自分はBLおよび腐を好む人々がとても苦手である。ここでは便宜上「腐女子」と表記する。
なぜならば単純に気持ち悪いから。腐女子らはなぜか隠れない。平然と「受け」「攻め」「カプ」などの腐用語をところ構わず垂れ流す。どれくらい苦手かというと、これらの文字を見るだけで具合が悪くなるほどである。
なぜここまで苦手になったかというと、今から10年ほど前、当時自分は中学生だったが、たまたま姉がテーブルの上に置いていたジョジョのエロBL同人誌を見たからだ。
男キャラ2人が見つめあっている絵が表紙だった。キャラデザは限りなく承太郎と花京院、だが明らかに公式のものではない絵であり、タイトルとおぼしき寒い文章も記されていた。
「何これ？」と姉に尋ねた。当時大学生だった姉は「あぁ、それジョウカの同人誌」と答えた。なんの違和感も躊躇もない言い方だった。
「ジョウカって何？」と聞くと「好きなカプ」とのこと。「何それ？」とさらに質問を重ねると、うっとうしそうに追い払われた。姉とはそんなに仲が良くないのだ。意味が分からなかったので、スマホで調べた。
そして全てを理解した。理解しなきゃよかった。知りたくなかったそんな世界。
嫌なものを見てしまったな、でそのときは終わった。
時は流れ、自分は某SNSのアカウントを作った。好きなアニメの公式アカウントやファンアートを描いている人をフォローした。すると流れてくるわ流れてくるわ、腐女子のポストが。
作中で全くと言っていいほど関わりのないキャラクター同士をそういう関係にしたり、仗助×露伴など作中で嫌いあってるキャラクターをそういう関係にしたり、既婚者なのに結婚していないことにしてそういう関係にしたり、DIO×花京院やDIO×承太郎などありえん組み合わせのものを見るたび、恐怖に近い感情を覚えた。本当に原作を読んでいるのだろうか。それぞれがお互いに対して抱く感情は恋愛とは最もほど遠いものではないか。一種のヘイトのように思えてならなかった。
よく「関係性に萌えてる」と言うわりには上記のように無理やりこじつけたような組み合わせだったり、嫌いあってる関係性を無視したり、ひどいと作中で一度も会話したことないキャラクター同士をそういう関係にしていたりする。もっともこういうのは顔カプと言われ腐女子界隈でも嫌われがちだとかそういう話はどうでもいい。やめてほしい。聞きたくない。しないでほしい。耳を塞ぎたい。
BLが好きすぎるがあまり承太郎の娘が主人公である6部の存在が許せない、という旨の呟きを見かけたことがある。また花京院が可愛いあまりDIOをひどい目に合わせるイラストを載せたアカウントもあった。
ジョナサンとディオのBL絵を見たとき、作中ジョナサンはディオに対して「友情を感じたことがない」というようなモノローグがあったはずでは、と思った。作者は「友情以外の感情があるのかもね」というようなことを書き添えていた。こじつけに思えてならない。もちろん個人の自由ではあるのだが、自分はそう思った。だめだこのままでは心が死ぬ、と思った。当時高校生だった。自分の心が弱いのは自覚していた。だからこそ守らねばならなかった。自分はアカウントを消し、しばらく原作からも離れた。
一時期SNSに跳梁跋扈していた嘘松騒動がなお腐女子嫌いに拍車をかけた。承認欲求を満たしたい気持ちは理解できるが、そういった人たちのそういった嘘を見かけるたびいつも残念な気持ちになった。もちろん腐女子でない人の嘘にも嫌悪感はあったが。
「また腐女子か……」「なんで腐女子って嘘つくの？」というような呟きを見るたび全力で同意すると同時に、腐女子らに対しての嫌悪も募っていった。
なぜ隠れないのか。なぜ作中の男性キャラをそういう関係にして楽しむのか。なぜそれをさも尊いもののように祭り上げるのか。なにひとつとして理解できない。
今でもあの絵がフラッシュバックする。最近知ったが、あのとき見た同人誌は姉が出したものらしい。お世辞にも上手いとは言えない絵だった。ほかにも知りたくなかったのだがリゾット×プロシュート兄貴の同人誌も出していた。正気の沙汰とは思えない。兄貴の相棒といえばペッシではないのか。なぜ原作で関わりのないキャラクター同士をそういう関係にするのだ。全く理解ができなかった。
布教のつもりなのか「読む？」と聞かれたのが地獄の始まりだった。表紙の絵を見て戦慄した。もう思い出したくもないので書かないが、好きなキャラクターをこういう風にされたことがすごくつらかった。
好きな作品やキャラクターの名前で検索するとサジェストに腐用語が出てくるのも本当につらい。上述の通り自分はそういった用語を見ると具合が悪くなるのだ。
以前それと知らずに姉に商業のBL漫画を読まされたことがある。いわゆる受けとされる男性キャラが本当に苦手だった。男キャラなのにまるで女のような、なよなよした体に終始とろとろの表情だった。BL漫画とは受け側に自己投影しつつ読むものなのだろうか。
好きなキャラクターについて検索したとき、サジェストに「受け」と出てきた。そのとき好きキャラがあのとき読んだBL漫画の受け役のような表情をしているところを想像して大変に具合が悪くなった。
以来SNSではミュートワードの設定やブロックなどを駆使して平和を保っているが、ふとしたきっかけで目にしてしまい気持ち悪くなる。
完全に住んでいる世界が違うため、理解を求めるつもりはない。そのかわりこちらも理解できない。（＝否定ではない）
腐女子は逆カプ、リバ、相手違い、対抗カプ、などで永久に戦争を繰り広げているが、苦手な人間からすると大変だなぁという感想しかない。そういうところも苦手の一端を担っている。
自分はせめて二次創作には手を出すまいと決め、現在まで生きている。腐女子が怖い。たまにあの承太郎と花京院の絵が夢に出てくる。楽になりたい。忘れたい。