NoNoGirlsに世界を変えてほしいと願ってしまう
女性に対する視線の厳しさに嫌になることがある。何か大きなきっかけがあったわけではない。
他人の容姿、体型にとやかく言う人ってなんでこんな多いんだろうとか。
男性アイドルは30〜40代まで続けている人もいるのに、女性アイドルは20代で卒業する人がほとんどなのはどうしてだろうとか。
日常のふとした瞬間に、女性にとっての「美しさ」と「若さ」の価値が、男性にとってのそれよりも高くて、失ったら二度と手に入れられないもののような気がしてくる。
今活躍しているアイドルの方々はこうした厳しい世間の声に合格した、というか、可愛くて、細くて、若くて、歌やダンスができて、そういう方たちの集まりだと思う。
今いるアイドルももちろん可愛いと思うし、実力があって選ばれているのだろうけれど、美しさの基準が画一的だと感じる。
だからどのグループも同じように見えてしまってなかなか好きになれず(ハロプロは好き)、個性的で自信に満ちているガールズグループがもっと日本で有名になればいいのにとずっと思っていた。私がアイドルに詳しくないだけかもしれないけれど。
NoNoGirlsというオーディションは、ちゃんみなさんの「身長・体重・年齢、要りません。あなたの声と人生を聞かせてください」という言葉からスタートした。
「Noと言われたことがある人、自分にNoと言い続けている人に来てほしい」という趣旨に共感した参加者がたくさんいた。
容姿や実力に自信がないという人がいたり、いじめられた経験がある人がいたり、実力は申し分ないのにオーディションに落とされてきた参加者もいたり。
涙を堪えながら今までの体験を教えてくれる姿を見て、ごめんねと思った。そんな理不尽なNoが当たり前の社会でいいはずがない。
オーディションは評価の場でありながら、参加者へのリスペクトが感じられるものだった。
ちゃんみなさんは審査で不合格にした参加者に対して「まだ時間がかかる」と言い、足りない部分をしっかりフィードバックしていた。そして「これからもサポートする」「誰の手も離さない」と言った。「あなたはここで終わり」でも構わないはずなのに。
ノノガとは別のアイドルオーディションを見ていたとき、SNSで参加者の容姿に対するコメントを見かけた。
「かわいい」「綺麗」と褒めるものもあれば、逆もあった。私は後者の方が頭に残って、自分が言われたわけでもないのに落ち込んだ。
20代の参加者に向けて「デビューしてもアイドルとして活動できる時間は短い」という言葉もあった。私より若いのに。間接的に私の年齢まで否定されている。
視聴者に審査させる形式だったので、こうした批評じみたコメントが散見されるのも当然と言えば当然だ。でも私には行き過ぎたように思えてならない。
ノノガでこうしたコメントがあまり見られなかったのは、ちゃんみなさんのコメントがいつも愛に溢れていて、実力を評価する姿勢が一貫していたからだと思う。
SNSでアイドルに対する声を日常的に目にする。まさにちゃんみなさんの『NG』のように、細すぎても太すぎてもいけないらしい。
韓国アイドルのようなシェイプが美しいとされ、それに近づくと「痩せて綺麗になった」と言われたり、はたまた「痩せすぎ」と言われたりもする。どっちやねん。顔の見えない人たちはアイドルの心身の健康に無責任な言葉ばかり投げかける。
そしてそれはアイドルではない私たちにも刷り込まれる。
私は自分の容姿に人並みのコンプレックスくらいはあるけど、自信もある程度ちゃんと持って生きてこられた。その分、SNSの世界に触れるたびに世の中の人はこんなにも他人の粗探しをしているのかと悲しくなる。
容姿に自信がない人を見ると、SNSを通じて自分のことも厳しく評価してしまっているんだなと思う。
NoNoGirlsを見て、アイドルではあまり見ないふくよかな体型の参加者の方もいて、とても嬉しかった。いろんな体型の美しさがあると知っているけれど、メディアで見る美しいとされる人は、みんなほっそりとした体型だったから。脂肪や筋肉がついた体型もめちゃくちゃ可愛いしかっこいいし美しいと素直に思えたことが、ノノガを見て一番嬉しかったことかもしれない。
もちろん細い人が美しくないわけではなく、その人にはその人の美しさがある。ただ、無理なダイエットをしたり、ストレスや病気などで不健康に痩せてしまったり、そういった人たちに向けても「痩せて綺麗になったね」と言えてしまうことには疑問を感じる。
ノノガではちゃんみなさんやSKY-HIさんが差し入れしたピザやお寿司をもりもり食べる参加者たちが映し出された。食べて、踊って、歌って、健康そのものだ。ガールズグループを目指す彼女たちがしっかりと食べている映像は、意外と貴重なものになったのではないだろうか。
オーディションの過程で、誰とも似ていないオリジナルの自分を見つけて、自分を肯定する過程を見て、涙が出てきた。自信を持つと輝くのが目に見えてわかって、自信ってすごいパワーを持っているんだなとしみじみ思った。
最終審査では、3次審査以降で落ちてしまった参加者たちにもパフォーマンスする場が与えられた。
オーディションは落ちたらそこまでだと思っていたが、それは間違いだった。
ちゃんみなさんの「まだ時間がかかる」という言葉は、「時間さえあれば輝く」の裏返しだった。みんないつのまにか成長していて、素晴らしいパフォーマンスを見せてくれた。番組に映らない時間にもしっかり努力を積み重ねてきたのがわかった。
今回デビューが叶わなかった人たちからもきっと素晴らしいアーティストが生まれるのだろう。これから先も楽しみだ。
全員が素晴らしかった中でも、私は特にCHIKAちゃんがノノガの主人公に見えた。Noと言われ続けて失った自信を取り戻して、『美人』を歌った。Noのために戦う一人となって。ありがとうね、CHIKAちゃん。「I am beautiful」のシャウトなんて思い出すだけでも泣けてくる。あなたの勇気ある姿にとても救われているよ。
ノノガが努力や実力を重視し、その人の人生を尊重し、こういう人たちばっかりになったら世界ってもっと良くなるよなぁなんて考えた。夢物語のように思えてしまうこともあるのだけれど、ちゃんみなさんは「本気で変えたい」と言っていた。私も微力もいいところだが、その言葉を信じたいし、世界中のNoNoGirlsとHANAがきっとNoと戦い続けてくれるから、臆せずに理想を掲げたいなと思う。
私は、他人を尊重できる人でありたい。自分のことを愛したい。そういう世界にしたい。
すごく自分勝手な感想なのだけど、アーティストという目指したいものがある人を羨ましいと思ってしまう。私には夢と呼べるものがないから。目標に向かって頑張る人は美しいけれど、そうではない人は?
誰だって自分が美しいと思えば美しい。でも、そう思えるまでにはやっぱり努力が必要だと思う。だから、NoNoGirlsやHANAに勇気をもらいながら、自分を愛する努力をしたいと思った。
HANAがこれから見せてくれるパフォーマンスが心から楽しみだ。ひとつわがままを言うと、女性が年齢を重ねることに関するポジティブな意見ももっと生まれてほしいから、HANAが長く活躍してくれるといいなと思っている。
HANAの皆さん、プレデビューおめでとうございます。皆さんだけの花道を歩いていくことを心から祈っています。
了
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