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休みなし、ミスれば怒号が飛ぶ…1980年代「西武ライオンズの黄金期」での壮絶な日々に僕が思っていたこと

この正面ゴロ捕球をずっと続けてやっていると「もうわかったよ、できるから勘弁してくれ」「なんでこんなことやらせるんだ」と、いろんな感情が湧き起こってきます。嫌がらせでもされているかのような、拷問でも受けているような、そんな気持ちになってきます。

でも、これがものすごく大事なんです。

腰を落としてゴロを捕って、ステップして送球する。その一連の動作を、狂いなく固めるための地道な作業。一切の妥協を許さず、この動作を体に染み込ませる。それによって、当たり前のことを当たり前にやれるようになっていくのでした。

戦術や練習法はドジャースの流れを汲んでいた

守備の徹底、厳しさという点では、キャンプで特別に時間を取って行う、フォーメーション練習も忘れられません。首脳陣が見つめる中、拡声器で指示が飛ぶ、張り詰めた雰囲気で選手たちにプレッシャーをかけます。

本職の投手が投げて、レギュラーが守備位置について、若手が打席に入ります。本番さながら、僅差で終盤に入った試合の状況です。

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攻撃側、守備側、それぞれサインを出します。攻撃側はなんとかして一塁走者を二塁に進めたい。守備側は、なんとかしてそれを阻止したい。

簡単にバントをさせないシフト、あえてバントをさせて先の塁でアウトにしたり、ダブルプレーを狙ったりするシフト、1シーズンに一度使うか使わないかといったフォーメーションも綿密に練習を繰り返します。できなかったときは怒声の集中砲火を浴び、交代を命じられたり、やり直しを命じられたりします。

投手も必死。一発でフォーメーションに引っかけるためには、ボール球になっては意味がなく、より確率が高くなるところに正確に投げなければいけません。

伊藤勤著『黄金時代のつくり方』
伊藤勤著『黄金時代のつくり方』(ワニブックス刊)

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