「研究者になりたい人いますか?」コロナで実績挙げた有名ラボの科学者、出前授業で問いかける思い #災害に備える
「研究はめちゃくちゃおもしろい」 でも待遇の悪さがなり手不足に拍車
ポストドクター(ポスドク、博士研究者)のなかでも、医学や公衆衛生学などの保健分野の研究者として大学・研究機関に雇用されている人数を調べると、2021年度は、2018年度より16%減り、2209人である(文部科学省と科学技術・学術政策研究所調べ)。 佐藤さんは「研究はめちゃくちゃ面白い」と言う。特にそれを強く実感したのは、デルタ株関連の論文を「ネイチャー」に再投稿するために修正作業をしていたときである。関わった研究者は、G2P-Japanのメンバーたち。全国の大学に散らばっているので、やりとりはチャットツールのSlack。テキストベースだが、不思議と一致団結できている感覚があり、「絶対に論文を通す!」「なんでもやります!」という熱情がビンビン伝わってきた。データを取りまとめる役割の佐藤さんは、ホテルに缶詰めになって論文を書くのだが、徹夜して再投稿したとき、なぜか涙があふれた。「たぶん達成感、やってよかったという充実感でしょうね」と振り返る。 ここ数年、国際的な学会に招かれることが増えた。多くの研究者から声をかけられ、基調講演をすれば大きな拍手で迎えられる。一緒に共同研究をしようという声もたくさんあった。 「日本の研究力は、フランスのパスツール研究所やアメリカのロックフェラー研究所と比べても決して引けを取らないと思っている。G2P-Japanはいろんな大学の研究者と連携して、日本の研究者たちのレベルの高さを世界に示すことができました」 それなのに、なぜなり手が減っているのか。 佐藤さんは明快に「待遇だ」と答える。日本の大学教授と、アメリカにいるポスドク1年目の報酬がほぼ同じ。教授同士で比べたら3〜4倍の差がある。 大学で教員を務めたこともある研究者は、国立大学の法人化後の運営交付金の削減も、研究の道に進む学生の数が減った要因となったのではないか、と見る。企業も博士よりも修士を多く採るようになり、その動きが研究者不足に拍車をかけた。 日本の感染症対策の中核を担う国立感染症研究所(以下、感染研)では、コロナ禍を経て、研究者を中心に300人増員が認められた。副所長の俣野哲朗さんはこう話す。 「サイエンスに関して、何かの役に立つという視点は大切ですが、一方で、すぐに役に立たない分野も大切にするという考え方も重要です。イギリスやフランスでは、『サイエンスをやって何の役に立つか』などという観点だけが重要視されているわけでない。なぜかといえば、科学に対するリスペクトがあるからです。そういう文化があると、科学的に興味深いことを研究しようという人たちが増えやすい。クラゲの研究でノーベル賞を取った下村脩さんも、細胞や病気のメカニズムを探る技術に応用できると考えて実験に取り組んだわけではなかったと思うんです。役に立つかどうかという基準は大切だけど、やはりバランスですよね」 基礎研究はしばしば畑の土壌に例えられる。痩せたらその土壌からは画期的な研究は育たない。感染研では引き続き研究職を募集中だ。