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月次決算はなぜ必要なのか

事業計画の策定をコンサルティングしている一人社長さんから、「そもそもなんで月次決算が重要なのか、世の中の小さい会社はそんなことすらもわからない。そういうのを説明するコンテンツを作れば良い」と言われたので、素直に書いてみます。

というか、普段Twitterの会計クラスタに(いちおう)所属していると、流れてくるのは趣味で会計処理の薄い本を書くような変態たちや、財務モデルをゴリゴリ作ってレベルの高い議論をしているファンドの人たちの話なので、世の中の小さい会社の社長さんの感覚とは大きく乖離していたのかもしれません。

未上場中小企業の会計の実情

TLの会計クラスタの方々には想像もつかないかもしれませんが、非上場の中小企業だと会計処理はかなり滅茶苦茶で、現金主義の気配が色濃く残っていますし、年度末に顧問税理士さんに綺麗にしてもらってそれでOKと思っているところが大半です。

よく見るのが、簿記三級で習う「しーくりくりしー」をやっておらず、期末在庫だけ月次で残高が洗い替えられているケース、このときは会計ソフトのデータからPLの月次推移を組むと、期首在庫は本当に期首だけ計上されて、翌月以降は値がゼロになり(毎月増減しないから)、期末在庫だけ毎月残高の増減分だけ値が計上されるようなPLになります。

他には、賞与引当金繰入額を毎月繰り入れているのに、賞与支給月に全部引当金をひっくり返して残高ゼロにして、賞与勘定で支給額を入れる会計処理もよく見ます。このときは賞与支給月のPLだけ費用がものすごく少なくなり、月次の利益が凸凹になります。

また、勘定科目の使い方が統一されておらず、同じ取引先の同じ費用なのに月によって計上科目が違うなんてこともよくあります。

月次決算を行っていても、数字が出るのが翌月とか翌々月なんてこともあります。

さて、上記の内容も「月次決算って何が嬉しいの」という方々には正直何のことやらだと思うので、実利的な面からメリットを挙げてみます。

会計処理を綺麗にして月次で締めるメリット

まず、会計処理をできる限り綺麗にするメリットです。

ここは凝りだすとキリがないので、いったん現金主義をなるべく発生主義に寄せるのと、勘定科目の整理くらいにしましょう。BS科目の実在性などはおいおいやるとして、PLを綺麗にします。

何が一番嬉しいかというと、モニタリングのやりやすさとトレーサビリティが向上することでしょうか。

発生主義に寄せる

発生主義は、現金主義のように「現金が出て行ったタイミング」ではなく、「理論上ここで費用が発生しているであろうタイミング」で費用を計上するので、収益(売上)に対応した費用計上になりやすくなります。

平たくいうと、「毎月の業績記録が凸凹になりにくく、会社の巡航速度を見やすくなる」ということです。

例えば、賞与であれば、夏冬の二回どこかの月で支給するとしても、実際には従業員はずっと働いており、その働きに報いて賞与支給するわけなので、理論上は毎月少しずつ発生していると考えられるわけです。

こういうのをちゃんと均しておくと、その月は本当に良かったのか悪かったのか、この利益の変化は何か起こったのか、がわかるようになります。

勘定科目を整理する

こちらは主にトレーサビリティの問題です。

勘定科目を正しく使う、同じ費用は毎月同じ勘定科目で計上する、補助科目でサブカテゴリを上手くつける、といったことをすると、月次でPL/BSを並べたときに特定の項目の増減がよく見えます。

よくわからない固定費があるとか、いつの間にか増額されているとか、変動費がじわじわ増えていてこれは材料費を見直さないととか、そういうのがわかります。

月次で決算をするメリット

そういえば、そもそも「帳簿はずっとつけてるからそれを月別にすれば月次になってるじゃないか。月次『決算』って何?」という疑問があるかもしれません。

これはもっともな疑問で、例えば毎月の電気代などずっと真面目に記帳していればそれで月次になってるんでしょうという話です。

だいたいそれであっていなくもないのですが、より正確には、年度末決算で行う各種の確定処理(現預金や在庫の金額を確かめたり、発生主義で各月に配分する費用を計上したり)を毎月少し軽めにやっておこうというものです。

これにより、ただずっと日々の帳簿をつけたものよりも、その会社のその月の巡航速度をより正確に表したものになります。そこまで手直しを加えたものを月次で比較することにより、何かの要因で売上や費用が増減しているかに気づくことができるのです。

月次決算をしていないとどうなるか

さすがに、「まったくしていない」会社は相当規模が小さいところだけかもしれませんが、数か月遅れで出るとか、出ても数字が正確ではないとか、そういった状況だと、極端な話「銀行口座のお金が増えているか減っているかでしか業績が感じ取れない」ということがありえます。

嘘でしょと思うかもしれませんが、実際に買収した会社がそれで資金ショート寸前だったこともありますし、キラキラ経歴を集めた会社がバックオフィス軽視で業績把握してなくて死んだとかいう話を聞いたことがあります。

もっとも、個人商店と同じくらいの規模だと、売上からその売上にかかった経費を引いた粗利・限界利益もどきみたいなものは案件管理表などで管理していて、販管費・固定費っぽいものは自分の給料と家賃くらいだったりするので、そんなに突然死リスクはないかもしれません。

それでも、働けど働けど楽にならんなと思っていたり、どうやったら会社大きくなるねんと思っていたりするかもしれません。もう少し大きくなって人を雇うようになると、だんだん突然死リスクが高くなりますね。

まとめ

ということで、月次決算、顧問税理士に払うお金が増えるし年度末だけでいいやとか、記帳はずっとしてるんだから良いでしょとか、まあわからなくもないですが、人を雇うようになったら始めたほうが良いのではと個人的には思います。

なお、数人くらいになると会社の誰かが頑張って記帳を始めたりしますが、それくらいの人数だと簿記を学習して記帳と決算をするコストが会社の規模に比して大きすぎると思うので、まずは顧問税理士に依頼で良いと思います。

3~5人しかいない会社で記帳に使う創業メンバーの工数は貴重すぎます。そんなことやってる暇があったらマーケティング・販売しましょう。

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