驚愕の深層レポート 新たなる公安組織< Ⅰ・S >の全貌 前編

「政界情報」「対メディア情報」を掻き集め始めた 諜報機関の危険性   青木理(ジャーナリスト)

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 戦後日本の警察は「自治体警察」の形態を取り、各都道府県警はそれぞれの都道府県公安委員会の管理に服することとなっている。警察という権力装置の政治的中立と民主的運営を担保するためのシステムだが、これはあくまでも建て前に過ぎない。

 各都道府県警のトップをはじめとする枢要なポジションには警察庁採用のキャリア官僚が座り、事実上、警察庁を頂点とする牢固なピラミッド構造が形成されていると考えてよい。

 この傾向は、公安警察においては一層顕著となる。警察法が「国の公安に係る警察運営」は警察庁が指揮監督すると定め、公安関連予算も国庫支弁となっていることもあり、各都道府県警の公安部門は警察庁の直接指揮下に置かれている。

 かつて緒方靖夫・共産党国際部長宅を狙った盗聴工作('86年)など数々の非合法活動に手を染め、公安警察が運営する「協力者」という名のスパイを一括管理する< チヨダ >の実態と現状については次号で記すが、一方の< I・S >は「オモテ」の理事官の管理下に置かれ、やはり警備企画課内にある「総合情報分析室」が情報の取りまとめ役を担っているという。

 少し前まで< I・S >業務に直接関わっていた現職公安警察官が明かす。

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「(I・Sは)政治やマスコミ関連の情報などを中心に、警備局長が知っておいたほうがよいと思われる情報を全国警察から掻き集めるためにつくられました。間もなく各都道府県警にも専門の係官が置かれ、大量の関連リポートが毎日あげられるようになりました。
  私がI・Sに関わっていた頃は、全国から警備局に送られてくるI・S絡みのリポートで太いロール状のファクス用紙が1日もかからずになくなってしまうほどでした」

 複数の公安警察幹部らの証言を総合すると、< I・S >、あるいは< 07 >と呼ばれる組織は、'90年代後半から警察庁警備局で本格稼働を始め、全国の都道府県警にも警備局の直轄部隊として担当官が整備されていったようだ。< チヨダ >もそうだが、公安警察組織は滑稽じみた組織内の符牒を好んで用いる。

 < I・S >とは「インテグレイテッド・サポート(Integrated Support)」、あるいは「インテリジェンス・サポート(Intelligence Support)」の略称とされ、かつて警備企画課の「7係」が主管していたため、< 07 >と呼ぶケースも多いのだという。

 今度は、関西圏の某県警の現職公安幹部が言う。

「サッチョウ(警察庁)の警備局は、とにかく大量の情報を集めたいらしく、I・Sに関しては各警察本部のリポート報告量に応じて順番をつけ、評価を下しているんです。優れた情報だと判断されれば警察庁の警備局長賞なども出されているから、全国の担当官は各警察署の公安係まで駆使し、目の色を変えてリポートを送っています。
  県警のI・Sには政治担当や(創価)学会担当などが置かれていますが、場合によっては、警備局から具体的な調査指示がI・S担当者に下りてくることもあります」

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