文科省ガイドライン改定で非公開容認…でも文科省は「趣旨が異なる」 熊本県教委のいじめ「重大事態」調査 識者はどう見る?
いじめ防止対策推進法に基づく「重大事態」の調査で、熊本県教育委員会の第三者委員会は保護者や児童生徒から要望があった際、審議の日程や内容を会長の判断で非公開にできるよう運用を改めた。県教委は非公開を望む保護者の強い要望に加え、文部科学省が昨年8月に改定したガイドラインを理由に挙げるが、文科省は改定の趣旨とは異なると説明する。識者は「非公開では事案の検証や再発防止に生かされない」と疑問視する。
2013年施行の推進法は、いじめで子どもの心身または財産に重大な被害が出たり、長期欠席したりする事例を重大事態と定義する。再発防止と事実関係を明確にするため、学校設置者の教育委員会や学校が調査するよう求めている。
県教委は14年度に教育や医療、法律の専門家6人で構成する第三者委員会「県いじめ防止対策審議会」を新設した。これまでも保護者の意向で一部の情報を非公開とすることはあったが、開催日時や取り上げる事案については公表していた。調査報告書も保護者らの要望に応えながら一部を公開していた。
ところが、県教委は昨年11月に新たな重大事態を受けて設置した第三者委について「保護者の強い意向」を理由に「県立学校」という情報以外、いじめの概要や校種などを初めて非公表とした。根拠に挙げたのが「対象児童生徒・保護者が望まないことを理由として、重大事態として取り扱わないことは決してあってはならない」とする文科省のガイドラインだった。
同時に「調査を拒む保護者の理解を得やすくするため」という理由で、第三者委は運営要領に「対象児童生徒およびその保護者が会議の非公開を希望する場合は、会長の判断により、あらかじめ会議を非公開とできる」と追記した。
県教委は非公開の是非に関する議論は以前からあったとし、「これまでも第三者委の判断で会議の内容を非公開にできたが、国の方針に合わせて運営要領も改定した」と説明する。
しかし、文科省児童生徒課の担当者は、ガイドライン改定の狙いについて「学校と設置者の連携不足や保護者とのトラブルが多いことに対応するため」と熊本日日新聞の取材に回答。あくまでも、重大事態の調査が実施されないことを避ける趣旨と強調する。
昨年11月に設置した第三者委が今後作成する調査報告書についても、公表するかどうかはっきりしない。県教委は「現時点で保護者らに確認できていない。報道機関に公表するか分からない」と説明する。ガイドラインは「特段の支障がなければ公表することが望ましい」と示すが、文科省は「最終的には調査主体が判断することになる」と回答を避ける。
情報公開の在り方に詳しい中央大大学院法務研究科の原島良成教授(自治体法)は「公的文書の扱いを保護者の意向に委ねるのはおかしい。類似のいじめの発生や関係者が特定される恐れがあるといった理由がない限り公表すべきだ」と指摘。その上で「公表されなければ何も積み上がらず、起きた事案を検証することもできない」と問題視する。(上野史央里)
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