高校生男子のキスは過去最低、性交は18年前の約半分――変化の理由を学生たちが自己分析すると? #性のギモン
男子も女子も性に関心があり、恋愛もする。けれど、相手に接触するのは慎重になる。踏みとどまるのはなぜか。 「性感染症や望まぬ妊娠など、性行動の結果のリスクについての情報もあふれています。興味はあっても、リスクにはどうしても敏感になってしまいますね。異性と付き合うとしたら性的なスキンシップは前提だと認識していますが、きちんと避妊をしてくれないような人と関係をもつつもりはありません」
武蔵大・林雄亮教授「メリットより、リスクを意識。コロナ禍、社会の成熟も影響」
2005年から日本性教育協会で同調査に関わってきた武蔵大学社会学部・林雄亮教授の見立ては、こうだ。 「若者のデート・キス・性交経験は、1999年から2005年あたりをピークに、それぞれの年代で減少傾向にあります。1999年から2005年ごろといえば、ギャル文化や援助交際が話題になるなど、若者文化が華やかで、ある意味、節操のなかった時代。いまのようにセクシュアルハラスメントや性暴力被害も問題視されておらず、テレビ番組でも気軽に『性』を扱い、コンビニでは平気で成人向け雑誌が売られていました。そこから一転、徐々に若者が性に関して保守的になってきたわけです」
理由として考えられるのは、恋愛やセックスの価値の低下だ。 「セクシュアルなことに割く時間やお金、心理的な負荷などのコストを勘案すると、恋愛やセックスにさほどのメリットを感じられなくなったということでしょう。1990年代ごろまでは恋愛やセックスが価値あるものとして別格に扱われていた。2000年代以降は、社会が成熟し、恋愛やセックスは趣味嗜好の一つになったことがあると思います」 長引く不況も関係していると見る。失われた30年で社会全体のモチベーションが低下するとともに、若者が性に向ける意欲も低下していった。近年では、2020年からのコロナ禍も影響している。とくに高校生の性行動の減少が顕著なのは、一般的に性について関心をもち始める思春期に人と接触する機会が失われていたためだと考えられる。 とはいえ、それは全国平均でみた話。性行動の経験率は学校によってまったく違うと、林教授は指摘する。 「性に積極的な子、そうではない子の割合は、学校間で違いがあります。個人の問題というより、個人を取り巻く学校や友人関係の影響を受けがちだということです」