何十年も前、僕に対して「漫画家になんてなれねぇよ」と嗤った人がいた。
多くの漫画家志望者が経験する「呪い」の言葉だ。
僕は還暦近くなった今でも、その言葉を吐いた時の表情を片時も忘れたことはない。
僕は26歳の時に新人漫画賞を受賞し賞金100万円を得た。
証拠の掲載誌を、僕を笑った人に突き付けて報告をした。その人は苦虫を嚙み潰したような顔になった。
僕が受けた「呪い」から解放された瞬間だった。
以後その人の汚い口から「呪い」の言葉は吐かれなくなった。
その人は偉そうに人のことを嗤うが自己の行動が共わない性分だった。
夢を持つ人間を嗤うことで自分の優位性を保っていた。
僕が夢を実現したことでその人のアイデンティテイが崩壊したようだ。
その後その人は夢に対して何の一歩も踏み出せていない。
失敗したら僕に嗤われると思っている。
僕が夢を実現したことがその人が抱える「呪い」になっている。
何十年経った今でも、その人はまだ自己の望む何者にもなれていない。
そして夢を果たせないまま年老いていく。
その人は今でも何も果たせず「呪い」に縛られて悶絶しているだろう。
こちらが何も気にせず甘いパフェを食べている今でさえも。
多くの漫画家志望者へ。
僕はその人を見返すために漫画を描いている訳ではないが、長年の「呪い」を払拭するには、やはり結果を出すしかない。
それが「呪い」をかけた人に対する最大の「呪い返し」だ。