「昭和特撮アクション 超・大野剣友会祭り」開催!昭和の『仮面ライダー』の戦いは「大野剣友会」の戦歴だ!!

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取材●RED染谷(電撃ホビーウェブ編集部)

2025年1月25日(土)に東京・渋谷のLoft 9 Shibuyaで、トークイベント「昭和特撮アクション 大野剣友会祭り」が開催された。



1964年に殺陣師の大野幸太郎さんが創立、数多くの演劇やテレビドラマで殺陣を務めてきた伝説の殺陣集団「大野剣友会」。昭和の時代に社会現象となるくらいの大ブームを巻き起こした『仮面ライダー』と『秘密戦隊ゴレンジャー』は、その後の特撮変身ヒーローものの方向性を決めたといっても過言ではない。その両作品のスーツアクティング(スーツアクション)を担当した「大野剣友会」のメインメンバーが再集結すると聞いて、会場には大野剣友会のアクションを愛するコアなファンが国内だけでなく海外からも駆け付けた。


国民的ヒット作品となった『仮面ライダー』の放映が始まったのは1971年(昭和46年)。オートバイに乗った異形の仮面ヒーローの活躍は実に斬新で、バッタをモチーフにしたデザインも絶大なインパクトを放っていた。仮面ライダー1号と2号が共闘する第41話(ダブルライダー編)が視聴率30パーセントを超えて大ブームになり、「変身!」が1971年の流行語になった。カルビーのスナック菓子 仮面ライダースナック(1971年~1973年発売)のオマケだった「仮面ライダーカード」やポピー(現:バンダイ)から発売されたなりきり玩具「仮面ライダー変身ベルト」(1971年発売)といったグッズも登場し、当時の子どもたちを熱狂させた。その『仮面ライダー』の大ブームを語る上で忘れられない存在が、仮面ライダーのキャラクターアクション(以下:ライダーアクション)の基礎を命がけで築き上げた大野剣友会だ。昭和の仮面ライダーブームを肌で感じた世代の筆者も彼らレジェンドスーツアクターの登場を取材席で今か今かと待っていた。


MC(聞き手)は、Michi Yamato(ミチ ヤマト)さん。高校生の時に仮面ライダーのアクションに憧れて製作した自主制作映画が認められて「大野剣友会」に入門(岡田勝さんに師事)。20歳で退会し、その後はアメリカ合衆国を拠点に活動しているスタントコーディネーターで、1995年に同国で放送されたハリウッドの仮面ライダー『マスクド・ライダー』でスーツアクティングと2ndユニット監督を務めた大野剣友会OBだ。


今回のイベントは、MichiさんがYouTubeで動画配信している「Michi Yamato Channel」内の人気コンテンツ「ガチトーク」の集大成とも言える企画。昭和・平成・令和で活躍するスーツアクター&アクション監督たちをMichiさんがステージへと呼び込む。


命がけのアクション! 設立60周年を迎えた「大野剣友会」のレジェンドたち!!

最初に姿を現したのは、アクションコーディネーターの福沢博文(ふくざわ ひろふみ)さん。主に平成のスーパー戦隊シリーズのレッド戦士を演じ、『仮面ライダーガッチャード』の監督としても知られている。自身が演したレッド戦士の名乗りポーズを披露しての入場だ。



続いてやってきたのは、1984年にテレビ特番として放送された『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』で活躍した仮面ライダーZX(ゼクロス)、映画『ウルトラマン物語(ストーリー)』ではウルトラマンタロウのスーツアクティングを担当した城谷光俊(しろや みつとし)さん。キレのある動きで仮面ライダーZXの名乗りポーズを見せてくれた。


次に登場したのは、児童誌での連載を経て1983年にテレビ放送された円谷プロ作品『アンドロメロス』で主人公のアンドロ超戦士・メロスを演じた経験を持つ小泉豊(こいずみ ゆたか)さん。当時と変わらぬアンドロビームのポーズをさり気なく決めての入場だ。


大野剣友会OBで70年代仮面ライダー、80年代ウルトラマン、90年代ゴジラの造形作家(モンスターズ代表取締役)でもある若狭新一(わかさ しんいち)さんは、仮面ライダーの後を受けて「大野剣友会」が殺陣を担当した『宇宙鉄人キョーダイン』(1975年放送)に登場するダダ兵士(敵のロボット兵)のポーズを披露!


昭和ライダー怪人やトランポリンを使ったアクションを得意としていた上田弘司(うえだ ひろし)さんは、自身の運命の分岐点となった仮面ライダーアマゾンの構えを見せてくれた。


腰痛の悪化で出演を断念した新堀和男(にいぼり かずお)さんに代わって、急遽出演することになった中本恒夫(なかもと つねお)さん。仮面ライダーストロンガーのポーズをダイナミックに決めて見せた。


『仮面ライダー』の放送が始まってすぐに入会した“大野剣友会の名優”こと、河原崎洋央(かわらざき ひろお)さん。歴代の仮面ライダーシリーズで敵の怪人を演じ、『仮面ライダーストロンガー』(1975年放送)ではストロンガーの宿敵、ジェネラル・シャドウを好演! 『宇宙鉄人キョーダイン』では車やミサイルに変形する兄弟ロボットの弟・グランゼルのスーツアクティングを担当、『仮面ライダースーパー1』(1980年放送)では鬼火指令を演じた河原崎さんは、仮面ライダー1号の決めポーズを披露してくれた。


昭和仮面ライダーのスーツアクティングを務めた中屋敷哲也(なかやしき てつや ※当時は中屋敷鉄也)さん。「大野剣友会」の殺陣が完成されたといわれる時期に作られた『超人バロム・1』(1972年放送)の番組後期でバロム1を演じ、『宇宙鉄人キョーダイン』では、ミサイルに変形するロボット兄弟の兄、スカイゼルも担当。中屋敷さんの代名詞といえば仮面ライダーV3だが、今回は自身が演じた最後のライダー、仮面ライダースーパー1の赤心少林拳のポーズを披露してくれた。


レジェンドたちの登場で会場がヒートアップする中、最後に登壇したのは師匠(大野幸太郎さん)の後を継いだ「大野剣友会」の二代目代表、岡田勝(おかだ まさる)さん。『仮面ライダー』第1話で蜘蛛男を演じ、その後はシリーズの殺陣を担当した。名乗りポーズの代わりに笑顔でVサインを出す岡田さん。ファンの目には、仮面ライダー2号を意味しているようにも思えた。


ステージにズラリ揃った剣友会のメンバーたち。昭和100年、そして設立60周年という節目を迎えた「大野剣友会」の猛者たちから語られる武勇伝。かつて子どもたちが憧れた仮面ライダーの変身ポーズ誕生秘話、CGがまだなかった時代に行われていた“命がけ”の昭和特撮アクションについての貴重な話がレジェンドたちの口から続々と飛び出していく……。


仮面の上からでもわかる芝居で“変身後の仮面ライダー”たちを演じた名優たち

仮面ライダーは、その名の通り仮面を被っているので表情が作れない。そのために、動きや仕草だけで感情を表現しなければならない大変なお仕事。何度も主役ライダーのアクションを担当した中屋敷さんも当初は自分の顔が出ない仕事に対して葛藤(役者志望だったため)を抱えていたという。


中屋敷:(仮面を装着するのが)嫌だったねぇ……。役者になるために剣友会に入ったのに、顔を隠して演るなんて、「何で?」って。(今は注目される仕事のひとつになっているけど)俺たちの時代は正直、顔を隠してなんて演りたくなかったから……。(命がけのアクションも)現場で「やれ!」と言われたらやるしかない。


1973年に放送された『仮面ライダーV3』第4話で、中屋敷さんは“命綱なし”で“高さ50メートルを超える”煙突の上に立って芝居をしている。まさに命がけのアクションだ。以前、その撮影当日のエピソードをご本人から聞いたことがあるのだが、ロケバスの中で、朝食用として配られる菓子パンがいつもより多くもらえた(高橋のカシラが手渡してくれたと記憶している)ので、「え!? これ全部食べていいの!?」と喜んでいたら、その後に控えていたのが伝説の煙突の上でのシーンだったという。いつもよりハードな仕事になりそうなので、高橋のカシラが中屋敷さんに気を遣ってくれたのかもしれないのだが、残念ながら今となっては確認のしようがない。


高橋のカシラは、若くして「大野剣友会」に入会、大野会長の片腕として活躍されていた殺陣師・高橋一俊(たかはし かずとし)さんの敬称。『変身忍者 嵐』(1972年放送)『仮面ライダーV3』『イナズマン』『仮面ライダーX』『仮面ライダーアマゾン』『仮面ライダーストロンガー』『秘密戦隊ゴレンジャー』などの作品で殺陣を担当。仕事仲間からは「いっしゅんさん」とも呼ばれていた人だ。※1991年11月11日に他界(享年48歳)


河原崎:「やれっ!」て言われれば、嫌とは言えない。特に高橋のカシラの場合、俺が「やれない!」なんてちょっと考えただけで、「それなら衣装を脱げ!」って言われるから。


Michi:それって、カシラ自ら仮面と衣装を着てアクションするという意味ですか?


河原崎:そうそう(笑)。



過酷なのはヒーローだけじゃない。広大な海をバックに闘ったり、時には10メートルの高所から落ちることもある。崖の上や足場の悪い水辺などで繰り返される激しいアクション! 「よくあんな場所で動けるものだ」と視聴者が驚愕するような危険な場所での撮影も「大野剣友会」のメンバーは遣って退けた。これこそまさに超人的スタントだ。


河原崎:何回も水の中に落ちたくないからさ、怪人のスーツを着て水の中に落ちると、入った瞬間に水を大抵飲むんだよね。ウレタン製だから水を含むことでスーツが重くなる。2度目(撮り直し)は大変だから、そういう時は「(撮影を)一回にしてください!」って監督にお願いしていた。


『仮面ライダー』第93話と第94 話は、ダブルライダー(仮面ライダー新1号と新2号)対6人のショッカーライダー(にせライダー)の乱戦が見どころ。崖っぷちでの大立ち回りもあった。そのショッカーライダーの1人を演じたのが中本恒夫さんだ。


中本:ぶっつけ本番! 危険な場所だから一発で(撮影の)OKを出したいんですよ。20秒くらいのシーンをワンカットで撮影するという誤魔化しようのないシーンで(視界の狭い仮面を被った衣装を着て)殴り合って、そして、高い所から落っこちる。でも、緊張感の方が増していたので怖くなんかなかったです。


1973年に放送された『イナズマン』、その続編である『イナズマンF』(1974年放送)でも「大野剣友会」が殺陣を担当した。超能力(“蝶”がデザインのモチーフとなっている)で闘うイナズマンは、主人公の青年が一度サナギマン(デザインのモチーフは“蛹”)の姿になって一定のエネルギーを溜めてからイナズマンに変転(変身)する。そのサナギマンも演じていた中本さん。中村文弥さんが動きのイメージの基礎を作ったというサナギマンをどんな風に演じたのかというMichiさんの質問に中本さんが応える。


中本:いやぁ、困るなぁ……だって、サナギだもの。やりようがない。主役のイナズマンよりも派手になっちゃいけないからねぇ……(苦笑)。


仕事場が稽古場!!

中屋敷さんとは兄弟のような関係だという岡田勝さん。稽古をつけてくれた師匠の後を継いで2代目代表となった岡田さんを中心に、「大野剣友会」で切磋琢磨してきた仲間たちとの昔話に花が咲く。


岡田:無我夢中でやっていた。


中本:夜、撮影が終わって大野先生の自宅の2階で立ち回りの稽古をずっとやるんですよ。2時間くらい。それも毎日。「(稽古場に)行きたくないなぁ……」って思う時もありました。


中屋敷:俺たちは「仕事場が稽古場だ!」って思ってたから。稽古場でしていたのは基礎的なことだけ。(高所から)落ちたりするのは、稽古する場所がないからすべて現場で身につけた。だから、現場に行って「ここから落ちろ!」って言われたら、それがもう生まれて初めてやるようなもの。


Michi:名言が出ましたね。仕事場が稽古場!!(驚)


中屋敷:だからさ、ここから飛び降りて、どうやったら怪我をしないで降りられるかっていう技術が(俺たちには)ないわけよ。そういう稽古をしてないんだから。上ちゃん(上田弘司さん)は体操の経験があるから、上手く着地する方法やタイミングが分かるだろうけど、それが(俺には)ないわけ。(会場に居る)みなさんをアクションの現場に連れて行って、「今日から君たちは剣友会のメンバーね!」「明日仕事ね!」って言われた翌日に「ここから飛び降りろ~!」って言われるのと同じことだったんだよ。俺たちの若い頃はね(笑顔)。


この中屋敷さんの言葉に会場がどよめく……。


中屋敷:それを何回か経験していくうちに知恵もつくわけで…(中本さんの顔を見ながら)そんな感じだよな?


中本:(中屋敷さんの顔緒を見て)そうですね、気合ですよ!


当時の子どもたちを熱狂させた仮面ライダーの変身ポーズ誕生秘話!

Michi:変身ポーズは岡田さんのアイデアが基になったんですよね?


岡田:高橋のカシラから「岡田、変身ポーズあるんだってよ」って言われて、『柔道一直線』(1967年~1971年放送 桜木健一さん主演のテレビドラマ)で(主人公・一条直也が)使ったポーズが頭に浮かんだので、いくつかカシラに見せた。そうしたら「考えてみる」って。そういったやり取りがあった後、あの佐々木(剛)くんの変身ポーズをカシラが完成させた。だから考案者はカシラということでいいの。俺なんかどうでもいい(笑)。


中屋敷:ストロンガーまでは高橋のカシラが作ったポーズと同じようにやればかっこいいんだと思って(真似をするように)やっていた。(アクションや名乗りの)ポーズに関する自分の考え方を採り入れてみたのはスカイライダーとスーパー1くらいかな。


『秘戦隊密ゴレンジャー』(1975年~1977年放送)で5色のヒーローが揃い踏みする「5人揃ってゴレンジャー!」の名乗りポーズも高橋一俊さんのアイデア。歌舞伎の「白波五人男」がヒントになったそうだ。こういった部分からも「大野剣友会」のアクションの根底が時代劇や歌舞伎にあるということがわかる。


続々と語られる剣友会のヒストリー!

若狭新一さんは、高校時代に研修生として入門。『仮面ライダーストロンガー』や『秘密戦隊ゴレンジャー』などのステージショーで戦闘員役を務めた。キャラクターを演じるだけでなく、スーツの補修や武器の制作等も手がけるようになり、高校卒業後、造形の道へと進んだのだという。『アンドロメロス』のキャラクタースーツ造形にも携わっており、1971年に『仮面ライダー』の制作のために建てられ、『仮面ライダーストロンガー』までの作品を制作していた東映生田スタジオ。それから3年後に作られたシリーズ第6弾『仮面ライダー(スカイライダー)』、第7弾『仮面ライダースーパー1』の撮影を行っていた東映大泉撮影所、両方の現場での仕事を経験した若狭さんにMichiさんが訊く。


Michi:生田スタジオはどうでしたか?


若狭:純度が高い(個性が強い)人たちが集まっていたね。


さらに、特撮の撮影現場での裏話が続く…….。


小泉豊さんは、中学校の卒業式の翌日に見た「後楽園ゆうえんち野外劇場スタッフ募集」の新聞の折り込みがきっかけで「大野剣友会」に入会。野外劇用のスタッフとして働き、円谷プロ作品『アンドロメロス』にも出演。主演のアンドロ超戦士・メロスのスーツアクティングを担当し、アンドロウルフ役の上田弘司さん、アンドロマルス役の城谷光俊さんと共演。宇宙空間をイメージした特撮ステージで行った“大野剣友会流”の立ち回りで視聴者を魅了した。


小泉:宇宙にしてはちゃちな……いやいや豪華な宇宙空間だったけど、巨大ヒーローとか宇宙での闘いとか、そういうことはあんまり深くは考えていなかったなぁ。


上田弘司さんは、日本体育大学在学中にアルバイトで後楽園ゆうえんちの野外劇場で仕事をするようになり、「仮面ライダーV3ショー」のトランポリンスタント(トランポリンでジャンプするシーン以外は中屋敷さんがV3を熱演!)を受け持つ。「仮面ライダーアマゾンショー」ではスーツアクターとして主演も務めた。1975年に大学を卒業して「大野剣友会」の正式なメンバーに、その後も岡田勝氏とともに殺陣師として活躍した。


上田:「仮面ライダーアマゾンショー」の時に、大野先生から「上田、シン(主役)やるか?」って言われて、俺は教員にならなきゃいけなかったんだけど、でも(この仕事が)好きだからこっちへ流れちゃった。当時の「大野剣友会」はとにかく怖い人ばかり揃っていた。バイトの時はちやほやされていたけど、岡田さんたちは俺がバイトから正会員になったとたんに厳しくなった(笑)。


中屋敷:岡田さん“たち”じゃなくて、岡田さん(だけ)でいいんじゃないの?(笑)


岡田:マイク切った方がいいんじゃないの?(笑)


上田:怖い人ばかりだったけど、中村文弥さんだけはすごく紳士的だったなぁ……2枚目だったし。


中村文弥(なかむら ぶんや)さんは、剣技に関しては抜群の腕前で、「大野剣友会」がアクションを担当した『変身忍者 嵐』でもその華麗な剣さばきを見せている。スマートでかっこいい立ち姿は、イナズマンやアオレンジャーのキャラクター作りにも貢献。演技のできる殺陣集団「大野剣友会」の基礎を築いた人とも言われていて、『仮面ライダー』の撮影には第一話から参加、戦闘員や怪人役だけでなく、第14話以降は仮面ライダー2号のスーツアクティングも担当した。後番組の『仮面ライダーV3』では敵組織「デストロン」最後の大幹部であるヨロイ元帥も演じている。※2001年1月17日に他界(享年55歳)。


Michi:怖い人ばかりなら(剣友会に)入らなければいいのに……(笑)


上田:中屋敷さんが演じるV3を見たら「この人に絡みたい(一緒に芝居したい)」って思ったから。今も僕の中では「仮面ライダーは中屋敷さんしかいない!」といった強い想いがある、だから、(後楽園のショーや番組の撮影時に)トランポリンを跳ぶ時でも中屋敷さんより小さく見えると嫌だからとにかく大きく跳んでいた。


ファンの熱意によって誕生した記念すべき10号ライダーを演じた男と歴代のレッド戦士の魂を受け継いだ男!

城谷光俊さんは、「大野剣友会」が殺陣を担当した仮面ライダーシリーズ最後のスペシャル番組『10号誕生!仮面ライダー全員集合!!』で仮面ライダーZX(ゼクロス)を演じた。それまで「大野剣友会」の絶対的エースだった“ミスター・仮面ライダー”こと中屋敷哲也さんに次いで主人公ライダーを演じることになった城谷さん。同作品で中屋敷さんは仮面ライダースーパー1のスーツアクティングを担当、三影英介(ZXの敵で怪人タイガーロイドに変身する)役として素面での出演も果たしている。それだけに、大先輩たちとの共演は城谷さんにとって並々ならぬプレッシャーがあったという。


城谷:もう絶対に嫌だと思った。(スーパー1のスーツを着た)中屋敷さんが横に並ぶと比較されるじゃないですか。(自分が)ダメなのが分かっているので嫌だなぁ…って。それから何年か経って(作品が)フィーチャーされてからは、(自分は)すごい仕事をしたんだなぁ…って思うようになりました。


中屋敷:でもZXってかっこいいね! 俺も現場に居たから見ていたけど、その仕事ぶりには脱帽したよ。(俺は)トンボ(回り)とかが苦手なんだけど、城谷は身軽で見事にそれを遣って退けるから「これがヒーローだよな!」って思って見ていた。


この言葉に会場から拍手が沸き、感慨深げな表情を見せる城谷さん。


そして、「大野剣友会」を語る上で重要な人物がもう一人。新堀和男(にいぼり かずお)さんだ。腰痛が悪化し、参加を断念せざるを得なかった新堀さん(会場には体調の回復を祈るファンからのメッセージが書き込めるブースが用意されていた)。「大野剣友会」時代には、『仮面ライダーX』(1974年放送)の番組後期でXライダー、後番組の『仮面ライダーアマゾン』(1974年放送)では、野性味あふれるアマゾンライダーのスーツアクティングなどを担当。昭和時代のスーパー戦隊シリーズのレッド戦士も多数演じた。その新堀さんが代表を務める芸能事務所 レッド・エンタテインメント・デリヴァーに「大野剣友会」から移籍。スーパー戦隊シリーズの敵兵役などを経て、『百獣戦隊ガオレンジャー』(2001年放送)のガオレッドをはじめ『獣拳戦隊ゲキレンジャー』(2007年放送)のゲキレッド、『海賊戦隊ゴーカイジャー』(2011年放送)のゴーカイレッドといった平成の歴代レッド戦士のスーツアクティングを担当したのが福沢博文(ふくざわ ひろふみ)さんだ。


福沢:コーチ(指導)してくれたのが上田さんと城谷さん。「大野剣友会」には約2年間在籍して、アクションの基礎だけでなく、「どうやったら表現として正しいのか?」ということを学ばせてもらいました。


上田:福沢が居た時のメンバーはみんな優秀だったね。まぁ、実際に指導していたのは、ほとんど城谷だったけど。


スーツアクターだけでなく、アクション監督も務めた福沢さんは、自身と「大野剣友会」との繋がりやスーパー戦隊シリーズの撮影に参加するようになった経緯についても語ってくれた。


最大の功労者は大野剣友会!

昭和・平成・令和と続いている仮面ライダーシリーズ。そのライダーアクションの先駆者として、常に新しいキャラクターの動きを追求してきた「大野剣友会」。仮面ライダー1号~10号(ZX)まで、一定のレベルでキャラクターアクションを継続するということは、決して簡単なことではない。


これは余談(私事で恐縮)だが、筆者は今から20年程前に某雑誌で『仮面ライダーV3』の特集記事を組んだことがあり、その時に昭和の仮面ライダーシリーズを制作した元東映プロデューサーの平山亨さんに取材でお会いする機会(場所は、西武線・狭山市駅前にある喫茶店)があった。その時に聞いたのが「(仮面ライダーシリーズの)最大の功労者は大野剣友会だよ!」という言葉だった。


中屋敷哲也さんと河原崎洋夫さんとは、お2人が出演されたファン感謝イベント(宇宙鉄人キョーダインの関係者同窓会)で私が司会進行役をさせていただいた時に、上田弘司さんとはテレビドラマ『少女コマンドーIZUMI』(1987年放送)や『花のあすか組!』(1988年放送)の撮影現場でお会いしたことがあるのだが、みなさん共通して印象に残っているのが「俺たちはこの仮面や衣装でメシを食わしてもらっているのだから、主役の顔である仮面(キャラクターのマスク)は絶対に地面には置かない」という話。この「地面に置かない」は、「大野剣友会」が“仮面もの”の仕事を行う際の伝統的な心得であり、中村文弥さん発祥によるものだという。


福沢さんと初めてお会いしたのは、埼玉県にある百貨店の屋上で開催された『機動刑事ジバン』ショーの楽屋。殺陣は上田さん、福沢さんは敵キャラクターのマスク兵として出演されていたのだが、その時に見かけたジバンの面も高い位置に置かれていたことを憶えている。


『仮面ライダーV3』の撮影で、中屋敷さんは主演の宮内洋さん(言わずと知れたライダーV3に変身する青年・風見志郎役)のボディアクションだけでなく、アフレコの際の宮内さんのしゃべりの動きを合わせることまで一致させて芝居をしていたというから驚きだ。


縁の下の力持ちとして活躍してきた「大野剣友会」のメンバーたち。その発想力と天才的なセンス、役に対する真摯な姿勢は、上記のエピソードだけでもお分かりいただけるだろう。“芝居心をもった殺陣集団のアクション”があったからこそ『仮面ライダー』シリーズは大ヒットしたのだ。


昭和の仮面ライダーの戦いは「大野剣友会」の戦歴!

時代は昭和から平成、令和へと移り変わり、半世紀に渡って世界的な評価を集めるまでに至った「大野剣友会」のアクション。その基礎的なフォーマットを希有な才能がいかに決定づけていったか……聞き手のMichiさんによる熱いトークでよく理解することができた。Michiさんは、イベントに先駆けて大野幸太郎会長、高橋一俊さん、中村文弥さんのお墓参りにも行ったとのこと。客席には大野幸太郎さん、中村文弥さん、平山亨さんのご親族も来られていた。


約2時間に渡って行われたトークショー、昭和の仮面ライダーシリーズの歴史を作ったレジェンドたちと過ごした“奇跡のトークショー”は、は拍手喝采で幕を閉じた。


Michi:文弥さん! 聞こえますか!? ただの殺陣軍団じゃなくて“演技のできる”殺陣軍団を作ってくれて本当に感謝してます。ありがとうございました!!


最後に「大野剣友会」のメンバーが10人の仮面ライダーが勢揃いしたというイメージでアクションの形を作り、Michiさんの号令で会場のお客さんも一緒にライダージャンプ! 何だか自分も「大野剣友会」のメンバーになれたような気がした瞬間だった。


イベント終了後には『仮面ライダー SPIRITS』(講談社刊)でおなじみの漫画家・村枝賢一先生直筆によるサイン色紙やポスター等のオークション販売、「大野剣友会」のメンバーとの撮影会も行われた。会場案内や物販を担当した運営メンバーの親切な対応(ファンに寄り添った)にも頭が下がる。彼らにも「大野剣友会」の精神が受け継がれていることを深く感じた。


DATA

昭和特撮アクション 大野剣友会祭り

  • 日時:2025年1月25日(土) 18:00開場/19:00開演
  • 場所:Loft 9 Shibuya
  • 出演者:岡田勝、中屋敷哲也、河原崎洋央、中本恒夫、上田弘司、若狭新一、小泉豊、城谷光俊、福沢博文
  • MC:Michi Yamato


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