【解説記事】『恋愛の哲学』(著:戸谷洋志)をわかりやすく解説!
2025.02.04
【解説記事】『恋愛の哲学』(著:戸谷洋志)をわかりやすく解説!
2025.02.04
\この記事を監修するのは…/
Communication Lab 編集長
Shoya Tsuda
1. 著者・戸谷洋志とは
戸谷洋志(とや・ひろし)
- 哲学者。社会哲学や宗教哲学、文化論など広範な領域で活躍。
- 1988年生まれ。東京大学大学院で哲学を学び、国立大学教員などを務めた後、著書や評論活動を精力的に続けている。
- 『宗教と資本主義は相容れるか』や『崇高の哲学』など社会的・宗教的テーマを含む多彩な執筆活動を行う。
戸谷氏がこれまで提示してきたテーマは、「近代社会における人間のあり方」「宗教や倫理をめぐる問題」など多岐にわたります。『恋愛の哲学』でも、恋愛を個人的感情やロマンティックな幻想として捉えるのではなく、「社会や他者との関係、自己の存在意義をどう問い直すか」という視点が色濃く打ち出されています。
2. 狂うのが、愛。憎むのが、恋。
2-1. 執筆の動機と意義
著者は序章で、「今日、恋愛という現象がどれだけ社会・文化のなかで消費されているか」を指摘しつつも、それにもかかわらず恋愛に対する真剣な哲学的考察は多くないと述べています。
恋愛をいきなり「当たり前のもの」としてロマンチックに謳うか、あるいは消費文化としての側面から一面的に論じるか、といった論調に対して、
- 恋愛の矛盾や葛藤
- 他者への愛情と自己保存の欲求との絡み合い
- 社会・歴史的に変容してきた恋愛観
などを丁寧に分析し、「恋愛とは何か」を哲学的・社会的観点から問い直すことが本書の大きな目的です。
2-2. 近代社会と恋愛
近代社会においては、「個人の自由」や「自己決定」が尊重される一方で、愛や恋愛にも自己選択の責任や合意が求められます。しかし、恋愛は必ずしも理性的にコントロールできるものではなく、時に欲望や激情に翻弄されることがある。
この近代的視点から見たとき、恋愛は自由であるはずなのに矛盾や苦悩を伴う現象として浮かび上がります。著者は、そこに「哲学的に考える意義」があるとし、古今東西の思想や文学作品も参照しつつ、恋愛を多角的に解析していきます。
-1. 恋愛概念の歴史的変遷
3-1. 恋愛概念の歴史的変遷
本書では、恋愛という概念が古代・中世・近代でどのように変容してきたかが簡潔に整理されています。例えば、
- 古代ギリシア・ローマ: プラトニック・ラブやエロース概念、肉体的快楽との結びつき
- 中世ヨーロッパ: 宗教的倫理や婚姻制度との関係性
- 近代以降: 個人主義の台頭とロマンティック・ラブの理想化、資本主義社会における恋愛の消費的側面
こうした歴史的な俯瞰を通じて、恋愛がいつの時代でも同じだったわけではないことを確認します。つまり、恋愛は社会的制度や文化的背景に左右されるという視点が示されるのです。
3-2. 愛と欲望、社会と個人の葛藤
「愛する」という行為には、他者に対する無償の好意や献身を含む一方で、相手を所有したい、あるいは相手の愛情を独占したいという欲望も内在します。これは時に「嫉妬」「束縛」「依存」の問題を引き起こし、恋愛を苦しいものに変えてしまう。
著者はこうした葛藤を哲学的に分析し、現代社会において恋愛が「自己実現」や「アイデンティティの確立」と関係することも明らかにします。
- 自己愛と他者愛のバランス
恋愛において、自己を大事にしつつも、相手を同様に大切にできるか。エーリッヒ・フロム『愛するということ』などの議論にも触れながら、愛の相互性を検討します。
- 他者性と承認
相手は自分の思い通りにならない「他者」ですが、その相手から認められたい欲求(承認欲求)が恋愛を駆り立てる一方、依存的でもあります。ここに生まれる矛盾が、恋愛をエネルギッシュにも破滅的にもする要因として描かれます。
3-3. 結婚制度との関係
現代の日本社会に限らず、恋愛と結婚が強く結びついて語られるケースが多い。しかし、歴史的・文化的には必ずしも「恋愛→結婚」の図式が絶対ではなかったことも知る必要があります。本書では、
- 近代西洋における恋愛結婚の成立
- 日本社会の近代化と恋愛観の変化
- 自由恋愛主義の理想と、実際の社会的制約
といった観点が紹介され、結婚制度に組み込まれる恋愛の有り様や葛藤も取り上げられています。
3-4. 他者理解と倫理の問題
本書の重要なポイントとして、恋愛は「他者」を理解しようとする行為だが、完全には理解できない“他者性”が常に残る、という視点があります。
何をもって他者を「理解」するのか、または相手を本当に尊重するとはどういうことか、といった倫理的問題が、恋愛における裏テーマとして深堀りされます。アドラー心理学や現代哲学でいう「課題の分離」「承認欲求」などの観点も、著者独自のフィルターを通じて検討されています。
4. 現代社会における恋愛のゆらぎ
著者は、現代日本における恋愛の諸問題—たとえば、
- 恋愛至上主義と一方での“恋愛疲れ”
- 出会い系やマッチングアプリの普及、SNSによるコミュニケーションの変化
- 非婚化・晩婚化と恋愛観の変容
などを例示しながら、「恋愛」がもはや単なるプライベートな感情ではなく、社会や経済システムとも相互に影響し合っていることを指摘しています。
これを踏まえて、恋愛を個人の自由な行為だと捉えるだけでなく、社会的文脈と自己の選択の狭間で、いかに“本来的な愛”を実践できるかが問われていると説きます。
5. 読むことで得られるもの
5-1. 恋愛をめぐる“当たり前”を疑う視点
本書を読むことで、恋愛が当然に思っていた価値観や行動様式が、実は歴史的・文化的な文脈の産物であることに気づかされます。「恋愛=自由恋愛」「恋愛=結婚へ至る道」などの前提を一旦保留し、改めて考え直す余地があるのです。
5-2. 他者との関係性と自己の在り方
恋愛を通じて私たちは他者と深く関わり合うが、その関係性の中には常に「理解しきれない他者性」「承認を求める自分の欲望」などが複雑に入り込んでいます。読後、「自分はなぜ恋愛を必要とするのか」「相手の何を求め、何を尊重しているのか」を自問するきっかけになるでしょう。
5-3. 幸福や自由の再定義
恋愛は、幸福感をもたらすと同時に、辛さや苦悩も抱え込ませる。戸谷氏の議論を踏まえれば、これらの感情は社会的・制度的な背景と無縁ではありません。本書を通じて、**恋愛における自由・自己決定・幸福といった概念をどう再定義できるか**を考えることは、現代を生きる私たちにとって意義深い課題でしょう。
6. まとめ:哲学的に恋愛を問い直す意義
戸谷洋志著『恋愛の哲学』は、恋愛を個人の感情やロマンティックな物語としてのみ捉えるのではなく、社会・歴史・哲学・倫理といった多角的な視点から分析し、その本質を浮かび上がらせようとする意欲作です。具体的には、
1. 歴史的・社会的背景における恋愛観の変化
2. 近代社会で矛盾を孕む自由恋愛の現実
3. 他者理解と承認欲求の絡み合い
4. 個人と社会が相互に影響し合う中での愛の行方
などを丁寧に検証しながら、恋愛に内在する複雑さと希望を描き出しています。
その結果、「恋愛=いいもの」「恋愛=しんどいもの」といった単純な二元論では語れない、多面的な恋愛像が浮かび上がります。読者は、自分自身の恋愛観を見つめ直し、その背景にある社会構造や歴史的文脈を知ることで、これまで気づかなかった思考のヒントを得られるはずです。
参考
『恋愛の哲学』(著:戸谷洋志)(晶文社)
"哲学は「恋愛」を語ることから始まった。
クズへの愛はなぜ成立するのか?
なぜ私は愛されたいのか?
永遠の愛はどこまで続くのか?
――すべて哲学が答えます。
現代に流れる「ロマンティック・ラブ」の幻想を解体する驚愕の哲学入門!!!"
(晶文社HPより)
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