前回は区分マンション管理組合システム(体制)について検討しました。
参照→区分マンション管理組合問題。長期間維持管理するための管理体制いろいろ【その2】
今回は、その中の第三者管理方式について、愚生が30年間の区分物件大家業を通じて体験した、残念な第三者管理組合(共用部管理会社)の事例について情報共有させて頂きます。
健美家コラムは大家さんが主体ですから、大家さん目線での解説をさせて頂きます。
ご紹介するのは実際に経験した客観的事実であり、特定の会社さんを、いわゆる「ディスる」意図ではありません。
健全な管理組合運営は、組合員と管理会社(第三者管理会社)との誠意あるパートナシップが大切であることは言うまでもございません。
これから区分物件に投資してみよう、という入門者の皆様が、区分マンション共用部管理の転ばぬ先の杖として、より良い管理組合員としてご活用頂く一助として頂ければ、と願ってご紹介させて頂く次第です。
■区分マンション管理の大変革。20年ぶりの区分所有法が大改訂
本題に入る前に、本稿執筆時に開催されている2025年1月開始の通常国会で、区分所有法改訂が審議されており、おそらく通過議決されると思います。
愚生は法律の専門家ではございませんので、オリジナル一次資料をお示し致しますので、区分物件投資に当たり、読者ご自身でご確認頂くのが宜しいと存じます。
※オリジナル一次資料
「建物の区分所有に関する法律」
https://laws.e-gov.go.jp/law/337AC0000000069
「区分所有法制の改正に関する要綱案」https://www.moj.go.jp/content/001410115.pdf
https://www.moj.go.jp/content/001399230.pdf
これを読み解くのは大変ですので、表1~7に改定に関係する要点をまとめさせて頂きました。
愚生が作成したものですから、思わぬ間違いがあるかもしれません(苦笑)。
WEB上で専門家の方々の様々な解説や纏めが掲載されていますので、ご自身での一次資料解読と合わせて研究されることをお薦め申し上げます。
何故、これを敢えて本稿冒頭にご紹介させて頂いたかと言えば、この改訂も今回コラムの主題の「転ばぬ先の杖」の要素があるからです。
表1~7をご参照頂くとお分かりかと思いますが、改定の趣旨は非常にシンプル&アバウトに言えば
管理組合議決に参加しない(できない)人が居ても、議決を通しやすくしようということです。
これは第97話でご紹介の通り、区分マンション空き家、高齢化、海外オーナー、所有の多目的化(投資vs実需)等に対応して大規模修繕や建替えなどをやりやすくしようという、組合員たる「居住者やオーナーの為に!」が本質だと思います。
とはいえ、表1~7の改定が実際に施行されて結果が出て来るのは、何年か先になるでしょう・・・。
その過程で、以下にご紹介するような、過去に改定されて導入された「第三社管理方式」での、区分所有者から見た場合の様々な「残念なこと」が発生することもあるかもしれない、という前提で、区分物件に投資頂きたいと考えております。
「議決を通しやすく」改定して、区分オーナーと利益相反となりうる第三者管理会社の立場で、管理組合の積立金から、利益を自社へ取り易くもできる、かもしれません・・・。
願わくは「区分物件オーナーと共用部管理会社との利益相反」が真の意味で解決され、互恵となるように、管理組合員としてご活躍頂くことを願っています。
■管理組合とは利益相反する手法で、管理会社の利益増を図る手法4選
さて、共用部の管理を管理会社へ委託する場合は、管理委託契約書を締結して、その仕様・内容により毎月の業務費用を管理組合費から支払います。
つまり、この仕様次第で管理コストはいかようにもなるのです。
管理委託契約書に明記されない細部は、契約締結後、毎年の組合総会で審議・議決した上で、付属規則として年々追加・改定されながら運営されます。
従って、その仕様と出費(管理コスト)が適切にマッチングしているかを常に監視しチェックするのが、組合員として非常に大切なことです。
図1に示したのが管理会社の立場で「青いエリアは業務削減」、「赤いエリアは売上増」という区分けで、それぞれ管理組合とは利益相反する手法で、管理会社の利益増を図る手法です。
今回と次回で4つの事例に分けて見ていきましょう。
①業務項目を削減して管理会社で発生するコストを削る(管理品質&サービスを低下させ利益増を図る)
図1の青エリア①は、管理規約に詳細・具体的な業務内容までは明記されていないため、管理契約後、共用部の様々な業務について、自社管理業務の対象外とする付属規則を成立させ、業務量を減らしていった事例です。
こうすれば、社員が現場対応する時間と労力を削減でき、結果として社内コストを削減できるので、利益増が図れます。
管理総会で可決しないと当然、施行できませんが、何気なく、さらっと議案へ入れ込んで、個別にピックアップして議案説明はせず事務的に淡々と議決します。
(分かりやすい具体例や、施行した場合の管理組合員側のデメリットを、お年寄りや素人など、誰にも分かり易く解説などはしない)
会社幹部が必要と判断すれば、担当社員に、管理総会欠席者の組合員宅へ個別連絡して、議長一任するか、賛成投票することだけを依頼します(議長は当然、第三者管理会社社員です)。
①が議決されると、住民同志の騒音トラブルは大家が現場仲裁、共用部のゴミ等も組合員で解決、ベランダ置きの洗濯機排水の越境漏水トラブルも組合員同志で解決が必要で、組合の漏水保険も適用外となります。
管理会社は、こういった業務への社員稼働を最小化できるので、人的リソースを削減でき、人権費コスト減による利益増が期待できるのです。
②自社業務を減らし、外注役務を増やして、そのコストを中抜きし利益増(適正な費用以上を採る)
図1の赤エリア②は管理会社が自分では動かず、外注に業務を投げて、その費用を管理組合に負担させる方法です。
これら通常業務は、管理委託契約仕様内なら、その具体的遂行方法は管理会社の権限内です。
管理組合からすると管理会社社員が委託契約定額に含めて日常業務でやってくれれば、定額契約費以外のコストは節約できます。
一方、業務を管理会社が他社へ外注して、そのコスト分、定額契約費用を増額するか、定額契約費用以外分として個別計上すれば、そのコストは管理組合が負担しますから、組合の管理コスト増になります。
まさに利益相反する業務遂行方法です。
つまり、外注業務を増やした方が、いわゆる他人の財布を使って、自社の労力(人件費)を減らして、仕事量(売上)を増やせます。
特に、管理委託契約業務で定額費用分以外の、管理組合が実費発生支払いする業務については、「おいしい」方法です。
最近の経験では、セントラル給湯方式の物件で、各戸の給湯メーターを、管理会社の管理担当員が毎月目視で計測記録して各戸に請求していた業務を、丸々外注へ投げるようにして、設備計測業務費として、定額委託費用とは別に追加会計とした例があります。
これに対する管理組合員の対策としては、毎期の管理財務決算書の内容を精査して、その変化や項目毎に業務コストが業務仕様と一般相場に比べて妥当かを精査することが重要です。
次回も引き続き赤エリアの事例をご紹介してまいります。