【選挙ウォッチャー】 山形県知事選2025・分析レポート。
1月9日告示、1月26日投票で、山形県知事選が行われました。
今年の山形県知事選は、正直、わざわざ見に行くほどの話ではありませんでした。
というのも、5期目を目指す現職の吉村美栄子さんを、今年は自民党も相乗りで推薦することを決めたため、対抗馬がおらず、共産党も候補者を擁立することができず、無投票当選になってしまうのではないかと考えられていたからです。
しかし、福島県に住む84歳の金山屯さんが突如として立候補を表明。ポスターを貼ることもままならないため、まったく勝負にならないことは明白ですが、一転して選挙戦に突入することになりました。
吉村 美栄子 73 現 5期目を目指す
金山 屯 84 新 無職
もはや、このレポートにどれくらいの価値があるのかという話になりますが、世の中、すべてが面白い選挙というわけではありません。時には、何のために取材するのかが分からないような選挙もあることでしょう。しかし、数年後や数十年後に、それぞれの選挙を振り返ろうと思った時に、こんな選挙だったということを記録として残しておくことは大切です。今年もスタッドレスタイヤに履き替え、山形まで行ってまいりました。
■ 山形県知事選・選挙ボード解説動画
■ 金山屯候補の主張
金山屯さんは、これまでにもさまざまな選挙に立候補しては落選している84歳の爺さんです。たまに選挙に立候補することを趣味にしている人というのが存在しますが、まさにその典型のような人です。
記録が残っているものだけ数えても、今回の山形県知事選で10回目の立候補となっており、そのたびに悲惨な数字を叩き出して負けてきたという歴史があります。
2007年 白川市長選(落選)
2009年 泉崎村長選(落選)
2010年 西郷村長選(落選)
2011年 白河市長選(落選)
2015年 白河市長選(落選)
2015年 福島県議選(落選)
2018年 福島県知事選(落選)
2019年 白河市議選(落選)
2019年 福島県議選(落選)
2025年 山形県知事選(落選)
2000年より昔になると、立候補したデータをまとめているものが存在しないため、若い頃にたくさん立候補している可能性もゼロではありませんが、いずれにしても1年に1回ぐらいのペースで選挙に立候補している爺さんだということになろうかと思います。
ちなみに、今年は10月頃に宮城県知事選が行われる見込みとなっていますが、ここに金山屯さんは立候補することを表明しています。福島県在住ながら、近隣の山形県や宮城県にも立候補しようとしています。
当初、金山屯さんの選挙をサポートしていたのは、我らがショー・タカハシこと高橋翔さんでした。ところが、金山屯さんと高橋翔さんは選挙の途中で急速に仲が悪くなり、なんと、高橋翔さんが金山屯さんをディスり始めるというところまで来ていました。ショー・タカハシの言っていることの方が理屈に合う話だとしても、いちいちモメるところが面倒臭いです。
今回の選挙ポスターは、おそらくショー・タカハシがデザインしたわけではなく、金山屯さんが自分で決めたものだと思います。ショー・タカハシのポスターのデザインもわけわからないですが、金山屯さんの選挙ポスターも意味を理解するのは大変です。
おめでとう。山形、山﨑、金山と三つの山が勢揃い。上杉鷹山公の懐刀山崎家が金山家と養子縁組を交わして血が繋がり、今の私があります。山が三つの巴の紋。あらゆる災害から山形を守ります。例えばトンネルの多さ。地震が多発する日本列島、トンネル内70km/h、大丈夫? せめて50km/hオーバーを取り締まるべきでは? 大きな事故でまほろばが一転して地獄の修羅場。同知事が4期も続く現行政にそんな配慮は皆無。一時が万事。私、金山は即、退陣を求めます。
ちょっと何言っているのかわからないです。
しかし、これくらいホゲホゲしている爺さんが精力的に立候補し、時にはショー・タカハシと揉めたりしているのです。もともと選挙から身を引く考えだったそうですが、日本原水爆被害者団体協議会のノーベル平和賞受賞のニュースを見て、「高齢だからと引っ込んでいる場合ではない」と思うようになり、このたびの山形県知事選への立候補を決意したそうです。
もともとは証券や設備関係の会社で仕事をしていて、60代で福島県白河市に移住。現在も奥さんや愛馬のメアリーと一緒に暮らしているのだそうです。
ちなみに、今回の山形県知事選に立候補するにあたり、無投票当選になれば、選挙の費用は「億円単位」で浮くわけですから、「立候補するのは迷惑だ!」という人もいるのですが、選挙がなくなることを喜ぶべきではありません。民主主義を守るためには必要なコストなので、いくらホゲホゲしていても、選挙は行われるべきだと思います。
■ 吉村美栄子候補の主張
山形では絶大な人気を誇る吉村美栄子さんが、今年も5選目を目指して立候補してくることになりました。前回は自民党が候補を立てましたが、まったく通用せずに落選することになってしまったため、今年は自民党が吉村美栄子さんに相乗り。自民・公明・立憲・国民が吉村美栄子さんを推薦する形となり、共産も吉村美栄子さんを応援しているため、とうとう無投票当選になるのではないかと見られていました。
告示日には与野党の相乗りを象徴するかのように、自民党の加藤鮎子さんや国民民主党の菊池大二郎さん、舟山康江さん、芳賀道也さんといった衆議院議員や参議院議員が集合。昨年7月の豪雨災害からの復旧・復興をさらに前に進めるとしていました。
今回、公約として掲げていたのは、県立博物館の移転整備、東北公益文科大学の公立化を進めるとともに、子育て経費の負担軽減。防災士の養成、防災分野の女性参画の促進、治水対策の強化、簗型新幹線の新トンネル整備促進、西村山地域の新病院整備など。さらに、スマート農業や気候変動に強い農畜産業の普及、東北農林専門職大と連携した担い手確保。山形空港と庄内空港の滑走路延長の検討や外国人材の受け入れを拡大することなど。
今年は告示の直後から大雪が降り、気象庁と国土交通省が会見を開き、新幹線も止まってしまったので、序盤から選挙戦が中断されることになりました。さらに、この選挙期間中は、山形県内をすべて回ることを目標とし、僕が取材した日は酒田市をはじめとする庄内地域をめぐっていたのですが、具体的な演説の場所などは明かしていませんでした。
実は、これには理由があり、山形県知事選が行われていた1月は、山形県内でインフルエンザが大流行しており、新型コロナウイルスのみならず、インフルエンザにも特別な警戒が必要だということで、なるべく人を集めない選挙をしていました。ゆえに、選挙カーの中から挨拶をするぐらいにしており、個人演説会などもしない方向でした。これは相手が金山屯さんであることを考えれば当然で、情勢はほぼ決まっている中で、インフルエンザが流行っている中で人を集めることにはデメリットの方が大きくなります。こうした判断ができることも素晴らしく、結局、ちょっと手を抜いた選挙のようになっていたのですが、そこには合理的な理由がありました。
よって、同日に行われていた岐阜県知事選とは異なり、吉村美栄子さんの陣営は街頭演説の日時と場所が定まっていなかったのですが、江崎禎英さんのような「舐めプ」の選挙ではなかったと思います。そりゃ自民党も勝てないと判断して候補者の擁立を諦めるという話です。
ちなみに、2021年11月に自宅で階段を踏み外し、右足を骨折して以来、健康管理に一層の気を遣うようになり、1日8000歩を心掛けるようになったといい、朝はできるだけラジオ体操をして体調管理をしているそうです。長男家族と同居しており、4歳の孫のサメ好きに付き合い、60種類近いサメを覚えさせられているそうです。
■ 前回(2021年)の選挙結果
4年前は、自民党が大内理加さんを擁立し、打倒・吉村美栄子を目指して本気の勝負を仕掛けてきました。自民党としては十分に勝負になるだけの良いタマを出したつもりでしたが、蓋を開けてみれば、ダブルスコア以上の大差をつけられ、まったく勝負になりませんでした。
大内理加さんは2007年から2021年まで山形県議を務めており、政治家としてのキャリアを重ねてきました。それゆえに自民党のバックアップがあれば、そこそこの勝負になるかと考えられたのですが、山形県民は吉村美栄子さんの政策に満足しており、もともと「変える」という発想があまりない風土もあって、大内理加さんは落選しています。
[当]吉村 美栄子 69 現 40万0374票
[落]大内 理加 57 新 16万9081票
投票率は62.94%でした。
大内理加さんは、その後、2022年の参院選に自民党から立候補していますが、こちらも国民民主党の舟山康江さんに敗れており、2023年の山形県議選に立候補してこなかったことから、県議に戻るつもりはないのではないかと思います。
2022年の参院選では落選してしまいましたが、自民党は2025年の参院選にも大内理さんを擁立する方針で、2025年は無所属の芳賀道也さんが改選を迎えますが、3度目の正直で参議院議員になれるのかが問われています。
自民党は、政治資金パーティーが渋チンになってきていることに加え、長らく人気が復活しない状態にあることから、山形県選挙区で自民党が取り返せるのかどうかは、だいぶ不安な状態となっています。
■ 今回(2025年)の選挙結果
今年の山形県知事選は、誰もが予想した通りの結果になりました。
実質的に吉村美栄子さんの信任投票となりましたが、誰がどう考えてもポンコツの爺さんよりは、これまでの仕事ぶりが県民に評価されている吉村美栄子さんの方が良いということになろうかと思いますので、完全に圧勝となっています。それでも金山屯さんに1万人ぐらいは投票する人がいるんだということに驚きです。
知事選の供託金は300万円になり、それなりにポスターを印刷して貼っていると思いますが、これらのポスター代などもすべて自腹です。よくお金があるものだと思いますが、金山屯さんは宮城県知事選にも立候補する方針だというので、また300万円が没収されるのはほぼ確実。そんなお金があったら、僕に何かおごってほしいウナ!
[当]吉村 美栄子 73 現 31万8364票
[落]金山 屯 84 新 1万7794票
投票率は39.67%でした。今年はほとんど選挙として成立していなかった関係で、投票率が激減してしまいました。選挙に行かなくても、結果が変わることはないと思った人が多かったのだと思います。
今年の山形県知事選がどのようなものだったのかを記録し、たった100円のレポートのために、わざわざポスターの写真を撮りに行きましたが、こういう記録が数十年後にも読める状態になっていることは大切です。
■ 選挙ウォッチャーの分析&考察
結局のところ、84歳の金山屯さんは、ただの選挙好きの爺さんで、立花孝志のように攻撃的ではない分、無害と言えば無害ですが、それでも山形新聞の取材に「山形の社会基盤整備について、どう思いますか?」と質問されて、現職の吉村美栄子さんが「豪雨で被災したJR米坂線、陸羽東線などの早期復旧。自動運転やライドシェアなど新たな交通手段の導入」と答えているのに対し、チャレンジャーである新人の金山屯さんは「現状を知らないので答えられない」と答えています。
はっきり言って、この程度の知識で「知事になりたい」なんて、おこがましいにも程があるという話ですが、こうした人間の立候補によって億単位のコストが生じているというのは、非常にバカバカしくなります。それでも選挙のコストをケチるのは良くないと思いますが、この世には、本気で良い政治をしようと思っている人間はほとんどおらず、志のないバカが300万円の供託金を握りしめて立候補してしまうのが現状です。当選こそしないものの、勉強すらしない人間が知事になって、一体、何ができるというのでしょうか。どこかの県民がジジィにちゃんと説教してもらいたいです。
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