12月14日:猫の王国
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ケット・シーは一言で言うならば二足歩行で喋る猫だ。長靴をはいた猫、って言えばあるいは幼稚園児にも理解できるかもしれない。
少なくとも俺が遭遇したケット・シーは人間のNPCと大差ないくらいの知性と、王権や騎士の誇りを理解している感じだった。
とはいえ猫は猫、そして忘れがちなのだが………俺が人里にあんまり行きたくない理由は、人見知りだからとかコミュ障だからではなく。
「まぁ、一般市民的な奴らがレベル100オーバーしてるとは考えづらく……」
要するに、刻傷の効果で軽いパニックが発生していた。
「おいおい勘弁してくれよサンラク、折角ネコミミまでつけてこう……友愛を示してるってのによぉ」
ブロマイド一枚。
「おうおうおう! どいつもこいつも怯えすぎじゃねぇのかぁ!? そりゃあ失礼ってもんだぜ!! なぁ我が親友よ!!」
「そうだな親友」
金で信用は保証できるが、信頼はされないと思うよ俺は。
それはそれとして……ヴァッシュの話じゃなんか会議? サミット? 的なものが開かれると言っていたが……成る程、
「あっちで隠れてるのは犬頭だね」
「ゴブリン……とはいえ、NPC判定かな?」
猫の王国キャッツェリア。俺達がたどり着いたそこには、ケット・シー以外にも多数の種族……それも新大陸の亜人種にも該当しないモンスターに属するような種族が混在していた。
まぁどいつもこいつも突然現れたザ・物騒・オオカミオーラを放つ俺を最大に警戒している。まぁモンスターを見たら基本人間って攻撃するから刻傷が無くても警戒はされたのかもしれないが、とりあえずなんもかんもリュカオーンが悪い。おのれリュカオーン、定期的にヘイトを育てておかないといざ再戦した時に良質なテンションを生み出せないからな……憎悪、大事。
「ねぇねぇ」
「とりあえずヴォーパルバニーがいれば話は早いんだけど」
「思っていたよりも人間スケールな街並みだね、てっきり二足歩行の猫サイズの建物が並んでると思ってたのに」
「一晩あれば全部見て回れますね、徹夜するまでもない」
「ねぇサンラクくぅん」
……………。
「なんだよ」
「現実見ようよ」
「お前に正論言われると死ぬほど腹立つな」
「DV特有の殴った後に縋り付くムーブしてくれるならDV妻役もやぶさかじゃないねぇ!!」
「根性焼き」
「あぁん!!」
だがなるほど、腹が立つということはディプスロの言葉が正論であることの証明だ。まぁ、うん……ここに来るちょっと前からもう見えていたけどなんか触れたら負けみたいな雰囲気になっていたから……くっ、現実直視するかぁ。いやゲームだけど。
「山羊だな」
「山羊だろうな」
「いや鹿でしょ」
「鹿のツノは巻かないのでは?」
───モ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛ォ゛……………
「「「「牛かよ!!」」」」
例えばトレイノル・センチピード。例えばフォルトレス・ガルガンチュラ。素材のフレーバーテキスト曰く、奴らですら新大陸の環境から逃走した種族とかいう「は?」としか言いようのない一文があったが……成る程、フレーバーテキストは説明をぼかす事はあっても嘘はつかないって事かよ。
フォルトレスの体高よりもなお高く、トレイノルの全長よりもなお長い。冗談みたいな大きさの毛むくじゃらの牛が、その体躯に見合うだけの咆哮を……
───………ップェ、
「マジかよ今のゲップ?」
若干建物も揺れてたけど、ゲップでこの規模なら本気で吠えたらここら一帯吹き飛ぶんじゃねーか?
ここ、キャッツェリアはどうも山が物理的に真っ二つになって出来た峡谷の底にある猫の国……あの超超超巨大牛が軽く身動きしたらそれだけで左右の割れ山が崩れ落ちそうだ。ていうかなんでこの牛は峡谷に頭をすっぽり差し込んでいるんだ?
「小型モンスターの集まりとかそういうのなんだよね? あの牛を飼い慣らせるような超巨大捕食者種族の避暑地とかではなく」
「そのはずだが……」
「うむ! 顔面を燃え上がらせたおぞましき怪物、と聞いた時は本当にそういった化生の類かと不安になったがやはり貴公であったか!!」
と、超巨大牛に気を取られていた俺たちにかけられる声。振り向けば何も……いや違う、足元だ。
「おー、アラミースか」
「久方ぶり、という程ではないがまた一段と……そう! 珍妙になられたな貴公!」
そうだね、顔面燃えてるもんね。
どうも他の猫の通報でやってきたらしいアラミースを先頭に置いた猫の騎士団とでもいうべき毛玉の集団。探しに行く手間が省けた、重要なイベントを発生させるコツは権力者に取り入ることだって鉛筆も言ってた。
「簡単に言うとヴァッシュの兄貴からここに来るように言われてんだけど」
「話は既に聞き及んでいる。連れの方々共々ご案内しよう!」
話が早くて助かるぜ。
「ねぇねぇサンラクくん」
「なんだよ、刀取り出して「ネコとタチ!」とかしょーもねぇギャグ言ったらぶっ飛ばすからな」
「もはや以心伝心だよサンラクくぅん!! あひぃん首筋に跡が残っちゃあう!!」
根性焼きもあんまり効果がなくなってきたな……何か新しい手段が欲しい。毒とか? いや下手に体力削れて死なれても困るしな……PK判定的に。
「なぁ、サンラク。結局ここで何すんだよ」
「良い質問だサバイバアル。実はな……俺もよくわかってない」
「オイ」