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禪院真依っていう最高の女を嫁にしたから俺は幸せ/Novel by 夜

禪院真依っていう最高の女を嫁にしたから俺は幸せ

23,056 character(s)46 mins

男主×禪院真依。
さしす組同期の男主による、真依ちゃん溺愛記録。

本誌がショック過ぎたので、真依ちゃんを幸せにしたいと思って書き散らかしました。とても楽しかったです。創作中のお酒は最高のスパイス。
「男主×真依ちゃん」もっと増えろ~、幸せな真依ちゃんが見たい~!!

※捏造、ご都合盛りだくさんなので、それでも大丈夫な方のみお読みください。
読了後の誹謗中傷はお止めください。



【本編読了後推奨】

翌年、八月。
呪術高専東京校にて。野薔薇は大好きな先輩の真希に、真希の妹を紹介されていた。

「てなわけで、双子の妹の真依。結婚してるから苗字は違うけどな」
「五十鈴 真依よ。よろしく」
「……は?」
「ちなみに今、妊娠五か月。身重だから気にかけてやってくれると助かる」
「ごめんなさいね、手間かけて」
「いいんだよ、可愛い甥っ子か姪っ子が生まれんだから」
「あの人に似た男の子だといいんだけど……」
「性別聞いてねぇの?」
「うん。生まれるまで楽しみにしようって決めたの」
「そうか。私は真依に似た可愛い女の子がいいけどな」
「真希も、あの人と同じこと言うのね」

「え、……あの、『五十鈴』ってもしかして五十鈴先生の?」
「そう、由貴の嫁。もともと婚約はしてて、今年の一月に真依が十六になったから入籍。んで、すぐにおめでた」
「え、でも真依さんもまだ学生なのに……」
「あ、誤解しないでね。あの人はちゃんと大事にしてくれてるの」
「大事にしすぎて手を出さないせいで真依が怒って、真依が由貴を襲った結果がコレな」
「マジか」

婚前交渉しないと言った由貴は、宣言通りに籍を入れるまでしなかった。
だが、初夜に初めて致してからまた、由貴は真依にあまり触れなくなり、それにキレた真依が由貴を押し倒して、制止を振り切って襲った結果、妊娠した。由貴が避妊をしなかったわけではない。ただ、真依のちょっとした悪戯が成功して当たったのだった。

まだ学生の真依を妊娠させたことに、顔を真っ青にして真依に土下座した由貴。それに対して真依は、長年の恋を実らせてようやく手に入れた男との間に子供ができて、とても幸せだった。実家である禪院家からの「相伝持ちの男児を」という重苦しい期待と圧力はあるが。

「妊娠が分かった後に夫婦喧嘩してたのも今となっちゃ笑い話だけどな」
「え、なんで?喜んでもらえなかったとか?」
「いや、子供ができたことは泣くほど喜んでた。そん時の動画あるぜ、真依が引くほど泣いてたやつ」
「それじゃあなんで……」
「ほら、あの人私に対して過保護だから。十代の出産は母体の負担が大きい上に、初産は何かと心配が多いのよ。それで、私の身体のことを心配して今回は見送ろうって」
「禪院家(うち)じゃ、絶対ありえない話だよな」
「めっちゃいい旦那さんですね!……あれ、でも今真依さんが妊娠してるってことは」
「うん。由貴さんの心配は一蹴して産むことにしたの」
「由貴は真依に甘いからな。あいつが真依のお願いに首を縦に振らなかったこと一回もないぞ」

妊娠初期、つわりがひどかった真依を甲斐甲斐しく世話をしていたのも由貴だ。真依の妊娠を機に、あれだけヘビースモーカーだったのに煙草もすっぱり止めた。
夜蛾に頼み込んで、五条と夏油に頭を下げて産休とまではいかずとも休暇を取り、どうしても任務に行かなくてはいけない時は硝子と真希、もしくは菜々子と美々子に真依を預けて。彼女たちの都合がつかない時は由貴の実家に。

禪院家の女性の中で、こんなにも夫に大事されているのは真依くらいなものだろう。

妊婦の真依に対する由貴の対応に、呪術界の女性陣からの株は爆上がりした。だが、そのせいで真依はちょっと焼きもちを妬いた。
けれど、そのいい男は私のなんだぞという優越感もあった。

真依の話を聞いて驚いている野薔薇の顔を見て、くすくすと静かに笑いをこぼす真依。その胸元ではシルバーのイルカがきらきらと輝いている。随分と年季の入ったネックレスだ。野薔薇はふと、そのイルカのモチーフに見覚えがあることに気づく。

「そのネックレスのイルカって、もしかして」
「真希のペンケースについてるストラップとお揃いなの。真希のやつはもともとブレスレットだったんだけど」
「ひっかけてチェーンが壊れたからリメイクした」
「私と真希がまだ小さかった頃に、由貴さんが水族館に連れて行ってくれて買ってくれたの」
「お前すっげぇ欲しそうにしてたもんな、それ」
「だって、イルカの目の色が由貴さんの目の色と同じだったから……」
「はいはい、ごちそうさま」

幸せそうに笑う真依。
そんな真依を見て真希は、あの時、真依の見合い相手が由貴だったことに感謝した。真依のためを思って、……いや、保身のためにそうせざるを得なかったのかもしれないが。それでも、真依を大事にして幸せにしてくれたことに違いはない。
高専に入る前に放してしまった手を、今度こそ放さずに守り抜こう。真依も、真依の子供も。

それが、姉として真依にしてやれる精一杯だ。

ついでに、真依の話を聞いて何やら期待をしている野薔薇に、由貴みたいな男は呪術界ではかなり稀だという現実を教えておくのだった。

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ある日、突然実家から電話がかかって来て『見合いに行ってくれ(断ったらウチが終わる)』と言われた。


あまりに唐突すぎて読み込みが上手くいかず、脳内で「Now Loading」のロゴが躍る。
そんな俺にお構いなしに続く話を聞くに、相手はどうやら泣く子も黙るかの有名な『禪院家』。
なるほど、それは確かに断ったら終わるな、と、冷静に考えて二つ返事で行くことに決めた。日程は今週末と決まっているらしい。……いやん、性急~♡
そんなに俺のことが欲しいのか。やれやれ、仕方ないな。

これでも一応俺は跡継ぎの一人息子なので、向こうの娘さんがこちらに嫁入りしてくる。とはいえ、俺の家の方が権力的には下っ端もいいところ。だから、こちらが予定を合わせなければいけない。

はてさて、今週の俺の任務は……おぉっと、なかなか詰まっている。そんな時は、


「助けて、ごじょえも~ん」
「うわ、きっも。何?」
「見合いに行かなきゃいけないから任務代わって♡」
「は?見合い?」
「うん。禪院家が相手だからさぁ、断ったら俺んち終わるんだよね。色んな意味で」
「何それおもし、……カワイソー(笑)」
「笑ってんなよ特級クズ」
「代わってやんねぇぞ」
「……助けて、すぐえも~ん」
「尻軽かよ、ウケる」
「しょーこさん辛辣っすね!今日もキレッキレの毒舌かましていくぅ」


白髪の何様俺様悟様に見捨てられたので、塩顔前髪菩薩の傑観音にシフトチェンジすれば、白衣のヤニカス美女に罵られた。
なかなかイカれた同期だろう?これでも自慢の親友なんだ、……俺の中では。やめろ、親友だと思ってるは俺だけとか言うな。事実だったら泣くぞ。

とりあえず、夏油と五条がババ抜きで俺の任務をどちらが肩代わりするか決めるらしい。ポケットから取り出した煙草を吸いつつそれを眺める。


「やめた方がいいんじゃないの?」
「んあ、何を?」
「煙草。見合いすんだろ?」
「あぁ~、……やっぱ喫煙者って印象悪い?俺、五条ほどじゃないけどベビーフェイスで可愛い自信あるんだけど」
「いや、高校生が煙草は駄目だろ」
「うわ、それだけはしょーこさんに言われたくねぇ~」

盛大なブーメラン乙。だがヤニカス同士、今更禁煙するとか控えめに言っても無理なのできつく言わないあたりしょーこさん優しい。さすが白衣の天使。

そんな話をしているうちにババ抜きの勝敗が決まり、負けた五条が俺の任務を代わってくれるらしい。あざーす。こんどヤン〇ンつけぼう奢ってやんよ。
ちょうど話がまとまったタイミングでやってきた、今日も今日とてヤクザルックな夜蛾さんの授業を聞き流して。お見合いの時に着るための着物をしまった場所を思い出していた。


見合いのおかげで任務さぼれてラッキー。





そして迎えた当日。

京都の一角に建つ、荘厳な造りの日本家屋の廊下を歩く。
品定めするような目と、見下した態度、微かに聞こえる陰口。ジメジメねちねち、……ここは湿原かな?

「失礼のないように」と、親からきつく言われているので大人しくしてあげるけど。
昨日の夜、今日のための着物を引っ張り出すべく実家に帰ったら突然の家族会議が開かれた。そして、開口一番に「お前に全部押し付けてすまない」と、当主である親父が俺に頭を下げてきた。危うく感動で俺は泣くところだったがどうにか思いとどまる。ろくに親孝行などしたことないというのに、本当にいい親だ。母さんも、「お見合いをすること自体は断れなかったけれど、本当に嫌だったら家のことなんか考えず婚約や結婚は断っていい。こんなことになるなんて、呪術師の素質を宿して産んでごめんね」と、心底申し訳ないという表情で俺に告げた。
どうしてこんな素敵な両親から、俺みたいなちゃらんぽらんが生まれたんだろうな。これが生命の神秘ってやつか。


大丈夫。親父と母さんは何も悪くない。ちゃんと分かってるよ。禪院相手に五十鈴は逆らえないことくらい。
悪いのは呪術界上層部のジジイどもと、我儘好き放題の禪院家だ。


それにしても本当に気分が悪いなぁと、それを隠すこともせずに顔に出しながら歩くこと数分。だだっ広い屋敷の奥隅にある一つの部屋の前に着いた。中に相手が居るらしい。さっきまで前を通っていた部屋とは明らかに違う、あまりにも質素で地味な造り。俺が弱小一族の出身ということで、相当舐められているらしい。
ぺろっぺろじゃん、ウケる。

去っていく女中の背中を見て、これから顔を合わせる禪院家の女を思い浮かべる。
プライドエベレストの高飛車だったらどうしよう、と、不安になったがここは天下の禪院家。未だ『男尊女卑』のまかり通る封建的一族。御三家随一の差別意識の高さを見せつけてくるような家だ。女の価値は胎だと堂々と宣うようなバカの集合体。
そんな家に、男相手に強気に出れる女が居るとは到底思えない。男に対しては全肯定botや赤べこよろしく首を縦に降る以外、許されないような教育はされているだろう。女は男の三歩後ろを歩けってやつ。わ~お、御三家こわぁい。
なんて偏見ストームを吹き荒らしているが、扉の向こうにどんな女が居ようともこちらに拒む権利はないのだ。


腹を括って扉を開ければ、そこにちょこんと座っていたのは一人の女の子。

多分、未就学児。五歳か六歳くらいだと思う。仕立てはいいが地味な着物を着ている。ちょっと癖のある黒いショートカットの髪がぴょこぴょこしていて、顔立ちは可愛いよりも綺麗系。不安そうな表情が庇護欲をそそられる。普通に可愛い子供。


「可愛いな」


思わず口をついて出たのはそんな言葉。え、だって可愛いんだもん。
でも、なんでこの子しか居ないんだろう。

「あ、あの、……」
「あぁ、不躾にすみません」
「いえ、あの、いすず ゆきさまですか?」
「あ、はい。申し遅れました。この度、禪院家のご息女とお見合をさせて頂きます。五十鈴いすず 由貴ゆきと申します」

消滅寸前の弱小一族『五十鈴』家の次期当主で一人息子。忘れ去られた五条の傍流で、かつての栄光は完全に枯れ果てた風前の灯火のような家が我が実家である。
今や、五十鈴家が五条の傍流であることを知っている人の方が少ないくらい。おかげで一般家庭と大差ない扱いだ。どこまでいっても術式主義なのはさすが呪術界といったところだろう。ミイラやマミーも驚きの腐り具合。

一応俺の方が格下なので、三つ指を付き深々と頭を下げて挨拶をすれば、慌てた少女にそれを止められた。

「あの、このたびは、ごそくろういただきありがとうございます。ぜんいん おうぎのむすめのぜんいん まいともうします」

今度は少女がそう言って深く頭を下げた。
認めたくはないが、どうやらこの子、真依ちゃんが俺のお見合い相手らしい。……あれ?『禪院 扇』と言えば、たしか現当主の弟ではなかったか?となるとこの子は当主の姪っ子というわけだ。……え、やば。
俺、生きて帰れっかな。


禪院家のことだ。五十鈴家の男相手だからと適当に血縁の遠い娘を宛がうだろうと思っていた。だから、さっさと断ってすぐに帰ろうと思っていたのに。

まさかの当主直系の血縁。しかも姪っ子ときた。
完全にこちらの退路を塞ぎ、頷かせに来ている。五十鈴家なんて取り込んだところで、禪院家にメリットなんかかけらもないのに。
ていうかマジでやべぇよこれ、どうやったら殺されずに断れるかな。

だいたい、真依ちゃんだって十も歳の離れた男など嫌だろう。しかも、何の後ろ盾もない弱小一族ならなおさら。

「あ、おちゃもださずにすみません」
「え、あぁいえ。お構いなく……って、え?」

緊張した面持ちの真依ちゃんが、机の上を見るなり弾かれたように立ち上がりお茶の準備をし始めた。

御当主様の姪っ子様が!自らお茶を!淹れるですって!?

驚き桃の木山椒の木。こりゃあ驚きだぜ。
え、だって禪院家だぞ?女中だの使用人だのがわんさかいる禪院家だぞ。しかも、そこの御当主直系の血筋の娘が、まだ小さい女の子が、自分から茶を淹れるんだもん。
え、何これ新手のドッキリ?俺の胃をキリキリさせて遊んでるの?え?どういうこと?


「あ、あの、俺がやりますんで!真依さんは座っててください!」
「え?でも、……」
「お願いします、俺のためを思うなら是非やらせてください!」


土下座も辞さない勢いで頼み込めば、その必死さが伝わり真依さんは恐る恐る避けてくれた。

「気が利かない男ですみません。お口に合えばいいのですが」

玉露かな?香りがすごくいい。高いお茶だよこれ、絶対美味しいやつ。うちだったら来客にしか出さないようなやつ。茶器だってちゃんとしたいいやつだろうから、庶民の俺は手が震えてしまう。ぴえん。
まぁ、御三家の財力事情なんか知らないんだけど。

お高いお茶で余計に緊張しながらも、どうやってお見合いを断るか必死に頭を巡らせる。……いや、待て。ここはいったん頷いておいて、『婚約』で留まればいいのだ。だって、相手は幼稚園児。結婚できる年齢に達するまであと十年もあるんだぞ。
将来、真依ちゃんに好きな人ができれば禪院家はそちらを優先するはず。だって、ヒエラルキーとしては弱小五十鈴家の俺よりも、禪院家当主直系に近い真依ちゃんの方が上だから。俺が「真依ちゃんと結婚したい」と縋ったところで、真依ちゃんが『婚約破棄』を決めてしまえば俺にそれを覆す術はない。

そうじゃん、そうすれば万事解決じゃん。

そこからは、びくびくしている真依ちゃんの緊張をほぐすようにお互いのことを話して過ごした。
真依ちゃんは双子で、お姉さんがいるらしいこと。もう少しで庭のアジサイが咲きそうなこと。裏庭に忍び込んでくる野良猫が可愛いこと。
拙くつっかえながらも話してくれるその様子が可愛くて、俺も歳の離れた妹が居たらこんな感じかなぁなんて想像したりして。


「それでは、今回のお見合いは前向きに検討させていただきますね」


まぁ、真依ちゃんならいざ知らず、俺に断る権利なんて存在しないんだけど。

随分と下にある頭をぽんぽんと撫でると、嬉しそうに笑う真依ちゃん。えぇ~、なにこれ可愛い~。


帰り際、当主様と真依ちゃんの父の禪院扇さんに挨拶をして、……断らせる気なんて微塵もなかったクセに『あれを宛がわれても怒らんとは……あまつさえ承諾するなぞ、さすが五十鈴の倅だ』なんて言われてイラっとしたり。とくさなんちゃっていう強い方の相伝術式持ちが居ないクセにいきがってんじゃねぇよクソが。って、言わなかった俺ちょーエライ。五条だったら堂々と言ってただろうし、夏油だったら遠回しに、かつ皮肉に皮肉を乗せて嫌味で焼き上げたような煽りをかましていただろう。俺の仏のような心に感謝してほしい。……やめろ、チキンって言うな。


あーあ、せっかく可愛い女の子の笑顔で癒されたのに台無しだよクソジジイどもめ。


俺が頷いたことで話はとんとん拍子に進み、俺は晴れて『禪院真依の婚約者』という称号を得た。レベルは上がっていないけれど御三家関係者からの目は変わった。……主に憐みとかそういう方面で。嬉しくもなんともない。
曰く、禪院扇の娘の双子は術式も、片方は呪力もない出来損ないらしい。
いやはやさすが御三家。術式の無い女児なんて体のいいサンドバッグだと言わんばかりに罵詈雑言の雨嵐。
大方、俺との見合いと婚約もそんな感じで貶され面白がられた挙句に押し付けられたのだろう。胸糞悪いことこの上ない。

そんな女を宛がわれて了承した俺も程度が知れているんだと!!ケッ、言ってろよ。
俺は怒ったかんな、許さないかんな、そのうちお前らにぎゃふんと言わせてやるかんな!!!

つーか断ったら断ったで、『禪院家の厚意を無駄にするなど格下の分際で~』って嫌がらせするのは目に見えているんだぞ。性悪の権化め。


ペドだのロリコンだのと言われたのはまぁ、否定はするが多少は仕方ないと思っている。だって真依ちゃんと俺、十歳も離れてるんだもん。幼稚園児と婚約する高校生って確かにヤバイよな。
俺がアラサーになって焦ってるときに、ようやく真依ちゃんは高校生になるのだから十歳ってかなりの歳の差だ。


いいもん、だってこの婚約はいずれ消えてなくなるの(予定)だ。
真依ちゃんだってこんな弱小一族のヤニカスクソ野郎よりも年が近くてカッコいい男を捕まえるだろうし、そうなったら引き留める術のない俺はお払い箱だもん。



いいんだ。俺は真依ちゃんが結婚相手を見つけるまでの、体のいい虫よけになるから。
美人さんなのに自己肯定感低めの真依ちゃんのことをパーフェクトガールにして、幸せにしてくれる相手と恋愛結婚できるようにお兄さん頑張るから。


だって、聞いてくれよ。いや、勝手に話すけどさ、あの子、めっちゃいい子で可愛いんだよ。会うたびに俺のガラスのハートがキュンキュンしてる。

一応婚約者なので、定期的に会いに禪院家に足を運んでいるのだが、俺の姿を見るなり嬉しそうに駆け寄ってきてくれて、丁寧に挨拶してくれて、俺の心配してくれて、ちょっとしたお土産でもすっごく喜んでくれて……感動で泣きそうだった。嘘、任務の後でメンタルへらへらだったからちょっと泣いた。

お姉さんを紹介してくれたんだけどさ、もぉ~~~~そん時の自慢げな顔!!控えめに言っても超可愛い。「お姉さんのこと大好きなんだね」って言ったらさ、「うん、大好き!」って。はぁ~~~~、守りたい、その笑顔。「尊い」って、真依ちゃんのことを指す言葉でしょ、絶対。
しかもそのお姉さんの真希ちゃんもこれまたいい子でさ、最初はたぶんロリコンを疑われて睨まれてたんだけど、何回か会ううちに信用してくれたのか「真依は、寂しがり屋で臆病だけど、その、……すっげぇ優しくていい子だから、大事にして欲しい」って。そっぽ向きながら言われて。いや、もう、「全身全霊をかけて大事にします」って答えたよね。そしてドン引きされたよね。
ていうか、あの二人、普段は使用人みたいにこき使われてたんだぜ、ありえなくね?そっこーで止めさせたんだけど。花嫁修業とかなんとか反論されたけど一蹴してやった。人手は足りてんだから子供が二人減ったところで何の支障もねぇだろ。あの子らが抜けたぐらいで立ち行かなくなるならその程度ってことだ、諦めろ。……ってことで、たまにあの魔窟から連れ出していろんな場所に連れてくんだけどさ、……え?最近外出が多いのはそのせいかって?そうだよ、おかげで可愛い真依ちゃんがたくさん見れて俺のメンタル超健康。今の俺の色相めっちゃ綺麗だと思うし、犯罪係数はきっと一桁だと思う。正直、七海と灰原と焼き肉屋の食い放題行くよりお腹も心も満たされる。
てか、あいつらこの前やべぇ任務入れられてたよな。たまたま近くの観光スポットに居たから、……あ、もちろん真依ちゃんとのお出かけな。だから、ちょっとだけ手助けしてやったんだけどさ。マジで上は何考えてんだろうな。あれ、完全に1級か、下手したら特級だったぜ?んで、そん時のお礼がしたいって言うから、今度真依ちゃんと出かける時はあいつらも連れて遊園地行くんだ。代金は全部七海と灰原持ちで。そんで、ついでに夏油も誘ってやろうと思う。だって、最近のアイツやばくね?ゾンビみたいな顔してんじゃん。
その前に、まず来週は水族館行く予定。ほら、今話題になってるペンギンの赤ちゃん生まれたってとこ。フェアリーペンギン可愛いよな。真依ちゃんがさぁ、わざわざ新聞の記事見せて教えてくれたんだよね、ペンギンの赤ちゃんより真依ちゃんの方が可愛い。あまりの可愛さにその場で入園チケットをポチってたわ。可愛いは正義。これが世界の真理。お土産は期待してろよ、ダイオウグソクムシのくっそリアルなフィギュアあるらしいから買ってきてやるよ。


「いや、要らねぇよ」
「じゃあイルカのぬいぐるみだな。五条にはアザラシのぬいぐるみ。受け取りは強制だから」
「迷惑セールスじゃん」
「だってしょーこさんの部屋、医学書とビールと煙草しかないじゃん」
「いや、それだけではないだろ」
「あ、しょーこさんも一緒に行く?真依ちゃんセラピー、最高に効くよ」
「やーい、ロリコン」


なんて、つれない態度をしていたしょーこさんだが、最近長いこと高専に缶詰で心が干からびているだろうからと、夜蛾さんに許可を出してもらって無理やり連れだして一緒に水族館に行った。
イワシの群れを見て美味しそうって言うあたりさすがしょーこさん。真希ちゃんはタコの水槽の前でたこ焼きに思いを馳せていた。女の子ってよくわからない。ミズクラゲに見とれる真依ちゃんの可愛さプライスレス。お目当てだったペンギンの赤ちゃんも見れてかなり満足だ。

平日で空いていたのでサクサクと一周して、お昼を済ませてから午後一番のイルカショーまで時間をつぶすために先にお土産屋に入った。四人でお土産を物色している時にスタッフのおばさんに親子に間違われるなんてサプライズがあったりもしたが、俺の嫁(仮)はしょーこさんではなく真依ちゃんである。馬鹿正直に言うわけにはいかないので曖昧な笑顔で否定しておいたが。

お土産屋では宣言通りにしょーこさんにイルカのぬいぐるみをプレゼントした。白と黒の二匹セットのやつ。サービスで、記念に名前を刺繡してくれるらしいので、白い方には「さとる」、黒い方には「すぐる」と名前の刺繡を入れてもらうことにした。なぜかしょーこさんに微妙な顔をされたが見ないふり。五条にはクソでかいアザラシのぬいぐるみ、夏油にはめっちゃリアルなダイオウグソクムシのフィギュア。後輩ズにはイルカのイラストがプリントされたクッキーの一番数が多いやつを買っておいたので抜かりはない。

お土産屋ではしゃぐ真依ちゃんと、それをにこにこと見ている真希ちゃんの二人が尊かった。真依ちゃんは、お姉ちゃんとお揃いの物が欲しいらしい。何それ可愛い。お兄さんなんでも買ってあげちゃう。クレカを取りだした俺を見た真希ちゃんがドン引きしてた。結局、二人で色違いのペンを買うことにしたらしい。
お会計の時にしれっと俺のカードで支払ったら二人に「これくらい自分たちで買える!」と怒られてしまった。怒る姿も可愛いねって言ったらしょーこさんにキモいって叩かれた、地味に痛い。

粗方買い物を済ませた後に、真依ちゃんとしょーこさんがお手洗いに行ってしまったので真希ちゃんと待っていると、真希ちゃんに手を引かれてお土産屋のアクセサリーコーナーに連れていかれた。
真希ちゃんが指さしたのはシルバーのイルカモチーフが付いた華奢なチェーンのネックレス。イルカの目にはスワロっぽい綺麗な石がはめ込まれている。曰く、真依ちゃんが熱心にこれを見ていたらしい。確かにきらきらしてて女の子が好きそうなデザインだ。本当なら真希ちゃんが買ってあげたかったが手持ちのお小遣いでは到底手が届かず、俺を頼ることにしたらしい。真希ちゃんの真依ちゃんへの優しさが俺の心にクリティカルヒット。
こうかは ばつぐんだ。

即買いしたし、同じイルカモチーフが付いたブレスレットも一緒に買って真希ちゃんに渡した。とてもよく似合ってる。真希ちゃんに怒られた。「婚約者でもない女にほいほい貢ぐなバカ」って言われた。真依ちゃんの大事な人だから婚約者の俺も大事にして然るべきだと反論したら小さなお礼が聞こえたので俺は満足です。
真依ちゃんには泣くくらい喜ばれたし熱烈なお礼のハグもいただいた、尊い。喜ぶ真依ちゃんを見て真希ちゃんも嬉しそうだったので、俺も幸せ。

その後もイルカショー見たりして楽しんで、二人を家に送って高専に戻った。
帰り道で真依ちゃんは、しょーこさんの何を見たのか「私も硝子さんみたいな綺麗な人になりたい」って言っていたっけ。大丈夫、真依ちゃんは今のままでも十分美人さんだから。ヤニカスなところを見習わないでくれればそれでいい。


この日から、しょーこさんの部屋には二匹のそれぞれ最強二人の名前が入ったイルカ、五条の部屋にはクソでかいアザラシの「さとる二号(命名は灰原)」、夏油の部屋にはリアルなダイオウグソクムシのフィギュアが鎮座することになった。お土産屋のクッキーは七海と灰原とたまたま居合わせた夜蛾さんで三等分、……いや、半分は灰原が食べたらしく、七海と夜蛾さんは数枚しか食べていないそうだ。灰原、たくさん食べて大きくおなり。

でも食いすぎは駄目だし食い意地もほどほどにな。

Comments

  • シン
    November 5, 2023
  • なつみかん?
    January 20, 2023
  • 何度も読み返してしまう、、 続きが消えてしまっていたのは残念ですがまた読み返しに来ます

    May 28, 2022
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