東京地裁でのHPVワクチン薬害訴訟傍聴記
不適切で非科学的な反HPVワクチン報道を繰り返してきた日本のマスコミ。
彼らが決して報じないHPVワクチン薬害訴訟の実態です。
今回は自分ではなく
"公衆衛生を専門とする友人医師"
によるレポートです。
法廷では録音・録画は禁止のため、あくまでメモからの書き起こしなので、一字一句の正確性を担保していない点には留意してください。
自分が傍聴したこれまでの傍聴レポートは、引き続いて添付します。
なお、これまでの経緯を知らない多くの方にとっては、非常に難解な証人尋問です。
産婦人科医として13年間に渡ってこの問題を追ってきた自分が、これまでの経緯とこの尋問に関して予め補足解説します。
HPVワクチンは子宮頸がんの予防目的に世界では2007年から、日本では2009年から2013年にかけて段階的に導入されてきました。
しかし、このワクチンが定期接種化された2013年に、ワクチン接種後に生じた痛みや痺れや記憶障害や運動障害や視力障害や月経異常などの"多様な症状"が、ワクチン接種が原因であるかのようにセンセーショナルに報じられ、日本でのHPVワクチン接種の積極的勧奨は中止されました。
日本でのメディア露出を繰り返してHPVワクチン反対運動の中心となったのが、HPVワクチン薬害訴訟弁護団と全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会(日野市議員である池田としえ事務局長)です。
なおこのHPVワクチン薬害訴訟弁護団は、薬害オンブズパースン会議のメンバーが深く関わっています。
立憲民主党川田龍平議員の件でも話題になった薬害エイズ訴訟弁護団を前身とした団体で、近年ではイレッサ薬害訴訟・タミフル薬害訴訟などを手掛けています(どちらも最高裁で敗訴)。
yakugai.gr.jp/about/
これは完全に個人的な見解ですが、薬害オンブズパースン会議という集団はこれまでの経緯を見る限り
"薬害エイズ訴訟の成功体験を契機に、イレッサもタミフルもHPVワクチンも含め、体調不良者などを全て薬害であるかのように決めつけて法廷に連れ出して、科学的見解を無視して薬害訴訟を吹っ掛ける団体"
にしか見えません。
そして2015年に全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会の愛知支部が、当時の河村たかし市長へ要望書を提出します。
ワクチンによる薬害を証明することを依頼された河村市長は、名古屋市立大学公衆衛生学分野教授の鈴木貞夫先生へ調査を依頼します。
3万人以上にわたる調査の結果が論文化され、2018年には日本でもHPVワクチンによる薬害は存在しないことが示されました(通称:名古屋スタディ)
medical.jiji.com/topics/1184
なお、世界的に見ればHPVワクチンの危険性を示す疫学論文は存在せず、明らかな安全性は既に確立していました。
しかし、この論文発表を日本のマスコミは徹底的に無視。
さらにこの論文に異議を唱える人物が登場。
聖路加看護大学の八重ゆかり教授(論文発表時は准教授)が、鈴木貞夫教授の論文に反証する形で論文を公表。
HPVワクチンはやはり危険だと主張。
なお、この八重ゆかり氏、上述した薬害オンブズパースン会議という団体のもとメンバーである。
yakugai.gr.jp/tieup/tieup_ha
そしてHPVワクチン薬害訴訟弁護団は、世界に一つだけしか存在しないHPVワクチンの危険性を示す論文、八重ゆかり論文(八重・椿論文)を用いて、今回の裁判を戦っているのである。
前置きが長くなりましたが、今回の法廷では...
HPVワクチンが安全だと結論付ける名古屋市大医学部公衆衛生学分野鈴木貞夫教授の論文(通称:名古屋スタディ)
論文掲載誌:Papillomavirus Research
HPVワクチンの危険性を主張する聖路加看護大学看護学研究科八重ゆかり教授の論文
論文掲載誌:日本看護科学学会誌(Japan Journal of Nursing Science)
のどちらが、HPVワクチンの安全性に関して適切に評価された論文かを、中立的な第三者である自治医科大学の中村好一名誉教授(日本疫学会理事、Journal of Epidemiology編集長、国際疫学学会理事)の証言によって検証する法廷です。
以下はものすごく長いので、証人である中村名誉教授の主張を非常に簡潔にまとめます。
鈴木貞夫論文への評価
非の打ち所がない。
Papillomavirus Researchや日本公衆衛生雑誌という疫学論文誌で正しく評価されている。
八重ゆかり論文(八重・椿論文)
なぜこのような解析結果が学会誌に載ったのか理解できません。全く意義がない、というより有害である。
日本看護科学雑誌は、ワクチンの安全性に関して守備範囲ではない。
残念ながら、こういった法廷での実際を、日本のマスコミが報じる事はないかと思います。
一人でも多くの日本人が知るべきかと思います。
以降は、以下の友人医師による裁判傍聴レポートをご確認下さい。
↓↓↓
裁判にさきだって、資料の確認、証人の本人確認と宣誓が行われる。裁判長から質問にはできる限り、Yes、Noで答えるよう要望が出された。
GSK佐藤弁護士から、経歴が読み上げられ、保健所、自治医大、テキサス大学留学を経て、自治医大教授を24年間勤めた後、退職。現在宇都宮保健所所長であること、受賞歴(2021年)と学会活動(日本疫学会理事、Journal of Epidemiology編集長、国際疫学学会理事、2017年21回学術会議学会長)などが紹介された。専門分野での主な研究対象は、難病疫学研究として川崎病の全国調査、薬剤の有効性・安全性に関する業績として、急性期における免疫グロブリンの効果、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)と硬膜移植のリスク算定の研究が挙げられた。
保健所業務は地域保健法にのっとり、感染症対策や、ワクチン接種を行っている。
佐藤:CJDの時は、患者側として証言しているが、今度は被告側の証人である。どういう考えなのか?
中村:正しい科学的見地から発言しており、依頼があれば応えている。
佐藤:執筆著書「楽しい疫学」について教えてください
中村:疫学入門書として、17の大学で教科書として読まれているのをはじめ、参考書としてセミナーで使用されている。
佐藤:疫学について簡単に説明してください。
中村:疫学は、人間集団の疾病とそれを規定する因子の頻度と分布に関する学問である。原因について明らかにする研究はたくさんあり、動物実験、in vitro研究は、メカニズム探索上重要であるが、外部妥当性問題があるため、人間にそのまま当てはめられない。疫学は、人を対象としているため、そのまま当てはめられる。車の両輪のように機能していると考える。
佐藤:曝露・非曝露、接種・非接種をなぜ比較するのか。
中村:曝露とアウトカムだけではリスクは明らかにはならない。タバコと肺がんを例にとると、喫煙者から肺がんが出たからと言ってリスクとは言えない。非喫煙者からも肺がんは出る。喫煙者、非喫煙者間で頻度を比較して、確かに関連があることを確認し、因果関係を検討する。
佐藤:なぜ日本では全数調査が難しいのか。
中村:フィンランド、ノルウェイ、韓国、中国、台湾は病院受診が登録され、予防注射の接種歴と個人番号で紐づけされている。予防注射接種のあるなしと、疾患のあるなしがシステム化されているが、日本ではそのシステムがないのでできない。
佐藤:疫学、統計学について伺います。推定、検定を用いるのはなぜですか。
中村:サンプル集団から母集団がどうあるかを、確率論を用いて推論する。名古屋スタディでいえば、3万人のサンプルから、全体を推し量るということです。
佐藤:サンプルサイズと結果の関係はいかがですか。
中村:大きい方が結果は出やすいです。一般的には、曝露、非曝露の発生率を見て、相対危険度を計算する、サンプルサイズが大きくなると、検定が有意になりやすい。名古屋スタディでは、95%信頼区間を使っているが、これが狭くなる。
佐藤:3万人という大きさはどうですか。
中村:非常に大きいといえます。
佐藤:名古屋の結果と、100%の北欧の結果などを踏まえた、安全性の全体像についてお願いします。
中村:いずれも関連なし。トータルとして考えたとき、両者に関連なしと考えます。
佐藤:記述疫学と分析疫学について説明してください。
中村:記述疫学は、疾病がどのように発生しているか人、場所、時間の観点からの特徴を明らかにすること目的としています。分析疫学は次のステップとして、関連を明らかにします。
佐藤:2×2表ではどのデータを使いますか。
中村:記述疫学では、アウトカムのあるもの、a、bの情報を使います。両方ともないdは使いません。分析疫学では、aからdすべてを観察します。
佐藤:名古屋スタディはどちらですか。
中村:分析疫学です。
佐藤:祖父江研究はいかがですか。
中村:記述研究です。これは、アウトカム発生者のみを見ており、2×2のd(曝露、アウトカムともになし)の情報がありません。記述研究ではリスクはわかりません。曝露、アウトカムのあり・なし群、aからdのすべてがないと解析できません。祖父江研究ではdがなく、その作業ができません。
佐藤:名古屋スタディのオッズ比についても確認したい。
中村:オッズ比は下の式で求めるが、相対危険度のひとつ。曝露があるとどれくらいアウトカムが増えるかのめやすで、1であれば差なし、危険であれば1より大きくなる。
佐藤:95%信頼区間とは何か。
中村:一般的には、母集団のオッズ比が95%に確率でその中に入ると解釈される。有意かどうかというのは、95%信頼区間が1をまたいでいない、リスクであれば、下限が1を超えるということ。
佐藤:有意の意味は、下限が1を超えたら、即、関連があるということか。
中村:通常はそんな短絡的なことはしません。バイアスや交絡の影響がないことをみて、関連があるかどうかを確認します。関連があれば因果関係の判定に進みます。
佐藤:疫学研究で有意な関連が出たとき、次のステップとしてどのように因果関係に進むか。
中村:いくつかの基準がある。時間性というのは曝露がアウトカムより先にあること、一致性というのは同じような研究で同じ結果が得られる、HPVワクチンでいえば、北欧や韓国、台湾で同じような結果が出ていること、強固性というのは高いオッズ比が得られること、必要十分性はアウトカムがあれば曝露は必ずあるなどの条件、整合性は他の学問領域の結果と矛盾しないこと、これらを総合的に判断して因果関係の有無を判定します。
佐藤:日本のみならずという意義は?
中村:一致性にある。ひとつの研究、ひとつの人間集団のみでなく、色々なところで同じ方向を示すことが、判断に大きな影響を与える。
佐藤:一般論として、オッズ比はどの程度か。
中村:タバコと肺がんだと4から5と言われていたが、10くらいまで出ている。
佐藤:CJDではどうか。
中村:2×2表でゼロセルがあるので計算上では無限大になっている。補正をかけて32という結果である。
佐藤:強固性からみて、「多様な症状」との関連はどうか。
中村:高いものも2を超えておらず、強固性はないと判断する。
佐藤:名古屋スタディの評価はどうですか
中村:入念に考えられたもの。解析も様々なものを行っていて、非の打ちどころがない。
佐藤:主解析の結果はどうか。
中村:主解析では3万人の接種者、非接種者の検討を行い、24症状のオッズ比についていずれも1台の前半までで、95%信頼区間をみると、下限がすべて1を切って、有意なものがひとつもなく、関連はないと判断した。
佐藤:95%信頼区間の下限が1未満ということと、オッズ比そのものの最大値が1.2程度で、強固性がないということか。
中村:その通りです。
佐藤:年齢調整は誤りか。
中村:誤りと言うこと自体が理解できない。性と年齢は必ず調整。必須です。年齢調整をしないのは相当難しい。年齢が関与しないことが分かっている疫学研究の論文を書いた時も、査読で年齢を調整するよう言われました。
佐藤:交絡調整を行わなかったときの問題を説明してください。
中村:表4、5でライター所持と肺がんの関連について説明します。表4は喫煙が交絡因子として作用した結果で、喫煙習慣で分けたとき、ライター所持のオッズ比はいずれも1です。ライターを持っていれば喫煙者という交絡のせいで、あたかもライターが肺がんのリスクであるように見えたのです。
佐藤:数学的モデリングと多変量解析について説明してください。
中村:(回帰式を使用したロジスティック解析の説明)
佐藤:原告が線形性を問題視しているが、それは何か。
中村:線形性とはlinearityのことで、直線的関係のことである。発症率をみて、多少凸凹しているが、線形性に問題は生じない。
佐藤:28ページの主解析について、可能性として、ダミー変数を使った解析も可能とあるが、これは何か。
中村:年齢を連続料として入れる代わりに、その年齢に該当するかという変数を使用した解析です。
佐藤:例えば、13歳かどうかという変数ということか。
中村:その通りです。
佐藤:ダミー変数を使用したとき線形性は問題となるか。
中村:なりません。
佐藤:連続量、ダミー変数、調整なしの3本の折れ線グラフをみて、名古屋スタディの信頼性についてどう考えますか。
中村:2点ある。ひとつは、調整なしと他の2本が異なっていること、もうひとつが、連続量とダミー変数のグラフがほとんど重なっていることです。結論として、線形性の問題があったとしても大きくないということです。
佐藤:層別解析、サブグループ解析について、その意味は何ですか。
中村:主解析は全体解析、サブグループ解析は一部のグループだけの解析です。同じ結果が得られれば、主解析の結論を強く示唆する
佐藤:名古屋スタディのサブグループ解析の説明をしてください。
中村:7つのグループに分かれていて、層の中では接種年がそろっている。
佐藤:層によるオッズ比の違いも分かるのか。
中村:その通りである。
佐藤:層別解析の意義を説明してください。
中村:(資料を使って説明されたので詳細は分からない。年齢層別解析で、年齢交絡の可能性があり、さらに年齢層で結果が異なるという例であった)
佐藤:以上の前提で、名古屋スタディのサブグループ解析の表 7の評価をしてください。
中村:一部の症状で有意ではあるが、オッズ比は高々2程度。横に見て(違う層の同じ症状のこと)ほかに高いところはない。関連があれば他のところも同じ方向を向いて当たり前だがそうなっていない。これより、主解析の関連なしの結果がより強くなったと考える。
佐藤:表7で有意な関連は2つ。強固性の観点からどう解釈されるか。
中村:オッズ比は高々2程度。強固性はない。
佐藤:他には?
中村:強固性を論じる前に関連がない。2つが有意というのは、多重性の問題と考えている。有意水準を5%に設定するので、20回に1回は関連がなくても有意になる。120個のオッズ比の20回に1回なら、6回有意が出ても当たり前。それが2回ということなので、多重性を考えれば、関連はないということを示している。
佐藤:症状17について、オッズ比が、0.49、0.75、0.5、1.、2.という具体的なオッズ比の比較から何が言えるか。
中村:同じ症状なので同じ方向を示してしかるべきなのにそうはなっていない。有意に出てきたものも、多重性のせいとするのが正当である。
佐藤:2.17、1.67というオッズ比については?
中村:それほど強固でない。
ここで休憩。
会場からは、「まるで教養部の授業、こんな簡単なことにこんなに時間をかけるのか」という意見が聞かれた。
このくらいの知識が前提になっていれば楽なのに、そうなっていないから、ここまで10年近くかかってしまったという感慨もひとしおである。
小森:小森です。交互作用とは何ですか。
中村:交絡因子のレベルごとにオッズ比が異なることです。
小森:具体的には?
中村:(先ほどの例を用いて説明。交互作用がないと傾きが一定だが、交互作用があるときには傾きが異なる)
小森:統計学的に有意な交互作用とはまれなものなのか。
中村:むしろあるのが普通と考える。
小森:主解析は交互作用があるので誤りという意見があるがどうか。
中村:誤りとは思わない。
小森:交互作用があっても、影響が小さければ、関連なしということか。
中村:その通りである。
小森:名古屋スタディのサブグループ解析のコホート1とコホート3の年齢の異なるコホート間の結果からどういうことが言えるのか。
中村:コホート1とコホート3の年齢の違いにより、結果は大きく違っていない。あっても些細なものである。主解析における交互作用の影響についても、結果を大きく揺るがせるものではない。
小森:点推計値の実質的な差は?
中村:仮にあったとしても主解析の結果を揺るがせるものではない。24症状の結果については問題ないと考える。
小森:にもかかわらず、有意なものがあるのは?
中村:サンプルサイズが大きいからである。
小森:健康者接種バイアスとは?
中村:ワクチンは健康な人に行われる。健康問題があれば受けられない。非接種者の健康状態がアウトカムに影響するということです。
小森:一般的にこのバイアスはどういうものですか。
中村:高齢者や季節性、短期的な場合に問題になります。高齢者は個人差が大きく、健康状態が慢性化しがちであること、インフルなどは短期であることが問題になります。
小森:HPVワクチンではどうでしょうか。
中村:接種の中心が小6から中高生なので、健康状況は一様で、接種も長期にわたり、いつでも打てるので、影響はあってもささい。このバイアスが原因になるとは思えない。
小森:設楽・森川論文で、一部症状で増加が見られるとしているのはどうか。
中村:言い過ぎではないか。増加傾向はほとんどないと思う。
小森:この論文では、15-17と18-21歳、15-16と17-21歳、1 6-18と19-21歳という複数の年長、年少の群に分けて解析しているがどうか。
中村:なぜ2群に分けたのかわからない。各年齢層のものを出すべき。交絡がどのように働くかわからない。
小森:名古屋スタディのサブグループ解析ではどうか。
中村:年齢調整が行われており、名古屋スタディでは年齢が交絡していない。
小森: 名古屋スタディの主解析のオッズ比が1.2程度であることの、健康者接種バイアスを考慮した解釈はどうか。
中村:バイアスが仮にあったとしても、それが原因での結果ではない。本当はオッズ比がすごく高くて、健康者接種バイアスで値が下がっているということは考えられない。
小森:オッズ比が1を下回った理由は?
中村:回収率が40%なので、選択バイアスはあったかもしれない。
小森:選択バイアスとは何か。
中村:無作為な参加は考えられないので、そのせいで標本抽出に偏りが生じるために起きる。
小森:名古屋スタディの選択バイアスにはどのようなものが考えられますか。
中村:名古屋スタディは、目的が明確である、また「団体」が呼びかけたやに聞いている。そうすると「a(接種・症状ともあり)」の実が大きくなり、その場合、オッズ比は大きくなる方向に動く。
小森:「d(接種・症状ともになし)」はいかがですか。
中村:接種・症状ともになしということで、「自分とは関係ない」と参加しないとも思われる。その時はオッズ比は小さくなる。
小森:a、dの動きに一定のルールはあるか。
中村:ない。
小森:健康者接種バイアスについて、鈴木論文が出ている。これについて概要の説明を。
中村:同じ年度における、同年齢の接種者の接種前の状態と非接種者の症状の発生割合を比較したもので、健康者接種バイアスがあるとしたら、非接種者の方が高くなるとするものです。
発生割合の差の95%信頼区間の下限が0を超えれば、非接種者のほうが高いということになります。
小森:結果をどう解釈しますか。
中村:全体としてなかったと解釈します。いくつか有意のものがあるのは、多重比較の問題と考えるのが妥当です。有意差が生じたものも、方向性が一致していない。
小森:八重・椿論文について伺います。全般的な意見をお願いします。
中村:なぜこのような解析結果が学会誌に載ったのか理解できません。全く意義がない、というより有害である。
小森:彼らはStudy Periodという変数を使っているが、どのような意図によるものか
中村:接種前にあった症状は本来症状なしとするべきというものです。
小森:それは正当な考えですか。
中村:正当な考え方です。
小森:名古屋スタディではそれに対応していますか。
中村:サブグループ解析2で対応しています。
小森:八重・椿論文ではどうですか。
中村:サブグループ解析を行わず、あえて異なる扱いをすることで、接種前の症状を除外しています。なぜこのような誰も理解できないような方法をとったのか、接種者と非接種者で観察期間が異なり、非接種者で長くなるということがバイアスを呼び込みます。
小森:期間が2倍なら、アウトカムも2倍にしたらよいのではないか。
中村:症状は年齢依存で、均一に起きるわけではないので、2倍にすればよいというものではない。
小森:鈴木レターの図の説明をしてください。
中村:Study Period調整で、同じもの同士を比べることになるので、接種者は相対的に若い非接種者と比べることになる。両群の年齢比較に齟齬があり、正しいオッズ比でない。
小森:曝露群で平均年齢が高く、実際のオッズ比より高いということか。
中村:そうである
小森:Study Periodは、年齢の代替とも言っているが、それについてはどうか。
中村:そうであれば、年齢を使うべきでしょう。
小森:Study Periodとワクチン接種の交互作用というのは?
中村:ワクチン有無の変数とStudy Periodをかけたものです。
小森:例えば、接種者でStudy Periodが4なら4ということでよいか。
中村:その通りです。
小森:これで、交互作用の影響を除けますか。
中村:これで影響が覗けるのはStudy Periodがゼロの時だけです。しかも、Study Periodがゼロの非接種者は誰もおらず、接種者も20―30人で、外挿によって架空に作り上げた砂上の楼閣。Study Periodごとの数値は出せたはずなのに、Study Period=0のみ提示している問題もある。自らの主張に合う数値のみ、都合のよいところだけ提示している。
小森:八重氏が薬害オンブズパースン会議のメンバーであることを開示しなかったことについてはどうか。
中村:不十分である。COIの開示は研究の中立を読者に判断してもらうために必要で、多くはお金の問題であるが、特定の団体の主義主張がなされることもある。「このCOIについてどう思うか」と研究者10人に聞いたら、全員が「問題あり」と答えた。
小森:八重・椿論文の掲載紙はJJNS(日本看護科学雑誌)であるが、これについてはどうか。
中村:鈴木氏の論文は、Papillomavirus Research、日本公衆衛生雑誌という「本丸」で勝負しているが、JJNSは、ワクチンの安全性の守備範囲とは考えていない。保健統計学の、疫学の雑誌で勝負すべきである。
小森:「シグナル」についてはどうか。
中村:WHOはシグナルについて、「これまでに知られてなかった、医薬品に対する、さらに検討の必要なもの」としている。仮にあったとしても、承認前に短期のものは見ているので、長期に使って出てくる事象と考えられる。これをシグナルとして、HPVワクチンも、シグナルがあったため、海外で見たら問題なく、日本で見ても問題なかったということ考える。
小森:「有意差なしを関連なしとするのは統計の誤用」という、椿氏の見解については?
中村:統計学的に見れば、確かに「示された」ということではない。しかし、疫学は総合的に判断する。疫学的にみると「関連なし」で結構だと思う。
小森:こうした要素を踏まえて、因果関係についてどのように判定するか。
中村:すべてを踏まえて「なし」と判定する。
小森:もう少し詳しくお願いします。
中村:時間性:サブグループ2で対処。一致性:諸外国と名古屋スタディの結果。強固性:高いオッズ比なし。一貫性:なし。必要十分条件:満たしていない。整合性:なし。
小森:Population approachではダメという椿氏の見解については?
中村:全数調査をして出てこないようなものを追いかける意義は薄い。
小森:ハイリスクグループ解析については?
中村:ハイリスクグループが明らかになっていない状況ではナンセンスだ。選択バイアスをかけて解析すればどんな結果も出せる。
小森:HPVワクチンと多様な症状の間に関連はありますか。
中村:両者の間に関連はないと判断します。
小森:ワクチン必要なしとする原告側の主張に対しては?
中村:我々は予防を、1次、2次、3次に分けて考える。1次予防はその中でも最も大切なもので、多くのがんは生活習慣がリスクになっている。子宮頸がんはワクチンでかなりのものが防げる。それでももしなったら検診ということ。2次予防があるから1次予防をしなくてよいというのは、肺がん検診があるからタバコ対策をしなくてもよいということで、まったくナンセンスである。不幸にして発生したら2次予防、行政でもそのラインで施策を進めている。
小森:最後に感じたことを。
中村:名古屋スタディのすばらしさに感服しました。鈴木教授は青木國雄名古屋大学名誉教授のお弟子さんですが、青木先生の鍛え方はハンパなかった。嫉妬するくらいの出来でした。
椿先生は共著者になったばかりに「年齢調整をしなくてよい」などの研究者生命を脅かすような発言をさせられ、お気の毒にと同情している。
どちらに与するということではなくて、科学的根拠に基づいて動くべきと考えます。
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