トランプ政権とマスク氏チーム、科学研究費や消費者保護当局を標的に 米連邦政府の効率化のためと
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ドナルド・トランプ米政権は、連邦政府のコスト削減策の一環として、新たに国立衛生研究所（NIH）と消費者金融保護局（CFPB）を標的にしている。
政府は7日、生物医学研究に対するNIH助成金の間接費を数十億ドル削減すると発表した。CFPBについても、管理権を掌握し、閉鎖の可能性もほのめかしている。
また、富豪イーロン・マスク氏が率いる「政府効率化局（DOGE）」のスタッフに、CFPBのコンピューターシステムへのアクセスを許可した。
マスク氏は7日にソーシャルメディア「X」で、墓石の絵文字と共に「CFPB RIP（安らかに）」と投稿した。CFPBは2007～2008年の金融危機後に消費者保護のために設立された機関。
NIHをめぐる動きについては、科学研究の進歩を遅らせるのではないとの懸念が多くの科学者から出ている。
またCFPB庁舎の外では8日、約100人の職員が抗議活動を行った。
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NIHは7日の声明で、建物や公共料金、設備など、研究に関連する「間接費」の助成金を削減すると述べた。
削減の理由については、「アメリカは世界で最高の医療研究を持つべきだ」、「したがって、できるだけ多くの資金を管理費ではなく、直接的な科学研究費に充てることが重要だ」と説明している。
NIHはまた、助成金からまかなう間接研究費の上限を、現在の平均30％から15％に半減すると発表した。
この削減は10日に発効する。NIHは、年間40億ドル（約6100億円）の節約になると見積もっている。
一部の科学者からは、不可欠な医療研究に今回の削減が打撃を与えるとの懸念が出ている。
アメリカ医科大学協会（AAMC）は、政府がこれまで間接施設および管理費を支援してきたことが「医療研究を可能にしている」と述べた。
同協会は声明で、この動きは「国の研究能力を低下させ、科学の進歩を遅らせ、全国の患者やその家族、コミュニティーに新しい治療法、診断法、予防策を提供するのを妨げる」と述べた。
米スタンフォード大学の著名な放射線腫瘍学者、アヌーシャ・カルバシ氏は、助成金が「私たちの研究室の照明や換気を維持し、生物学的危険から私たちを守り、大量のデータのインフラを維持し、研究者が科学に集中できるよう、スタッフを雇用するのに役立っている」として、「（民間から）高額の寄付金を得ている機関でさえ、（今回の政府命令は）壊滅的な打撃となる」と懸念を示した。
アメリカ教育評議会（ACE）は声明で、大学は間接費の助成金のおかげで「最先端の研究室」を持ち、外国の競争相手に先んじるために必要な先進技術を維持できていると指摘した。
ACEのテッド・ミッチェル会長は米紙ワシントン・ポストに対し、政府の発表を受けて一部の研究室がすでに週末にかけて、閉鎖し始めていると話した。
そのうえで、ACEは10日にも、この削減について政府を提訴する予定だとした。
NIHの間接費に上限を設定する提案は、保守派シンクタンク「ヘリテージ財団」が作成した政策提言「プロジェクト2025」の「ウィッシュリスト」に含まれていた。
この提案には、「議会は、大学に支払う間接費率について、大学が研究活動のために民間組織から受け入れる資金の下限率を超えないよう、上限を設定すべきだ」と記されている。
「CFPBを体系的に破壊」と民主党議員
CFPBについても、政権とDOGEによる介入が始まっている。
トランプ氏は先月、ジョー・バイデン前大統領が任命したCFPBのロヒット・チョプラ局長を解任し、スコット・ベッセント財務長官を局長に任命した。
しかし7日には再び変更を発表。新たに行政管理予算局（OMB）局長に承認されたラッセル・ヴォート氏に、CFPBの管理を委ねた。
BBCがアメリカで提携するCBSニュースによると、DOGEの職員がCFPBの職員名簿や財務記録が含まれている内部システムにアクセスしているという。
米紙ウォール・ストリート・ジャーナル（WSJ）も7日、DOGEの職員がCFPBのコンピューターシステムに「読み取り専用」でアクセスしていると報じた。
CFPBは、資産が100億ドル（約1兆5000億円）を超える銀行や金融機関を監督している。2007～2008年にアメリカのサブプライム住宅ローン市場の崩壊によって起こった金融危機の混乱後、改革の一環として2011年に設立された。約1750人の職員を抱え、年間予算は7億5800万ドル。
CFPBは、消費者から金融商品に関する苦情を受け付け、消費者金融規則を制定する権限を持つ。それに伴い、膨大な量の消費者データを保持している。
共和党は長年、CFPBが過剰な規制を行い、銀行を不当に制限し、罰金や和解金を左翼団体の資金に使用していると非難してきた。
また、今回CFPBの管理を任されたOMBのヴォート局長は、「プロジェクト2025」の著者の一人でもある。
「プロジェクト2025」は、CFPBを廃止すべきだと提言していた。
米連邦下院金融サービス委員会の民主党トップ、マキシン・ウォーターズ議員は、DOGEが「CFPBを体系的に破壊している」と主張する声明を発表した。
「マスク氏によるCFPBの乗っ取りは、五つ星の危機であり、数百万人のアメリカ人のデータ保護に対する恐ろしい侵害だ。マスク氏は現状、悪質な業者にだまされた後、絶望の中でCFPBに助けを求めた人々の個人情報を閲覧できる」と、ウォーターズ氏は述べた。
ウォーターズ氏によると、このデータには銀行明細書、クレジットカード情報、社会保障番号、医療情報が含まれる可能性がある。
CFPBの職員を代表する全国財務職員組合（NTEU）は声明で、DOGEの活動は「危険な侵入になり得るもの」だと述べた。組合は、消費者と金融機関の個人データを保護するためにあらゆる手段を講じるとしている。
不透明なDOGEの運営
DOGEは議会の承認で設置された連邦政府の省庁ではなく、トランプ氏が大統領令でホワイトハウス内に設置したチーム。連邦機関の効率化を担っている。
マスク氏とDOGEはすでに、アメリカの主要な対外援助機関の米国際開発庁（USAID）の廃止を主導している。他のいくつかの連邦政府機関でも、DOGEの職員が目撃されている。
DOGEのスタッフの人数や予算、運営構造は明らかになっていない。マスク氏とホワイトハウスはDOGEの運営についてほとんど詳細を提供しておらず、DOGEスタッフの名前などは、主に政府職員からのリークによって明らかになっている。
マスク氏はNIHの間接費削減に絡み、一部の大学が30％を超える支出をしていると主張している。
7日にはXに、「数十億ドルの寄付を受けている大学が、研究助成金の60％を『間接費』として吸い上げているなんて信じられるか？ なんてぼったくりだ！」と投稿した。
また、「CFPB RIP」とも書き込んだ後、1時間にわたり、政府全体に広がる犯罪行為、詐欺、虐待の疑惑を繰り返し投稿し、CFPBを閉鎖する意向を示した。
