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午後のロードショー「氷の接吻」


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公開 1999年
監督 ステファン・エリオット
公開当時 ユアン・マクレガー28歳 アシュレイ・ジャッド27歳

この映画は初めて見ましたが、想像とはまるで違う作品でした。
逃げる女と追う男、倒錯した愛のロードムービーと言えますが、どこか切なく透明感があり大人のファンタジーですね。

タイトルと主演二人のイメージで、「氷の微笑」のようなサスペンスだと思っていたのですが、良い意味で期待を裏切るものでした。
殺人鬼の美女に一目惚れしてしまった男がストーカーと化し、ロードムービーのように世界各国を移動しながら彼女を追いかけるというストーリーです。

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英国諜報局員アイは妻と娘に去られて以来、精神のバランスを崩し、そのため度々自分の娘の幻影を見るようになっている。
ある調査の途中、監視対象が謎の女に殺害されるのを目撃してしまったアイは、娘の幻影からの示唆を受け、謎の女を追い始める。
アイは謎の女に強く惹かれていた。

全体的に静かなトーンで盛り上がりはさほどありませんが、緊張感が途切れず最後まで真剣に見てしまいました。

スノードームの中を覗き込むような画面から場面転換する映像や、随所に印象に残るセリフが散りばめられており、含蓄のある大人の映画ですね。

諜報部員アイは、妻と娘に捨てられたトラウマから、娘の幻影に向かって話しかける癖があり、同僚からもその奇妙な習性を窘められていた。
アイはこんなに精神不安定なのに、よく諜報部員が務まっていますね。

アイがターゲットを監視している最中、女は依頼人の息子を殺害する。
「メリークリスマス。パパ…」と何故か泣きじゃくる女。

二人は「娘を失った父親」と「父に捨てられた娘」であり、お互い深いトラウマを抱える身という点で共通点があるものの、次々と衝動的に殺人を犯すメンヘラ女をここまで惚れて追いかけるアイもやはり正常ではありませんね。

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ホテルで女の隣の部屋をとり、壁越しに入浴中の女の気配を感じるアイ。
アイの倒錯した恋愛感情が露になるシーンと言えますが、バックに流れるジャズと映像の世界観がマッチし、ロマンチックでありながらどこか切ない空気感を醸し出しています。

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ジョアナには前科があり、少女期を更生院で過ごしていた。

「あなたをずっと付けている男がいるわよ。」
ホテルのフロント係の女から告げられ、ジョアナは見知らぬ男の存在を意識し始める。

ジョアナは空港のロビーで盲目の大金持ちレナードに接近する。
「札は種類別に折り方を変えている。だから間違える事は無い」
盲目のレナードの手を取り、ジョアナはレナードと共にサンフランシスコに向かう。
アイもそれを追う。

レナードは女に求婚する。
娘の幻影がアイに「彼女が結婚するのを止めなくていいの?」と囁く。
どうやら娘のルーシーの幻影は、彼自身の心の声のようですね。

アイは嫉妬心からレナードの乗る車を銃撃し、結果レナードは事故死してしまう。

何人もの男を手にかけてきたジョアナですが、父親への妄執から親子ほど年の離れたレナードの事は本気で愛していたようですね。

ジョアナはレナードとの子供を授かっていたが、事故が原因で流産してしまう。

ジョアナが運ばれた病院で、眠る彼女にそっと付き添い、彼女の指に指輪をはめるアイ。
目覚めて指輪に気付いたジョアナは「私には守護天使がいる」と感じるようになる。

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アイは工作員の任を解かれても、ジョアナを追い続ける。
度重なる殺人の容疑者として指名手配されていたジョアナは、街中で警察に逮捕されそうになるも、アイの手助けで逃亡する。

ペンシルバニア、ニューヨーク、サンフランシスコ、コロラド、シカゴと、逃げる女が最後にたどり着いたのはアラスカの食堂「地の果て」。
身を隠すためウエイトレスとして働くジョアナに、客として現れたアイは初めて声を掛ける。
「私には守護天使がいるの。今その天使に一番会いたい」
二人は軽い会話を交わすのみで、決してそれ以上親密になることは無いのです。
こういう部分も、ありがちなハリウッド映画とは違いますね。

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アラスカまで追ってきた警察官から逃れるため、アイと共に逃げる女。
アイの行動に不信感を持った女は、車で逃げるも雪でスリップし車は横転する。
追いかけてきたアイに助け出されながら
「あなたの事、前から知ってたわ…」
「あなたに愛を」
アイの胸で息を引き取る女。

映画はここで終わっていますが、再び愛する人を失ったアイは悲しみを抱えてどう生きるのか、娘の時と同じようにジョアナの幻影と共に生きることになるのでしょうか。

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私が初めてユアン・マクレガーの存在を知ったのは、1996年の「トレインスポッティング」でした。
この頃の彼は「スター・ウォーズ」や「ムーラン・ルージュ」など次々と大作に出演し、俳優としての黄金期と言えますね。
超絶イケメンにもかかわらず、映画の中では皆彼の事を「良くいるタイプの男よ。セールスマン風の」と言うのです。
アイは工作員であり目立つことは許されないため、特にイケメンでもない普通の男という設定なのでしょうね。
今作では少年のような繊細さと純粋さを持ちながら、工作員という過酷な仕事に就くアンバランスさから崩壊していく青年を魅力的に演じていました。
私は今まで彼にさほど興味は無かったのですが、改めて魅力のある俳優だなと思いました。

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アシュレイ・ジャッド演じるジョアナの誰も信用していない冷たい目が印象的です。
彼女は眼の下のくっきりしたクマで年齢より老けて見えるものの、過酷な人生で疲れが滲んだジョアナの役が合っています。

トラウマを抱え、感情を無くした彼女が「守護天使」の存在を信じ心の拠り所とする心の動きを繊細に演じています。
ジョアナは「かつらの販売員」を自称している事から髪型や服装が七変化し、彼女の美しさを余すところなく魅せています。
日本でリメイクするなら、若い頃の大竹しのぶに演じて欲しいものです。

なぜジョアナが殺人を犯すようになったのか、なぜアイがそこまで彼女に惹かれたのか説明不足の点も多々あるのですが、多くを語らず行間を見る者に委ねる演出ですね。

起承転結のはっきりしているサスペンスが好きな人には向かない作品といえますが、繊細で透明感があります。

ネットの批評などでは散々酷評されていますが、私はこの映画の世界観や雰囲気が嫌いではありません。
占星術や煙草など、随所にメタファーが散りばめられていて深読みさせる要素もあり、何度も見たくなる作品です。
ハリウッド的なわかりやすい構成ではなく、フランス映画的であり、どこか松本清張の小説の雰囲気も感じてしまいます。

今日も無事に家に帰って午後ローを見れていることに感謝😌です。

総合評価☆☆☆☆☆
ストーリー★★★★
流し見許容度★★
午後ロー親和性★★★

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