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女性委への圧力 日本の信頼損なうだけ

2025年2月8日 05時05分 (2月8日 05時05分更新)

 日本政府が国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)に支払う任意拠出金の使途から女性差別撤廃委員会を除外するよう求めた。
 皇位継承を男系男子に限る皇室典範の規定が女性差別撤廃条約の理念と相いれないとして改正を勧告したことへの対抗措置だというが、威圧にほかならない。撤回するよう求める。
 日本は委員会の事務を担うOHCHRに年2千万~3千万円を拠出している。
 政府は改正勧告を巡り、同委員会に「皇位につく資格は基本的人権に含まれない。女性に対する差別に該当しない」と皇室典範への言及を削除するよう求めたが、聞き入れられなかった。
 皇位継承の在り方は国の基本に関わり、日本が主体的に決めるべき課題ではある。
 しかし、日本の主張がなぜ理解されなかったのかは、真摯(しんし)に考える必要があるのではないか。
 欧州では君主制の国の多くで女性にも王位継承権が認められ、日本の世論調査でも大多数が女性・女系天皇に賛成している。
 政府・自民党は、次世代の皇位継承資格者が秋篠宮家の長男悠仁さまに限られ、皇統の維持が危機にあると訴えながら、皇位を男系が継承してきたとされる歴史と伝統に固執し、安定的な皇位継承策の先送りを重ねてきた。
 皇位継承を巡るこうした議論が23カ国の専門家で構成する同委員会には、女性に差別的と映ったとしても不思議はない。
 勧告が意に沿わないからといって、拠出金の使途から外すよう迫るのは、女性差別解消に向けた意思を疑われ、国連重視の外交姿勢とも整合しない。
 同委員会は選択的夫婦別姓の導入も勧告した。日本は過去3回、同様に勧告されても実現に動いていない。皇位継承を巡る勧告には日本のジェンダー平等に対する不信感もあるのだろう。
 政府は対抗措置で同委員会の訪日プログラムも取りやめた。男女の平等や共同参画の取り組みに理解を求める機会を放棄すれば、日本の女性政策に対する国際社会の視線は厳しくなるばかりだ。
 拠出金を取引材料にして、自国の要求を実現しようとする圧力外交は、米国のトランプ大統領の手法と同じだ。それをまねても日本の国際的な信頼を傷つけ、ひいては国益を損なうだけである。

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