パナソニックの#はたらくってなんだろう
デジタルでつないだ人、技術、設備 リアルタイムで品質状況を可視化
パナソニックグループの全工場を対象に、業務効率や生産性向上を実現し、優れた実績を上げた製造現場に贈られるモノづくり表彰。品質革新の部には高度なデジタル化によるスマートファクトリー*を導入し、アナログなモノづくりからの脱却を目指したパナソニックAP空調・冷設機器株式会社が選出されました。不良入力システムを活用して工場全体の品質状況を見える化し、作業手順を動画で確認できる作業ナビを独自に開発して製造品質の向上化を実現。また、販売会社の市場品質情報を共有化して多角的な分析を行い、新商品の初期流動管理や市場不具合に迅速に対応しています。お客さまや販売会社からの信頼を高めたスマートファクトリー化、多品種少量生産のデジタル化シフトに尽力した中心メンバーに話を聞きました。
*スマートファクトリー:デジタルデータを活用し生産プロセスの管理や最適化を行うことで、業務プロセスの改善や安定した品質管理を実現できる先進的な工場のこと。
プロフィール
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田島 悟
パナソニックAP空調・冷設機器株式会社 品質管理
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島田 悠斗
パナソニックAP空調・冷設機器株式会社 生産技術
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石井 美実
パナソニックAP空調・冷設機器株式会社 製造
目次
パナソニックAP空調・冷設機器株式会社とは
パナソニックAP空調・冷設機器株式会社(群馬県)は空調機工場とコールドチェーン工場からなるBtoBの中核製造拠点です。今回スマートファクトリーを導入した空調機工場では1台数トン単位の業務用空調機器を生産しており、主力製品は小型店舗用のパッケージエアコン、高効率と環境負荷を低減したガスヒートポンプエアコン(GHP)、ドーム球場や地域冷暖房に使用される吸収式冷凍機です。製品によっては1点物の完全受注生産もあります。
可視化した工程不良に向き合い、安定した品質管理を実現
人依存のモノづくりからスマートファクトリーへ、どのように変革を?
システム導入のため技術者に一からデジタル技術を教わりました。群馬工場の製造環境に合わせてシステムをバージョンアップするにあたり、肝心な点は工程不良が起きた際、より簡易にタッチパネルで入力できる画面設定にあると考えていましたので、製造現場の方に操作性や追加機能の希望などを聞いて回り、約3カ月の試行錯誤を経て、2020年11月群馬工場版不良入力システムが稼働しました。
不良入力システムの導入以降、製造現場ではどのような変化が?
私は溶接工程のラインリーダーで、外国人派遣社員を含め20人ほどの溶接作業を管理しています。私が入力システムの操作を理解できなければ、作業者にも説明できないので、島田さんには「とにかく見やすく、使いやすく」とお願いしました。
また、作業場に全方位カメラを設置したおかげで一連の作業を記録でき、外国籍の社員にも映像を見せながら的確にアドバイスが行え、溶接技術のスキルアップにもつながっています。システム導入当初、溶接不良の件数は多いときで1日20件ほどありましたが、作業者の技術レベルを底上げすることで今では0~1件まで抑えられ、GHP製品の工程不良も前年度から約半減できました。
ベテランの勘とコツをデジタルに昇華 当社ならではのシステムを構築
田島 悟 [品質管理]
アナログからデジタルを駆使したモノづくりへ、いざキックオフしたものの、各部門リーダーは私も含めはじめてのことばかりで、従来の考えからなかなか脱却できないのが実情でした。島田さんをはじめ、デジタル技術に強い社員が主体となり、柔軟な発想力で具体的な改善案を提案してくれたおかげで熟練作業者の勘とコツを盛り込み、当社ならではのスマートファクトリーを形にすることができました。
製造現場にデジタルツールを次々と導入しましたが、作業者への協力、理解を得ることが大前提でした。製造現場側から見れば、不良製品のカメラ撮影やタッチパネルの入力など新たな工程が追加されるため敬遠されてしまうとせっかくのツールを生かし切れません。常々当社の強みは結束力だと思っており、今回のスマートファクトリーも実際に稼働すると、全員で一致して同じ方向へと突き進みました。社員の意識あってこそのシステムだと感じました。
「先生」たちに囲まれ、日々成長できる喜びを実感
島田 悠斗 [生産技術]
全く知見のない分野に飛び込み多少戸惑うこともありましたが、初期段階から立ち上げに携わり、大きなやりがいを得られました。私はシステム設計者と製造現場をつなぐ橋渡し役。両方の知識、課題を理解し、うまく組み合わせないと当工場にふさわしい不良入力システムが構築できないと考えていましたので、システム技術を貪欲に学び、製造現場の方にヒアリングを重ねてきました。システム技術を教えていただいた設計者の方には今も相談に乗ってもらっており、離れていても師匠と弟子のような関係が続いています。
私にとってパナソニックは「学校」のような場所。専門分野を持つ先生のような方々が身近にいるおかげで日々成長できる喜びをかみしめています。ソフトウエア技術を持った後輩が入ってきましたので、今後はシステムの内製化を目指したい。後輩から先生と思ってもらえるように私も日々、知識習得に励みます。
溶接技術者のプライドをかけ、工程不良の原因を徹底解明
石井 美実 [製造]
2020年、溶接工程でリーク*と呼ばれる工程不良が多発していた時期があり、チーム一丸で原因解明にあたりました。あらゆる因子を一つずつつぶしていくため、まず作業者にヒアリングを行いましたが、原因が見つからない。溶接工程だけでなく設備や機械にも問題があるのではと思い、改めて筐体を見直したところ乾燥させる際、銅管の先端に残油があり小さなほこりが付着しているのを発見。機械を解体して定期清掃を行うことでリークの削減を達成しました。
私はこれまでパナソニックグループの技能大会でトップレベルの賞を幾度も獲得しており、今回のリークもプライドをかけて解決にあたりました。溶接の腕を磨くチャンスを与えてくれたのは当時の上司です。まだまだ経験不足でしたが技能大会に挑戦させてもらって以来、常にトップを目指してきました。パナソニックは挑戦する人を後押ししてくれる、だからこそ技術を高め続けて会社に貢献したいです。
*リーク:溶接不良により配管などに生じる微小な空孔のこと。たとえ微小でも配管に空孔があると不具合が発生するため、溶接後にヘリウムガスを充てんさせてガス漏れがないかリーク有無のチェックテストを行う。
受賞テーマ | BtoB大型空調機モノづくりのデジタル化によるスマートファクトリーへの変革 |
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担当 | パナソニックAP空調・冷設機器株式会社 |
*所属・内容等は取材当時(2022年2月)のものです。
2020年にスマートファクトリープロジェクトが立ち上がり、最初に着手したのは先行導入していたパナソニックグループの草津工場(滋賀県)の視察でした。草津工場は、デジタル技術を駆使した工場全体の品質状況の見える化が徹底されていました。組み立てラインで部品の装着漏れなど不良が発生したら、その場で作業者がいつ、誰が、どの箇所に、どのような不良を起こしたか専用タッチパネルで入力し、併せて該当製品を写真撮影してデータを記録。そのデータをもとに工場長を交えた部門責任者が毎日3回の定例会議で工程不良の原因解明にあたっていました。
レベルの高い品質管理を目の当たりし、すぐさま草津工場から承諾を得て入力システムを自社の群馬工場にそのまま導入し、さらに製造現場の声を反映しバージョンアップを図ることにしました。その担当窓口として抜てきしたのが新入社員の島田さんでした。