高校生男子のキスは過去最低、性交は18年前の約半分――変化の理由を学生たちが自己分析すると? #性のギモン
そのうえで、この調査で注意すべき点があると言い添える。それは、この調査は学校を通して実施しているため、中退、もしくは進学していない子などは含まれていないことだ。 「この調査は、学校に通っている、いわゆる“ふつう”の子たちが答えているということが前提条件です。学校に行かず、繁華街でたむろしていたり、パパ活などで暮らしていたりという子は調査に入っていない。そのことには一定の注意が必要です」 学校での性教育の効果も見過ごせないと林教授は言う。2000年代初頭、学校での性教育について、一部の政治家が激しく批判。学校で詳しく性教育を教えることが抑制された。だが、近年、社会全体で性の多様性や人間関係を踏まえた「包括的性教育」の実践を進める流れが大きくなり、学校でも積極的に性教育に取り組むところが増えてきた。具体的に何をどう教えるかは学校や教師に任されているが、性感染症や望まぬ妊娠、中絶、性的加害・被害など性的リスクの予防意識にまで踏み込んだ授業もある。 「ここ6年で性教育が充実してきていることは、調査結果にも如実に表れています。若者の性行動が慎重になっていることと無関係ではないでしょう」 一方で、調査結果では、高校生男子・女子とも「自慰経験」が上昇していた。とくに女子の上昇率が高かった。自慰も従来のように恥ずかしいもの、隠すべきものではなく、自然な欲求と認識されてきているのかもしれない。
「分析してみると、性交の代替物としての自慰行為ではないようです。幸福の追求の一つとしてのセクシュアルウェルネスの向上の側面が強いような気がします。そういった情報がスマホで気軽に見られることと関係があるのかもしれません。女子の性欲についての肯定的な発信も多く、自慰=男子といった図式は揺らいでいますね」 一方、性や恋愛に関するリスクを恐れる若者も多い。たとえば、好きな異性にLINEで告白したところ、そのメッセージ画面をSNSなどで晒される。そんなリスクを身近で経験しているのが、いまの高校生なのだ。 こうした動向を踏まえてなお、林教授は性行動に慎重になっているのは悪いことではないと言う。 「個人的には、どちらかと言えば、望ましいことだと思っています。分別がつかない時期の経験は、あとで後悔する可能性がありますから。『若者が草食化して日本が滅びる』などと言う人もいますが、そんなに単純な話ではありません」 次の調査は、また6年後。若者の性行動は、減少・増加どちらの方向に向かうのだろうか。 --- 上條まゆみ ライター。1966年、東京都生まれ。大学卒業後、会社員を経てライターとして活動。教育・保育・夫婦や親子など家族の問題等、幅広いテーマでインタビューやルポを手がける。 --- 「#性のギモン」は、Yahoo!ニュースがユーザーと考えたい社会課題「ホットイシュー」の一つです。人間関係やからだの悩みなど、さまざまな視点から「性」について、そして性教育について取り上げます。子どもから大人まで関わる性のこと、一緒に考えてみませんか。