埼玉県八潮市で1月29日に発生した道路の陥没事故で、穴に転落したトラック運転手(74)の救助活動が続けられている。発生から1週間が経過したが、陥没の原因と見られる下水道管の破裂で穴の中の水量が増加し、作業はますます難航している。穴の大きさも拡大しており、県によると、当初は幅約10メートル、深さ約5メートルだった穴は2月3日時点で幅約31メートル、深さ10メートル弱に達している。

 「事態が悪化する前に、自衛隊などが救助ヘリを飛ばすことはできなかったのか」。刻々と悪化する現場の状況を報道で見て、こう不思議がる声を複数から聞いた。9カ月前まで米国に赴任していた筆者も、「もしこれが米国で起きていたらヘリを飛ばしていたのではないか」と感じていた。米国ではハリケーンや洪水などの災害が起きると、規模にもよるが、地元の消防や警察に加えて州兵が出動することが多い。

 調べてみると日本にも、災害時に人命救助に当たれるヘリコプターを所有する組織はいくつかあった。例えば、大規模災害時によく登場する陸上自衛隊や海上保安庁の航空部隊だ。ただ、州知事の判断ですぐに出動させられる米国の州兵とは異なり、日本の場合、自衛隊の災害派遣にはまず都道府県の知事などからの要請が必要になる。

 要請がなくても特に緊急を要する場合は自衛隊を派遣することはできる。ただし、総務省行政評価局が発表した2022年の調査リポートによると、「緊急性」「公共性」「非代替性」の3要件を総合的に勘案して判断されるという。

 このうち、「非代替性」については、確かに自衛隊を派遣する前に検討すべき組織がある。都道府県や政令指定都市などが、消防や災害対応などの目的で消防・災害ヘリ77機を保有・運用している(24年4月時点)。中でも埼玉県は、消防庁から無償提供されている1機を含め、計3機を運用している。3機以上を運用している都道府県は、全国でも東京や神奈川、静岡、北海道など9都道県にとどまる。

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