まるで正義のヒーロー気取り…「フジ会見」をおもちゃにしたクレーマー記者がこれから払う“大きすぎる代償”
■「予定調和」を乱すために躍起になっている その後、東京都の豊洲市場移転問題(2017年ごろ)をめぐる小池百合子知事の会見などから、テレビも「同時中継」を行う機会が増えたと記憶している。これは謝罪ではないものの、前都政からの不祥事として「築地か豊洲か」の二者択一で描かれていたため、まさにエンタメ的に認識していた人も多いのではないか。 かくして会見は、エンタメ化した。その背景には、視聴者と取材者の利害が一致した「共犯関係」があるように感じられる。視聴者は「会見をもっと面白くしてほしい」、取材者は「よりセンセーショナルな言動を引き出さなくてはならない」といった意識を持ち、当初想定されていた「予定調和」を乱すべく、血道を上げている。 ■エンタメ化の終着点は「閉ざされた記者会見」への回帰 当然ながら、本来の意図を離れた「会見報道」は、開催する側には望まれない。メディア側の人間からすれば残念だが、おそらく今後は、取材者を限定した「クローズドな会見」に回帰していくだろう。せっかく手に入れた情報アクセスの権利を、メディア側が雑に扱ったのだから仕方ない側面はある。 しかし、エンタメ的に楽しんだ視聴者も、その先ずっと支持してくれるとは限らない。熱が高ければ高いほど、ひとたび飽きてしまえば、一気に離れていく。とは言っても、よりセンセーショナルな見せ方をできるかのチキンレースでは、どこかで限界が訪れる。そこに残るのは、オワコン(終わったコンテンツ)と化した取材者と、閉ざされた会見場のみだ。 なにより、コンテンツとして消費されてしまえば、その後には教訓も何も残らない。本来であれば、今回のフジ会見は「企業コンプライアンスの教材」として学べるはずだが、映像として目立った「記者の不規則発言」にフォーカスされてしまえば、焦点がブレてしまう。こうしたエンタメ化による弊害を考える上でも、エポックメイキングとなった会見と言えるだろう。 ---------- 城戸 譲(きど・ゆずる) ネットメディア研究家 1988年、東京都杉並区生まれ。日本大学法学部新聞学科を卒業後、ニュース配信会社ジェイ・キャストへ入社。地域情報サイト「Jタウンネット」編集長、総合ニュースサイト「J-CASTニュース」副編集長、収益担当の部長職などを歴任し、2022年秋に独立。現在は「ネットメディア研究家」「炎上ウォッチャー」として、フリーランスでコラムなどを執筆。政治経済からエンタメ、炎上ネタまで、幅広くネットウォッチしている。 ----------
ネットメディア研究家 城戸 譲