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肉・酒禁止、土瓶のビールをこっそり飲む日々、プロ野球「西武ライオンズ黄金期」のウラで起こっていたこと

そこへ追い打ちをかけるように、キャンプの食事では肉が出ません。これもまた多くの選手たちから反発されていました。今ではアスリートが良質のタンパク質として肉類を食べることは奨励されますが、当時、広岡さんが支持した説だと、「動物性タンパク質は良くない」ということだったのです。

「厳しい練習をやって疲れた体に野菜ばかりじゃ力が出ない」

食事は、プロ野球選手にとって楽しみのひとつですから、それを絶たれて、特にベテラン選手たちがすごく反発していました。

キャンプでの食事で、今でもよく覚えていることがあります。

もちろんタバコもダメだし、酒もダメ。でも食卓の真ん中にある、お茶が入っているはずの土瓶にビールが入っていて、それを湯飲みに注いでベテランたちが飲んでいたんです。

おそらくですが、さすがに首脳陣もわかっていて、黙認していたんだと思います。おそらくですが。

黄金期主力の体は広岡イズムの成果

先輩たちは納得しないままでしたが、だんだんと時が経つにつれて、様子が変わっていきました。他のチームでは夏場になるとケガで離脱する選手が多くなる中で、当時の西武は故障者が出なくなっていました。

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戦力的にダウンすることなく、シーズンを走りきって、勝ちまくってみると、やはり食事が良かったのかもしれないと、みんなが思うようになっていました。

加えて、ただ制限するだけではなく、理屈を説明してくれたのも良かったと思います。疲れたときのバカ食いはかえって消化吸収に悪いとか、暑いときに冷たいものを摂取しすぎると疲れるとか、体力勝負だからといって肉ばかり食べていると疲労が回復しない、ケガが治りにくい体質になるとか……いろいろと誤った知識を改め、正しい知識を教えてくれるようなことがありました。

確かに、ケガをした選手たちが肉ではなく魚と野菜を中心とした食事にしたところ、思いのほか早く復活できたということもありました。とにかく、体力的に夏にバテる人が少なかったです。こうして、広岡監督の4年間で西武ライオンズの食生活はがらりと変わりました。

伊藤勤著『黄金時代のつくり方』
伊藤勤著『黄金時代のつくり方』(ワニブックス刊)

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