米国立衛生研究所が経費削減、医療進歩を遅らせると研究者は反発
Gerry Smith-
研究に昨年助成された90億ドルが「管理費として使われた」-NIH
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「救命医療研究に対する直接かつ大幅な削減」と公立大学の団体
米国立衛生研究所(NIH)は7日、研究機関が政府に請求できる「間接経費率」の上限を引き下げると発表した。この変更により、年40億ドル(約6080億円)以上の節約が見込まれるが、医療研究者はこの措置が病気治療の研究開発に悪影響を及ぼし得ると警告している。
NIHは研究に昨年助成された350億ドルのうち90億ドルが「管理費として使われた」とX(旧ツイッター)に投稿。一方、研究機関側は特定の研究プロジェクトや機能に直接帰属できない間接費の払い戻しを受けることが極めて重要だと主張した。
米公立ランドグラント大学協会のマーク・ベッカー会長によると、そうした支出は患者の安全や研究のセキュリティー、有害廃棄物の処理などに関する項目に充てられる。
同会長は「NIHによる研究費の償還削減は、がんの治療や糖尿病、心臓病などの慢性疾患の治療といった医療の進歩を遅らせ、制限することになる」とする声明を発表。「誤解のないように言うが、これは救命医療研究に対する直接かつ大幅な削減だ」とコメントした。
ホワイトハウスのクシュ・デサイ報道官はこの声明を「ヒステリー」だと表現。「NIHに割り当てられた何十億ドルもの予算を管理部門の肥大化から別の用途に振り向けることは、正当な科学研究に利用できる資金やリソースが増えることを意味し、減ることを意味するものではない」と反論した。
トランプ政権は連邦政府全体のコスト削減を進めている。イーロン・マスク氏の政府効率化省(DOGE)が連邦支出を詳しく調べ、人工知能(AI)ソフトウエアを投入し検証しているとも伝えられる中で、保健関連の政府機関では大量解雇の不安が広がっている。
間接費の払い戻しについては、以前から批判の声が上がっていた。米政府監査院(GAO)が2016年に発表した報告書は、間接費率の管理を強化するよう求め、「連邦資源の浪費」リスクがあると指摘した。
原題:Outcry as NIH Plans $4 Billion Cut to Reimburse Scientists (1) (抜粋)