「研究者になりたい人いますか?」コロナで実績挙げた有名ラボの科学者、出前授業で問いかける思い #災害に備える
新型コロナウイルスの集団感染が発生したクルーズ船が横浜港に入港してから5年。その後拡大した新型コロナの流行は、大規模感染症対策の重要性を浮き彫りにした。この冬にも新型コロナ、インフルエンザ、マイコプラズマ肺炎の3つの感染症が同時流行する「トリプルデミック」の懸念が取り沙汰されたばかりだ。ところが、新しい感染症の原因ウイルスを突きとめたり、発症のメカニズムを研究したりする基礎医学を担う研究者は不足している。実際に研究に携わる人はこうした現状をどう考えているのか。次代を担うべき中高生たちの研究者に対するイメージは。コロナ禍で実績を残した研究チームの取り組みを取材した。(取材・文:西所正道/Yahoo!ニュース オリジナル 特集編集部)
留学生が増えるラボのメンバー 日本の若者に研究者は不人気か
「将来、研究者になりたい人、いますか?」 東京大学医科学研究所(以下、医科研)准教授・伊東潤平さんは、高校1年生と中学3年生の約40人にそう問いかけた。ここは茨城県立水戸第一高等学校・附属中学校(以下、水戸第一)。建築家の妹島和世さんや作家の恩田陸さんなどが輩出した名門校である。高校生の男子生徒1人が手を上げたのを見つけると、伊東さんは少し表情を和らげた。 伊東さんは昨年11月21日、同校に出前授業に来ていた。新型コロナが蔓延するなか、ビッグデータを解析してどの変異株が流行するかを予測した経験を紹介。ウイルスの仕組みを解説しつつ、どのようにデータを分析したかをわかりやすく説明した。 伊東さんがここで授業をするのは理由がある。それは中高生たちに研究者への興味を持ってもらうためである。背景には、基礎研究に携わる若手研究者の不足という現状がある。
出前授業に先立って、伊東さんの上司にあたる医科研システムウイルス学分野教授・佐藤佳さんを訪ねると、都内にある自身のラボを案内してくれた。 「2022年、私が教授になった年、うちのラボには13人のメンバーがいて、全員が日本人でした。ところが翌年(2023年)、メンバーをさらに増員したら、海外からの留学生が15人くらい増えました。中国、インドネシア、タイなどのアジア諸国を中心に、アメリカ、ギリシャからも来ています」 型にとらわれない佐藤さんのスタイルゆえか、ラボには自由で明るい空気が漂う。佐藤さんが言葉を継ぐ。 「ラボは外国人が多くても運営できるんです、みんな優秀だし、日本語がしゃべれる留学生もいるし、なによりやる気があるので。外国人が増えると、もとからいた日本の学生が萎縮するかなと心配していたけど、まったく問題なかったですね。だからラボとしては、いいと言えばいいんですけどね」