『追放者達』、蹂躙される
結局、アレスはセレンとの関係を根掘り葉掘り聞き出される事となってしまい、羞恥と圧力による疲労によって撃沈する事となる。
が、その段に至って漸く、互いが互いに自己紹介すら碌にしていなかった、と言う事に気付き、セレンが間に立つ形で紹介が行われる事となった。
そして、そこで漸くアレス達は目の前のセレンの母親(推定)が本当に母親であり、名前はカリンである、と知るのだが、ソレに納得しないのが約二名。
…………言わずとも察せられたとは思うが、タチアナとナタリアの両名が、そんなハズが無いだろう!と猛抗議を行ったのだ。
二人曰く『こんなに大きな子供が居る様な歳でそこまで体型が崩れていないのはおかしい』と。
二人的に、子供が成人を軽く超える様な歳になっているのならば、それだけ胸が大きければ形が崩れて垂れていないとおかしい、そうでないと自然の摂理に反する事になる!(混乱)と主張して引かなかったのだ。
…………恐らく、自分達を『持たざる者』として認識している二人としては、どうせオトコだとかからチヤホヤされるのは今だけ、年を取れば形が崩れて垂れるだけなんだから結局良いモノでは無い、と自分に言い聞かせて来たのだろう。
そうして正気(?)を保ち、激発しない限りは見せない様になっていた怨嗟を宥めていた二人にとって、セレンの母親、と言う事は世代的には孫が居てもおかしくは無い年頃、と言う事であり、そんな歳の人間が服の上からしか見えてはいないが、隣に居る娘のセレンと同じ様な体型をしている、と言う事が信じられず、また認められない事実として立ち塞がる事になったのだろう。
おまけに、カリンの容姿が整っている事も、二人を加速させていた。
他の種族の様に、外見から年齢が推定し易い状態となっていればまだ違ったのだろうが、長命種である森人族は外見の劣化が(他種族から見れば)非常に緩やかであり、ぱっと見た限りでは二人が並んでいると確実に『母娘』と言うよりは『姉妹』に見えてしまう程度の差しか無く、ややカリンの方がおっとりした雰囲気を放ち、柔らかく下がった目尻をしている、位の違いしか見えかったのだ。
故に、母親なハズが無い、姉か叔母か何かに違いない!と主張する二人。
そんな二人に対してカリンは、特に気分を害した様な素振りも見せず、また敵意の類も見せていないどころか、何故か可愛らしいモノを見た、とでも言いたげな微笑みを浮かべながら、雰囲気の通りにおおらかな態度にて二人を抱きすくめ、その頭をゆっくり優しく撫でて行く。
咄嗟の事に、思わずそれまでの抗議(?)も忘れて固まってしまう二人。
敵意も殺意も無く、極自然に近付かれたが故に反射的に行動する事が出来ずに反応が遅れたが、だとしても別段致命的な状況には未だに陥ってはいない!とその抱擁から脱出しようと試みるも、その抵抗は虚しく彼女の巨大で柔らかな山脈に頭から呑まれる事となる。
再度の衝撃により、今度こそ本当の意味合いにて固まる二人。
仲間かつ同性の友人としてセレンと触れ合う事も多かった二人として、その巨大質量は経験が無い、と言う訳では無かったのだが、ソレを上回る柔らかさと質感に思わず抵抗する意思を奪われ、彼女が発する暖かさと落ち着く香りによって脱出に向けなければならない力までも抜き取られる様に溶け落ちてしまい、思わずリラックスに近い状態へと陥りされてしまう事になる。
瞬時に、狂犬と化していた二人を無力化した手腕に、思わずアレス達男性陣は戦慄する。
そこまでの魔力を持ったモノなのか!?と言う興味もそうであるが、毎度毎度機嫌を取るのに苦労する二人を、あっと言う間に宥めてしまった彼女の手腕に恐怖すら覚えている、と言う事だ。
「…………お、おわ、あぁ……。
ナニ、コノ、ホウヨウリョク……ニクシミガ、トケテユク……」
「あぁ、溺れる……溺れる、のです……」
「あらあら、うふふ。
安心してしまったのかしら?
元々可愛らしいお嬢さん達だとは思っていたけれど、こうして抱き締めてみると大きさ的にもピッタリで、おばさん久しぶりに母性が疼いてキュンキュンしちゃうわぁ。
このまま、ウチの娘になってくれないかしらぁ?」
「…………いや、流石にソレはちょっと……。
多少暴走してましたけど、それでも必要不可欠で大切な仲間なんで、引き取られると困るんですよ……」
「あらあら、それはそうなのでしょうけど、おばさんとしては何時かまた来てくれる場所、として思ってくれればそれで十分よぉ。
あ、でも、この娘達を抱き締めていたら、セレンの昔を思い出して、また母性が溢れ出そうになって胸が張ってきた感じがするから、母乳だけでも飲ませて上げて良いかしら?
それとも、アレス君が飲んでママを楽にしてくれるかしら?♡」
「ちょっ、お母さん!?
唐突に、娘の目の前で、その婚約者に手を出そうとしないで貰えませんか!?
それと、アレス様もフラフラと近寄ろうとしないで下さい!?
本気で吸い付くつもりですか!?
貴方が吸い付くべきモノは、こちらでしょうが!?」
まるで何かに誘引されているかの様な足取りにて、カリンへと近寄ろうとしていたアレス。
そんな彼を必死に形相にて捕まえると、セレンは自らの豊満な胸元へとアレスの顔面を押し込んで、その巨大な質量の塊へとグイグイと押し付けて行く。
その様子を目の当たりにしたカリンは、微笑ましげにあらあらと笑っていたが、ふと何かに気が付いた様に眉を顰める。
そして、手振りのみでセレンを呼び寄せると、自らの胸元にアレスの頭を抱き込んだままの状態の彼女へと耳打ちする様に囁やき掛けて行く。
「…………もしかして、貴女『まだ』なの?」
「…………何を指しているのかは分かりませんが、経験ならちゃんとシテいますが?」
「あら、そうなの?
そこまで嫉妬心を顕にして来るだなんて、てっきりまだなのかと思っていたけれど、そうじゃないなら安心ね。
孫の顔が見れるのも、そう遠くは無いかしらぁ?」
「………………それは、その……」
「…………あら?貴女、もしかして避妊なんてしてるのかしら?
ダメよぉ、そんなんじゃ。
貴女、アレス君と生涯を共にして添い遂げたいのでしょう?
だったら、早めに一人目を作っておかないとダメよぉ?」
「…………???」
「貴女、もしかして知らなかったのかしら?
私達寿命の長い森人族が、他種族と添い遂げる為の薬の存在と、ソレの作り方が在るって事を。
ソレには、森人族側が女の場合、子供を産んだ直後の初乳が必須になるから、彼の寿命の事を考えたら早ければ早い程良いわよぉ?」
「!?!?!?」
「あら、それとも貴女、もしかしてその辺諦めてたりしたのかしら?
だったら、考えてみなさいな。
若い頃の、今のままの体力と回数のままで、経験を積んで熟練したテクニックでどこもかしこも責められるちゃうのよ?
ソレ、凄い事になるとは思わないかしらぁ?」
「………………実の母親から聞きたくない事の筆頭を教え込まれた気分ですが、ソレが事実ならもっと詳しく聞かせて貰いたいのですがよろしいですか?」
「えぇ、勿論良いわよぉ。
折角だから、他の娘達からもアレコレ聴きたいし、このまま入っちゃいましょうか♪」
…………周囲には聞こえない様に言葉を交わしていた二人。
暫くして何かしらの合意に至ったのか、それぞれで抱えた人物の事は手放さず、そのままの状態にてツリーハウスへと向かって進んで行ってしまう。
そして、その場に取り残された男性陣二名と従魔達が彼女達の記憶に蘇り、そう言えば、と様子を見に来られるまではまだ暫しの時間が要される事となり、結果的にカリン一人の手によってアレス達は全員が翻弄される事となったのであった……。