎ですが、私がXでその俳優さんの出てるドラマに言及したことが理由だったみたい。恋愛関係のデマは今までもたくさんありましたが、検索のトップに出てくるのは段違いに迷惑ですね」 別の芸能関係者からはこんな声も。 「バラエティ番組で自社のタレントのイメージ画像を使われるときがあるのですが、最近は事務所の許可なく、AIが生成したイラストを出されることがあって。 今まではこちらが宣材写真の使用を許可しないと似顔絵を使われるパターンが多かったのですが、画像生成AIで出力したイラストはほぼ宣材写真そのままなので、これは肖像権的に大丈夫なのか?とモヤッとすることはあります」(芸能マネジャーのFさん・30代男性) 画像生成AIとは、完成イメージや雰囲気を指示するだけで、AIが画像を作ってくれるサービス。その登場のあおりを受けているのが漫画業界だ。漫画編集者のGさん(20代男性)はこう言う。 「実は最近AI使用疑惑のある作家さんがいて。カラーとモノクロでイラストのタッチが全然違ったり、体の不自然なところにシワが入っていたり、洋服の装飾や柄が均等に描かれていなかったりなど、いろいろ疑わしい要素があるんです。 でも、万が一AIを使っていなかった場合、作家さんのプライドを傷つけることになるので直接指摘はできません。一方で、AIの使用が事実だとすれば『AIを商業利用した』と、読者から編集部が非難される恐れもある。悩みのタネです」 画像生成AIは既存のイラストや写真を無断で学習してイラストを作り出すので、それを快く思わない作家も多いようだ。 「今でもXやピクシブ(イラストや漫画を投稿・閲覧できるサービス)に、一目見て出どころがわかるAIイラストを投稿する人がいますが、もし自分の担当する作家さんから『このアカウントの投稿を削除させろ』と依頼が入ったら、イレギュラーな業務が発生します。でも社内にAI対応マニュアルがあるわけでもないので、うまくやれるかどうか......」