内部通報後にパワハラ・誹謗中傷… 勤務先を訴えた女性の勝訴確定 「報復として行われたと推認するのが相当」裁判所が認める
一審判決「告発への報復と推認」
一審のさいたま地裁越谷支部判決ではAさんへの誹謗中傷やパワハラについて、「(Aさんが)不正行為が行われていると告発したり、リハビリ科管理職の方針に従わなかったことに対する報復として行われたと推認するのが相当」と判断。 二審東京高裁判決でも、Aさんが是正を申し入れたことに対する報復であるとの判断を示していた。 代理人の河野冬樹弁護士は判決について「内部通報制度のあり方を考えるうえで、重要な意味を持つのではないか」と指摘。 「病院側は、Aさんだけを取り立てて責めておきながら、そのことについて『必要な処理』だと主張してきました。ですが、裁判になった場合には、『報復として行われた』と判断されることがあるということは、今後、内部通報制度を考えるうえで参考になるのではないでしょうか」(河野弁護士) なお、編集部では獨協医科大学埼玉医療センターにも取材したが「特にコメントはない」とのことだった。
「厚生労働省や関東信越厚生局に取り上げてほしい」
この日、記者から判決確定後の感想を聞かれたAさんは「裁判に勝てたのはすごくうれしいが、まだやり残したことがある」と述べた。 「昨今、『社会保険料が高い』といった話が出ていますが、不正な診療報酬の請求がその原因の一つとなっていることを国民の方に知ってほしいです。 また、私は本件の訴訟後、何度も記者会見を行ってきました。 それは、この問題について、ぜひ厚生労働省や関東信越厚生局に取り上げてほしいという思いがあるからです。 ただ、それがもし全くかなわないのだとしたら、『診療報酬は不正請求をするのが当然』『どんどん不正をしたほうが病院のために良い』という考えにもなってしまいそうです。 病院側は裁判での主張において、私の作成したカルテに問題があったと指摘していました。 ですが、本当にそのことを問題視するのであれば、病院側は私のカルテについて厚労省や厚生局に訴えるべきではないでしょうか。 私はこれまでに、おそらく1億円に近い診療報酬を請求してきました。 万が一、このまま厚労省や厚生局が不正請求についての調査を行わないのであれば、せめて皆さんに対し、税金を無駄に使ってきたことを謝罪させていただきたいです」 Aさんは今後、裁判の内容等をHPで公開することも表明。 「裁判のハードルは高いと思いますが、勝訴できたことで、同様に苦しんでいる人たちにエールを送りたいです。 具体的な診療報酬不正の手口や、裁判での手続きに関する話など、これから内容を準備し、順次公開していきたいです」
弁護士JP編集部