「女性アナのタレント化」の嚆矢
日枝氏は2017年に相談役に退いた後も会長や社長ら役員人事だけでなく、局長人事まで掌握し、会社上層部を日枝チルドレンで固めた。
さらに歴代社長を短期間で交代させ、有力な後継者の誕生を防ぎ、独裁体制を維持した。港社長の在任は22年6月から2年半で終了。前任の金光修氏は1年、その前任の遠藤龍之介氏とさらにその前任の宮内正喜氏は2年である。今回のスキャンダルで港社長のクビを切ることは日枝氏にとって何の抵抗もなかったに違いない。
フジテレビの役員はすべて日枝氏に指名されてきた。彼らはみんな日枝氏の手駒に過ぎない。
日枝体制でテレビ界の盟主に躍り出たフジテレビが「女性アナのタレント化」をテレビ業界全体に押し広げ、大物芸能人に政治経済を含む時事問題を軽いノリで語らせて視聴率を稼ぐバラエティ番組の全盛期を作り上げた。その実働部隊の中心にいたのは港社長や編成局幹部A氏であり、番組に起用されて国民的スターの地位を築いたのが松本氏や中居氏であった。
今回の一連の疑惑は中居氏個人のスキャンダルではなく、日枝氏がフジテレビに君臨した過去30~40年間にテレビ業界に積もりに積もった膿が噴き出したとみるべきである。
11年前の朝日新聞と同じ道をたどる
新聞業界は一足先、朝日新聞社長が辞任に追い込まれた2014年の騒動(福島第一原発事故の調査報道の取り消し、過去の慰安婦報道の取り消し、池上コラムの掲載拒否)を機に業界全体の部数がバケツの底が抜けたように激減し、凋落した。昨年末に最後のドンである読売新聞の渡辺氏が他界したことで、新聞業界はますます影響力を失っていくだろう。
次はテレビ業界の番だ。2024年は選挙の世界でもユーチューブをはじめSNSの影響力が拡大し、テレビはオールドメディアとして社会から見放されつつあることが露呈した。そして24年末から25年にかけてフジテレビ騒動が勃発し、テレビ業界のドンである日枝氏の去就に世論の関心が集中している。
日枝氏は自らを除く経営陣を総入れ替えしてでも自らの影響力を残すつもりかもしれない。しかしその意に反して世論の批判で退場に追い込まれれば、むしろそれを機にダムが決壊したかのように、テレビ業界全体の凋落に拍車がかかるのではないか。
フジテレビをはじめテレビ業界全体は過去の膿を出し切り、信頼を取り戻して再生することができるのか。メディア界の行方を大きく分ける岐路にある。


