筋書きは知っているがお昼の再放送を録画し、欠かさず見ている。家族の100年の物語を描くNHKドラマ「カムカムエヴリバディ」は東映京都撮影所と太秦映画村の協力あっての名作だろう。時代劇大好きの3代目ヒロインが昭和と平成を躍動する▲先細る時代劇を守ろうと、あの手この手を考える撮影所の愛すべき人々も出てくる。いま口コミで評判を広げる自主制作映画「侍タイムスリッパー」を見て、同じ現場の心意気を感じた▲幕末の京にいた会津の武士が時を超え、なぜか現代の時代劇の現場へ。騒動の末に「斬られ役」として生きていく奇想天外な筋立てだ。時代劇愛あふれる人情コメディーに力を貸したのも東映の撮影所にほかならない▲予算がなく、コメ農家兼業の監督は貯金をはたいて車を売る。主役を支える助監督役のヒロインは実は現場の助監督。彼らの夢が時代劇のプロと一つになる舞台裏そのものが物語のよう▲米テレビ界で戦国ドラマが大当たりし、海外展開もにらむ時代物の大作が日本で相次ぐ。あの映画村も外国人向けに全面刷新中だ。本物の時代劇を残したい―。「侍(さむ)タイ」と呼ばれ始めた手作り映画のせりふが世界に届くだろうか。