「研究者になりたい人いますか?」コロナで実績挙げた有名ラボの科学者、出前授業で問いかける思い #災害に備える
コロナ研究が社会の役に立った実感 若手研究者のモチベーションに
研究者を目指す人はいま、どんな状況に置かれているのか。コロナ下、佐藤研で研究した若手研究者に話を聞いた。 彼は大学の頃より研究者志向で、免疫の奥深さに魅せられ、京都大学大学院に進み、生命科学で博士号を取得。ヒト免疫不全ウイルスの研究をしていたが、実際の患者を知ったほうが免疫についてより深く知ることができ、研究に繋げられると考え、神戸大学医学部に入学し、いま5年生だ。将来は、医師と研究者を並行して行える道を探るつもりだ。医学部生のほとんどは、大学を卒業して初期研修を終えると、3〜6年間の専門医研修に入るが、彼はその道には進まず、基礎研究に戻ることも考えているという。「医師は専門医をとるまでに多くの時間と労力がかかるため、学生のうちから研究者を志す同級生は少ない」という。 研究者の厳しさは、大学院や佐藤研で実感した。 「論文などで成果を比較されてしまう厳しい世界です。その結果は大学や研究機関での採用にも大きく関わってきます。論文を通すことだけでなく、科学研究費などの研究資金を獲得する必要もあり、自分の研究の必要性をアピールできる力も必要です。研究者を目指すことは大変な道のりですが、コロナが蔓延する真っただ中で、自分が関わった研究が世の中の役に立った、必要とされたという実感を得られたのは、研究を続けるモチベーションにもつながっています」
冒頭の第一での出前授業に話を戻そう。 実はこの授業、佐藤さんの発案で始まった。米大リーグ・ドジャースの大谷翔平選手が、野球に興味を持つ子どもを増やしたいと、全国の小学校にグローブを贈ったのをヒントに、佐藤さんは、全国のすべての高校4979校に、G2P-Japanの取り組みを紹介した自著を贈呈した。それを読んだ高校生が、研究者に興味を持ってくれたら、という願いを込めて。そして、本に「出前授業を受け付ける」というメッセージを同封した。2024年度は20校に行く予定で、その1校が冒頭の水戸第一だった。御厩(みまや)祐司校長は、出前授業を依頼した理由をこう語る。 「中高生にとっては、自分の興味関心を突き詰めて、好奇心に従って研究し、それを職業にしている人がいるんだということ、そもそもそれ自体が驚きではないか。その驚きは、オンラインでは伝わらない。学校に来ていただいて、生徒たちに直接伝える、リアルだからこそ、魂は震えると思うんです。それによって、生徒の未来が変わるかもしれません」 出前授業の終盤、伊東さんはこう伝えた。 「この中からウイルスの研究に携わる人が一人でも出てくれたら嬉しいです」 授業が50分を過ぎたとき、質問タイムに移った。真っ先に挙がったのが、研究者になるにはどの学部に進むのがいいか、という質問だ。伊東さんは「研究チームはダイバーシティ(多様性)が重要で、違うキャリアパスの研究者がいるのが理想だ」と答えた。佐藤研であれば、伊東さんのようにデータサイエンティストになった者、理学部、農学部などの出身者、獣医師、医師、東京藝術大学で音楽の数理分析を担当していた研究者など、いろいろな得意分野をもったユニークな研究者が集まっている。こうした「チームサイエンス」が「G2P-Japan」でも大きな研究成果をもたらした。 最後に中学3年生の西田瑚春さんが謝辞を述べた。 「私は医者志望で、臨床をやりたいと思っていました。今日のお話を聞いて、(臨床の)現場に関わらなくても(社会に)大きな貢献ができるのだと、研究にも興味が湧きました」