迫害逃れ、語学極める 愛知のアフガン女子学生

 「自由のない古里には、もう戻らない」―。アフガニスタン出身で愛知県在住のハージャ・ムハンマドさん(20)は、イスラム主義組織タリバンの迫害を逃れて家族と共に来日し、アルバイトで生活費を稼ぎながら名古屋短大で英語を学んでいる。「いつか日本語と英語の通訳として活躍したい」。故郷のつらい記憶を胸に、力強く夢を語る。(共同通信=高木亜紗恵)

 タリバンが勢力を拡大していた2018年前後、アフガンでは少数民族や女性への抑圧が苛烈を極めた。ハージャさんによると、自身を含む少数派ハザラ人が利用していたイスラム教シーア派のモスク(礼拝所)や学校が自爆テロの標的になり、大きな被害を受けた。女性は通学や車の運転を禁じられ、ヒジャブ(スカーフ)のかぶり方を理由に暴力を振るわれたり、殺害されたりすることもあった。

 ハージャさんは首都カブール生まれ。仕事のないアフガンを離れ、愛知県で自動車販売の仕事をしていた父の元へ18年に逃れた。県内の公立中に転入し、故郷で学んだ英語を使って日本人の生徒たちと交流。当初は「『こんにちは』すら分からず、不安でたまらなかった」というが、ブラジルやフィリピン出身の生徒たちと共に日本語の勉強に打ち込んだ。

 その後、教員の勧めで定時制高校へ進学。6人きょうだいで家計が逼迫する中、トマトの収穫などのアルバイトで学費や生活費を稼ぎながら、日本語と英語を猛勉強した。やがて、自身を支えてきた英語を「本格的に学び、世界を広げたい」との思いが芽生え、名古屋短大へ進学した。

 同大英語コミュニケーション学科の若松亮太助教は「学費を抑えて高度な教育を受けられる短大は、経済苦を抱える外国人の学びの場になりつつある」と指摘する。「ひとたび入学すれば奨学金を使って四年制大学に転入する道も開かれる。こうした『ワンクッション』が安心材料になる」。ハージャさんも四年制大学で学びを続けるため、今年1月、奨学金を申請した。

 日本では地震や猛暑に戸惑い、ヒジャブをしたまま働ける場所が限られるなど「不便もあった」。それでも夜間に出歩け、大学に通える社会は「自由で別世界のよう」だとハージャさんは語る。時折、古里で暮らす女性たちに思いをはせる。「悲しい状況が続いている。女性に自由があったころのアフガンに、どうか戻ってほしい」

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