北海道から東京へ:小林さんの新たな挑戦『日本酒 発酵さぎょう』を訪ねて
先日、江戸川区・平井にある「発酵さぎょう」に行ってきました。 店主は、かつて北海道の小林酒造で専務取締役を務めていた小林精志さん。最後に会ったのは酒蔵だっただろうか…と思いながら写真をめくってみると、2018年に札幌で開催された大吟醸の会でした。
私はちょうど帰省していて、イベントが終わった後ものんびり札幌に滞在していたのですが、その後北海道胆振東部地震に遭い、思いがけず被災してしまいました。そんな記憶も蘇りつつ、最後に小林さんに会ったのは、その札幌のイベントだったのだと改めて思い出しました。
Facebookでは小林さんの投稿を見ていたので、胃がんと闘病していたことも知っていました。「大丈夫だろうか…」と気になりながらも、私からメッセージを送るような関係ではなく、ただ見守ることしかできませんでした。
そんな小林さんが内地に移住し、2024年、平井に「発酵さぎょう」を開店したと知り、昨年からずっと行ってみたいと思っていました。でも、なかなか踏み出せず、「いつか、いつか…」と時が過ぎてしまいました。
今年に入り、「月に一度はずっと行きたかった場所へ行くぞ!」と決めたことで、ようやく意を決して向かいました。慣れない総武線に乗り、勢いで千葉方面へ。
お店の扉を開けると、すでに満席。「すみません…」と声をかけられた、かと思ったら、小林さんが私の顔を見て、ハッとし、「だめよー、心の準備があるんだから、連絡しないと」と言いました。こんなにも会わない期間があったのに、よくわかるものだなぁと
心の準備が必要だったのは、私の方でした。メッセージを送ると緊張で心が押しつぶされそうで、勢いで来るしかなかったのです。でも、満席なら仕方ない、また出直そう…と思った矢先、他のお客さんたちが席を詰めてくれました。その優しさに救われました。
「小林さんが元気そうでよかった」
それだけで胸がいっぱいになりました。
お店では、小林さんが楽しそうに燗をつけ、料理を出してくれました。時折、自らも味見(という名の飲酒)をしながら、店内は和やかな雰囲気に包まれていました。一組のお客さんが帰り、また一人帰り、すると近所の常連の男の子がやってきました。「閉めようと思っていたけど、君なら仕方ないじゃない」と笑顔で迎え入れる小林さん。
その後、三人で飲み、適度に語り、店内の空気もほどよく緩み、日本酒業界の現状や酒離れの話題に花が咲きました。
初めて訪れた「発酵さぎょう」でしたが、まるでずっとここにいたかのような居心地の良さでした。また次は、誰か大切な人を連れて訪れたいと思います。
「発酵さぎょう」と小林さんのこれまで
小林精志さんは、北海道の造り酒屋に生まれ、家業を継ぎ、酒造りに携わっていました。しかし、2019年に一度目の胃がんを発症。その後、2020年10月5日には二度目の胃がんが見つかり、瀕死寸前の状態に。北海道を離れ、妻の実家へと移り、療養の日々を送りました。
2021年には、「人生を再び発酵させる旅をしよう」と決意。横浜へ移住し、徐々に体力を回復させる中で、「発酵食と日本酒を融合させた場を作りたい」という思いが芽生えます。そして2023年、江戸川区で「発酵さぎょう」を開業。日本酒と発酵文化を伝える拠点として本格的に始動しました。
彼は、病気を経験したことで、「すべてを出し切る生き方」を選びました。知識や経験、これまで学んできたことを惜しみなく発信し、訪れる人々に伝えていく。その姿勢が、「発酵さぎょう」には溢れています。
訪れた人たちは日本酒や発酵文化を通じて、何かを感じ、学び、楽しむことができるのです。
私自身、久しぶりに小林さんと再会し、「発酵さぎょう」を体験して、本当に心温まる時間を過ごしました。ここはただの飲食店ではなく、「発酵を通じて人生を豊かにする場」なのだと感じます。日本酒や発酵食に興味がある方は、ぜひ足を運んでみてください。
↓ 小林さんのnoteがユニークなので、ぜひ読んでみてください。たまに前提がなくちょけるので戸惑うと思いますが、とってもオススメ!


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