投資信託はやめたほうがいい？大損する人の失敗例とリスク管理のコツ

投資信託は手軽に分散投資でき、運用を専門家に任せられる金融商品です。初心者の人でも購入しやすい一方で、銀行や証券会社の営業員に勧められるがままに購入したり、何も考えず安易に購入すると大損をしてしまう可能性があります。

しかし、購入する投資信託の特徴やリスクをきちんと把握し、自分自身でもリスク管理をすれば大損する事態は防げます。投資信託を有効活用するためにも、活用方法や選び方のポイントを知っておきましょう。

今回は、投資信託が「やめとけ」と言われる理由や投資する際のリスクを解説します。また、投資信託のメリットや自分に合った商品を選ぶためのポイントも解説するため、これから投資検討をする際の判断にお役立てください。

投資信託が「やめとけ」と言われる理由は大損してしまう可能性があるから

自分自身で深く考えずに投資信託を購入すると、思わぬ失敗につながることがあります。投資信託はプロが運用しますが、必ずしも利益を出せるわけではなく、大損する可能性もあります。また、営業員に勧められるまま購入したり、ランキング上位の商品を選んだりすると、自分に合わない投資信託を選ぶリスクがあります。さらに、手数料負担や運用の放置にも注意が必要です。

なぜ「投資信託はやめとけ」と言われるのか、どういうときに大損してしまう可能性があるのかを詳しく見ていきましょう。

「プロに任せれば安心」と思い込むと大損するリスク

投資信託は、ファンドマネージャーと呼ばれる運用の専門家が資産を運用します。投資家は「買う」「売る」を判断するだけで、細かい運用はプロに任せる形になります。

しかし、どれほど優秀な専門家でも、常に利益を出せるわけではありません。「プロが運用しているから大丈夫」と思い込んでしまうと、相場の急変時に損失を被る可能性があります。

例えば、リーマンショックやコロナショックのような世界的な暴落は予測が難しく、プロでも回避できないことがあります。運用を完全に人任せにすると、想定外の損失に驚くことになりかねません。

投資信託を購入する際は、どのような資産に投資しているのかを理解し、市場の状況を定期的に確認することが大切です。

営業員に勧められるまま購入すると、自分に合わない商品を選ぶリスク

銀行や証券会社の窓口で投資信託を勧められることはよくあります。一見、親切なアドバイスのように思えますが、営業員の目的は必ずしも投資家の利益ではありません。

金融機関が推奨する商品は、「投資家に最適な商品」ではなく、「金融機関が販売したい商品」の可能性があります。例えば、手数料が高い商品や、販売ノルマのある商品が優先的に紹介されることもあります。

営業員の説明を鵜呑みにせず、投資対象や手数料をしっかり確認し、自分の投資目的に合っているかを判断しましょう。

ランキング上位だからといって安心できない

インターネット上では、「人気の投資信託ランキング」がよく紹介されています。ランキング上位の商品を見ると、「多くの人が買っているから安心」と思うかもしれませんが、それだけで判断するのは危険です。

人気のある商品には、実績がよいものもありますが、販売促進のために金融機関が積極的に売り出しているケースもあります。そのため、ランキングの順位だけで判断すると、自分の投資目的やリスク許容度に合わない商品を選んでしまう可能性があります。

ランキングの順位に惑わされず、投資信託の運用方針やリスク、手数料をしっかり確認することが重要です。

手数料が高い投資信託を短期間で売買すると、利益が出にくい

投資信託には、購入時手数料、信託報酬、信託財産留保額など手数料がかかります。

例えば、購入時手数料が1%の投資信託を100万円分購入すると、最初に1万円が手数料として差し引かれます。さらに、運用中も信託報酬がかかり、解約時に信託財産留保額が発生することもあります。

頻繁に売買すると、「購入時」「運用中」「売却時」にそれぞれ手数料を支払うことになり、手数料負担が資産形成の妨げになることがあります。特に短期間で売買を繰り返すと、利益よりも手数料の負担が大きくなり、結果的に資産が増えにくくなる可能性があるため注意が必要です。

投資信託は長期で運用することで安定したリターンを得られる可能性が高まります。短期での売買を前提にすると、期待したリターンを得られないこともあるため、投資目的に合った運用スタイルを選びましょう。

投資信託のリスクと損をしてしまう活用法

投資信託を購入する前に、どのようなリスクがあるのかを理解しておきましょう。また、損をしやすい活用方法についても解説するため、自分に合っているかどうかを判断する際の参考にしてください。

元本保証がなく、価格変動の影響を受ける

投資信託は、株式や債券などに投資する金融商品です。これらの資産は価格が変動するため、投資信託の価格も変わり、元本割れする可能性があります。

具体的なリスクとして、以下のようなものがあります。

どの投資信託にも、これらのリスクが伴います。投資信託だからといって、必ずしも安全な商品ではない点に注意しましょう。

関連記事：今さら聞けない「投資信託」の仕組みを解説！〜メリット、デメリットを徹底解剖〜

短期的に大きな利益を得るのは難しい

投資信託は長期的な資産運用向けの商品であり、短期間で大きな利益を狙うのには適していません。そのため、短期売買をしたい投資家からは「物足りない」と感じられることがあります。

例えば、個別株式や暗号資産であれば、銘柄によっては短期間で大きな値上がりを期待できます。実際にSNSや経済ニュースでは、「〇〇株で1年で2倍になった」「暗号資産で資産が10倍になった」といった成功事例を見かけることもあるでしょう。

しかし、投資信託は分散投資をしているため、大きな値動きが起こりにくいという特徴があります。短期間で資産を増やしたいと考えている人にとって、投資信託は必ずしも適した商品とはいえません。

株主優待を受けられない

株主優待を目的に投資をする人もいますが、投資信託を購入しても株主優待は受け取れません。

株主優待は、企業の株を一定数保有する投資家に対して提供される特典です。投資信託が企業の株を持っていたとしても、投資家個人の名義で保有しているわけではないため、株主優待の対象にはなりません。

「優待株投資をしたい」と考えている人にとって、投資信託は向いていない投資方法といえるでしょう。

短期売買を繰り返すと失敗しやすい

投資信託は、さまざまな銘柄を組み入れて分散投資をしているため、短期間で大きく値上がりすることは少なく、短期売買には不向きです。

また、投資信託の取引価格はリアルタイムで決まるわけではありません。購入や売却を注文しても、価格は翌営業日にならなければ確定しません。そのため、相場の変動を見ながら素早く売買することは難しく、短期取引を行うと予想外の価格で売買が成立し、損をする可能性が高くなります。

デイトレードやスイングトレードのように短期間で利益を狙いたい場合、投資信託は適した金融商品ではありません。

長期分散投資に向かない投資信託を選ぶと失敗する

投資信託の中には、長期運用には向かない銘柄も存在します。知らずに購入すると、思うような運用成果が得られない可能性があります。

①毎月分配型の投資信託のリスク

毎月分配型の投資信託は、定期的に分配金を受け取れるため、特に高齢者から人気があります。しかし、長期運用には向いていません。

• 手数料が高い：信託報酬や販売手数料が他の投資信託よりも高めに設定されていることが多い
• 運用効率が低い：分配金を出すたびに基準価額が下がり、長期的な複利効果が得られにくい

これらの理由から、資産を長期的に増やしたい場合、毎月分配型の投資信託は適していないといえます。

関連記事：毎月分配型投資信託は最強？問題点とデメリットも把握して正しく使おう

② テーマ型ファンドのリスク

特定の業界やテーマに特化した「テーマ型ファンド」は、注目されるテーマの成長を期待して投資するファンドです。例えば、カーボンニュートラル、生成AI、EV（電気自動車）関連などがあります。

しかし、これらのファンドは特定の業界に集中投資するため、分散投資の効果が弱く、流行が終わると成長が止まる可能性があります。実際に、一時的に人気となったテーマ型ファンドの中には、その後パフォーマンスが低迷してしまったものもあります。

長期投資を前提とするなら、テーマ型ファンドのリスクを理解したうえで慎重に選ぶことが大切です。

③ 償還期限を調べずに購入する

投資信託には「償還期限」が設定されているものがあります。償還期限とは、その投資信託の運用が終了する日を指します。

償還期限を知らずに購入すると、思わぬタイミングで運用が終了し、資産をそのまま運用し続けることができなくなるリスクがあります。また、償還時の基準価額次第では損失が確定することもあります。

長期投資を考える場合は、償還期限の有無を確認し、基本的には「償還期限なし（無期限）」の投資信託を選ぶとよいでしょう。

投資信託の購入をやめておいた方がいい人の特徴

これまでに解説した投資信託のデメリットを踏まえて、投資信託の購入が向かない人の特徴を見ていきましょう。

短期売買で利益を上げたい人

短期売買で利益を上げたい人は、投資信託の購入が向きません。投資信託の売買は、株式のようにリアルタイムの市場価格で取引されるのではなく、1日1回決まる基準価額で行われます。そのため、短期間で売買を繰り返すのには向いていません。

また、投資信託には購入時や解約時に手数料がかかる場合があり、頻繁に売買を行うとコストが増えてしまいます。チャートを分析したり、企業の財務状況や決算情報をチェックしたりする作業が苦にならず、自分で投資先を選びたい人は、個別株式の短期売買のほうが適しているでしょう。

株主優待を得たい人

株主優待を目的に投資をしたい人も、投資信託は向いていません。投資信託を通じて企業の株式を保有しても、株主優待を受け取ることはできないためです。

「株主優待を活用して生活費を抑えたい」「優待を受け取る楽しみを味わいたい」と考えている人は、優待制度を実施している企業の株式を直接購入するほうが適しています。

自分で運用状況を確認する手間を省きたい人

投資にあまり時間をかけたくない人や、運用状況を定期的にチェックするのが面倒な人も、投資信託が向かない場合があります。

ただし、投資信託は個別株や債券に直接投資するよりも運用の手間が少なく、プロが分散投資を行ってくれるため、ある程度は放置しやすいという特徴があります。そのため、「まったく手をかけたくない」という人には向かないものの、「頻繁に売買するのは面倒だが、ある程度の管理はできる」という人にとっては選択肢になり得ます。

一方で、完全に放置したい人には、元本保証がある個人向け国債や定期預金のほうが安心です。これらは市場の値動きを気にする必要がなく、投資信託よりもさらに管理の手間がかかりません。

また、手間を減らしたい人には、資産運用をプロに一任できる「ファンドラップ」などのサービスも選択肢になります。ファンドラップでは、投資判断を専門家に任せることができるため、運用状況を細かく確認する必要がありません。

投資信託は基本的に長期運用が前提となるため、資産の動きをまったく気にせずに済むわけではありません。しかし、個別株のように企業の業績を頻繁にチェックする必要はなく、債券投資のように満期管理をする手間もかかりません。そのため、ある程度の管理はできるが、頻繁に売買するのは避けたいという人には向いているでしょう。

資産運用における投資信託のメリット

投資信託にはデメリットや注意点があり、「やめとけ」という意見があるのも事実です。

しかし、少額から分散投資ができたり、自分の価値観やリスク許容度に合わせて柔軟に投資できるメリットがあります。具体的な利点や効果的な活用方法を知ることで、投資信託を資産形成に役立てられるでしょう。

少額から分散投資を始められる

金融機関によっては、100円や1,000円といった少額から投資信託を購入できます。「いきなり大きな金額を投じるのは不安」という人でも始めやすいでしょう。

また、投資信託なら、手軽にさまざまな資産へ投資できます。全世界の優良企業に投資できるものや、株式・債券・不動産などに分散投資できるものなど、選択肢は幅広いです。

個人で個別銘柄を買って分散投資しようとすると、多額の資金が必要になります。しかし、投資信託なら1つ購入するだけで分散投資が可能です。そのため、資産形成の手段として有効といえます。

リスクを軽減できる

一般的に、異なる値動きをする資産を組み合わせて分散投資すれば、価格変動リスクを抑えられるといわれています。また、海外資産を含む投資信託を活用すれば、為替変動の影響も軽減できます。

例えば、日本円だけを保有していると「円への集中投資」となり、円安局面では資産価値が目減りする可能性があります。しかし、海外資産に投資する投資信託を持っていれば、円安時でも外貨資産の価値が上がるため、リスク分散につながるのです。

さらに、個別株を購入した場合、投資先の企業が倒産すると資産価値がゼロになる可能性があります。一方、投資信託は複数の資産に分散投資しているため、特定の企業の倒産リスクを分散できるため、資産価値が大きく下落するリスクを抑えられます。このように、投資信託を活用することで、リスクを抑えながら資産形成を進めることができます。

個人では買いづらい投資対象にも投資できる

投資信託には数千種類があり、投資対象も多岐にわたります。新興国市場や高額な不動産など、個人では投資が難しい対象にもアクセスできるのが大きなメリットです。

例えば、「インドに投資したい」と考えても、個人でインドの経済や政治状況、企業の財務状況を調べるのは容易ではありません。さらに、時差の影響でリアルタイムの情報を得るのも難しいでしょう。

しかし、インドに投資する投資信託を選べば、運用のプロが情報収集を行い、適切な投資判断をしてくれます。海外投資に興味があるものの、自分で細かく調べるのが難しい場合、こうした投資信託は有効な選択肢となるでしょう。

投資信託には多様な種類があり、投資方針やリスク許容度に応じて選べる

投資信託には、投資対象や運用方針の違いにより、さまざまな種類があります。投資家の 目的、リスク許容度、投資期間 に応じて、自分に合った商品を選ぶことが大切です。

投資信託は、以下のような視点で分類できます。

例えば、リスクを抑えながら安定的に資産を増やしたい人は、債券中心のファンドやバランス型ファンドを選ぶとよいでしょう。長期的な成長を重視する場合は、株式を中心としたファンドや新興国ファンドが選択肢になります。また、国内だけでなく海外にも資産を分散させたいと考えるなら、先進国や新興国に投資するファンドが適しています。

このように、投資信託にはさまざまな選択肢があり、「インデックスファンドとアクティブファンドのどちらがよいか」だけにとらわれず、自分の投資目的やスタイルに合った商品を選ぶことが重要です。

投資信託は「つみたてNISA」や「iDeCo」で活用しやすい

投資信託は、つみたてNISAやiDeCoなどの税制優遇制度を活用することで、より効率的な資産形成が可能になります。これらの制度は、投資信託の特性と相性が良く、初心者でも無理なく長期投資を続けられる仕組みになっています。

関連記事：ドルコスト平均法で始めるリスク分散術！つみたてNISAやiDeCoと相性抜群の資産運用

まとめ

投資信託は手軽に分散投資できる一方、安易に購入すると大損のリスクがあります。特に「プロが運用しているから安心」と思い込むのは危険です。市場の急変で損失を被ることもあり、完全に人任せにするとリスク管理ができません。また、営業員の勧める商品や人気ランキング上位の投資信託が必ずしも自分に合っているとは限らず、手数料負担が大きい場合もあります。

リスクを避けるためのポイント

1. 投資先を理解する：どの資産に投資しているかを確認し、市場の動向を把握する。
2. 営業トークを鵜呑みにしない：手数料や運用方針をチェックし、自分に合ったものを選ぶ。
3. 短期売買を避ける：長期運用を前提にし、手数料負担を抑える。

投資信託は適切に選べば有効な資産運用手段になります。慎重にリスク管理をしながら活用しましょう。