賛否両論のメルカリNFT、その裏側──事業責任者が明かす
Web3に精通したメンバーでやっている
──パブリックチェーンで出されているNFTがメルカリのウォレットに入ることで、クローズドな環境になる。この点について、NFTコミュニティから批判の声も上がっている。 中村氏:X(旧Twitter)上での活発なディスカッションを嬉しく思っています。この機会に当社の考えと今後の展望を共有させていただきたいです。現在の最優先事項は、NFT未経験者の参入障壁を下げることです。そのためウォレットや暗号資産を意識させない仕様を採用しました。私たちのプロジェクトチームにはWeb3に精通したメンバーが多く在籍しており、NFTの本質的価値を提供するには、オンチェーンでの保有と所有権の明確化が不可欠だと認識しています。未来永劫この仕様で続けるつもりは一切なく、これからユーザーが自身のウォレットでNFTを管理できる機能の実装を目指します。 ──いつ頃、ウォレット機能を実装するのか? 中村氏:移管の方法については様々な選択肢を検討していますが、まず、カストディ形式でNFTに触れ始めたユーザーが、そのユーティリティや価値を理解した上で、自然にウォレット利用へ移行できる体験を設計していきます。最初からウォレット連携や直接管理の機能を実装すると、ユーザーにとって理解は困難です。それでは、メルカリのユーザーは離れてしまい、多くの人にNFTを体験してもらうという目標も達成できません。そのため、段階的なオンボーディングを重視しています。 ──リリースから一週間経ったが、取引量や取引額は想定通りか? 具体的な数字を教えてほしい。 中村氏:想定を大きく上回る結果となり、すでに5000個以上のNFTが当社のウォレットに保管されています(2月4日時点)。現在は主にデジタルアートとデジタルコレクタブルを展開し、コートヤード(Courtyard)などのRWAは一部の取り扱いにとどめています。デジタルアートやコレクタブルは従来難しい分野でしたが、予想以上のスピードで取引が行われており、その内容はOpenSea上で確認可能です。 ──ユーティリティを提供する国内のNFTプロジェクトとの摩擦が生じたり、批判的な声が届いたりするか? 中村氏:摩擦は特にありません。ユーティリティの付いたNFTは本質的に重要であり、マーケットプレイスでの流通拡大を目指します。現在は当社でウォレットを一元管理しているため、ユーティリティの活用が制限されていますが、段階的に機能を追加しています。具体的には、RWAトレーディングカードの償還機能に向けたバックエンド整備を進めており、償還時にはユーザーのウォレットへの移管を行う予定です。また、ウォレット操作やユーティリティ活用の難しさに対しては、メルカリのカストディ環境内でNFTのユーティリティを利用できる仕組みを構築中です。すでに、複数のNFTプロジェクトと連携した新しい取り組みも進めています。 ──取り扱うNFTの選定基準は? 中村氏:NFTの選定基準は独自に設けており、法令遵守を最優先としつつ、メルカリユーザーにとって安全に利用できるよう、怪しいプロジェクトやスキャムの可能性があるものは排除しています。選定にあたっては、過去の取引量や信頼度などを参考に、独自のルールやAIによるフィルターを活用した複合的なチェックを行っています。 ──検索機能をつけていない理由は? 中村氏:検索機能を搭載しなかった理由は二つあります。一つは早期リリースのための機能絞り込みであり、もう一つはユーザー体験の向上を意図したものです。Instagramのように、様々なNFTを眺めて偶然の発見を楽しむ没入感のある体験を重視しました。これにより、新しい価値の発見や見過ごされていたクリエイティブの再発掘が促進され、停滞していたNFT市場の活性化につながると考えています。 ──NFTコレクションの運営者にとって、ポジティブなニュースだと思う。現在の市場では、1カ月間取引がないといったケースも珍しくない。 中村氏:今後は、そのようなプロジェクトのNFTを重点的に紹介していく方針です。また、ユーザーの好みに合わせたレコメンデーション機能の改善と実装を進めていきます。検索機能も段階的に追加する予定ですが、当面は、ユーザーが多様なNFTを気軽に探索できる体験を大切にしていきます。