はなしちゃお! 〜性と生の学問〜

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おっぱい×生物学

人類女性は みな巨乳!?

ナレーション:増田明美さん

多くの人が気にしている、おっぱいの大きさ。今回は、生物学の視点から探ってみます。やってきたのは、日本モンキーセンター。専門家に話を聞いてみると…

(日本モンキーセンター学術部長 林美里さん)
「ヒトは、みんな巨乳です。ほかのサルに比べると全然レベルが違うぐらい。」

え、「ヒトはみんな巨乳」!?いったい、どういうこと?

(林さん)
「マルコはあそこですね。」

こちらのチンパンジー。出産経験もある、大人のメスですが…
確かに膨らみは、あまり目立っていません。

実は、チンパンジーのおっぱいが膨らむのは、授乳中だけ。よく見ると、少しふっくらとしているのが分かりますか?授乳期間が終わると、おっぱいは、またしぼむんです。ほかのサルも、おっぱいは膨らんでいないのが当たり前。アフリカ出身のヒヒ、そしてテナガザルも。年頃のメスは、み~んなおっぱいが真っ平ら!

(林さん)
「授乳のときにはおっぱいが、それなりに乳腺が発達して張っているんですけれども、それ以外の時期っていうのは、大人のメスの胸が膨らんでいるということはないです。それは、チンパンジーだけじゃなくて他のサルでも同じです。おっぱいが(常に)膨らんでいるっていうのは、やっぱりヒトらしい特徴かなと思います。」

実は、常におっぱいが膨らんでいるのは、動物の中でヒトだけだと考えられています。

「でも、乳牛だって巨乳じゃないか!」そう思ったあなた!
実は、まだ出産をしていない牛は、こんな感じで、おっぱいは膨らんでいません。乳牛は出産を繰り返し、長い間ミルクを出しているため、常におっぱいが膨らんでいるイメージがあるだけなんです。

ヒトの胸が大きくなったのは “たまたま”!?

ナレーション:増田明美さん
アニメーション:冠木佐和子さん

ではなぜ、ヒトだけが巨乳になったのでしょうか?これまでに様々な研究が積み重ねられてきました。中には、こんな説も。

まだヒトがヒトになる前、4本脚で歩いていたとき。性的な信号として、オスの目にはいるのは、メスのお尻。でも、二足歩行をするようになると…目に入りやすいのは、おっぱいの部分。そのため、お尻の代わりにおっぱいがふくらんだという説です。
しかし、根拠は見つかっておらず、ヒトのおっぱいが膨らんでいる理由は、まだ分かっていません。

そんな中、3年前にある有力な説が登場しました。

教えてくれたのは、長年ヒトや動物の進化について研究してきた琉球大学教授の松本晶子さんです。

(松本さん)
「(その説とは)ヒトが複雑に進化する過程で、副産物としておっぱいが大きくなったという説です。」

進化の副産物とは、いったいどういうことなんでしょうか。
遡ること120万年以上。肉をよく食べるようになった私たちの祖先は、脳が大きくなっていきました。この脳の進化に伴って増えたのが、性ホルモン。女性の場合、皮下脂肪の量を左右する“エストロゲン”が増えました。それが、胸の部分で特に多く働き、おっぱいが膨らんでいきます。こうして、脳が進化する中で生まれた副産物が、大きなおっぱいだというのです。

(松本さん)
「進化が起きたその流れで、たまたま(おっぱいが)大きくなったというふうな考え方になります。必ずしも何かの機能とか役割があって、そこから膨らんだおっぱいが誕生したわけではない可能性があるということです。」

おっぱいの膨らみは、“たまたま”できちゃったものかもしれないんですね。

でも、偶然生まれたおっぱいの大きさに、真剣に悩む人たちも。それは出産を控えたお母さんたち。おっぱいの大きさが、母乳の出方に関係するのではと悩む人も少なくないといいます。実際のところは、どうなんでしょうか。母乳育児について詳しい専門家、国立成育医療研究センターの医師、和田友香さんに聞いてみました。

(取材者)
「大きい人がいっぱい出ているなとか、小さい人はあまり母乳出ていないみたいなことは、感覚としてはどうですか。」

(和田さん)
「ないですね。全然ないです。目が小さくっても、大きい人と同じように見えますし、耳も大きい人小さい人がいますけど、小さい人も聞こえるのと同じで、幾つか論文も昔から出ていて、おっぱいの大きさには、本当に関係しないっていうのが出ていますので、ご安心ください。」

おっぱいの大きさは、一人ひとりの体の個性。そんな風に捉え直してみても、いいのかもしれません。