表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の嫁になりたくて ( ̄∇ ̄*)ゞ  作者: 千海
23 小都市リセルティア
241/267

23−8



『大賢者の杖を手に入れた』


 西通りの【杖】の店にて、どこにも黒い羽根の要素が確認できなかった事、それを報告した後に、不意に肩の小鳥さんより深良い声が零された。


「おぉ!やりましたね!あ〜、良かったです」


 ほっとしました…と返答すれば、「だが…」と先方は言いよどみ。


『どうやら、店で言い当てられると、代替品が渡されるようだ。俺たちのルートだと、オルティオが貰った“黒い羽根”だな』


 あ、そういう仕組みでしたか。

 確かに、道具を買うお金とか、荷運びとかどうするのかな?って。思っていたんですよね…と。


「了解しました。そのつもりで他の道具を当たります!」

『こちらもそうしよう』


 そんな流れで通信終了。

 丁度、目と鼻の先に露店のアクセサリーショップが見えたので、黒い羽根が飾ってないか、念のため視線を向ければ。


「いらっしゃいませ〜」


 な笑顔輝く緑髪のお姉さん、どう考えてもアンバランスな羽根飾りを頭に乗せて。


「あの〜、フェスタの参加者なのですが。もしかして、青金石の首飾り、置いてないですか?」


 と。

 そろそろっと近づいて、私は彼女に問うていた。

 一応、大賢者ルートです、とも伝えてみれば、どうやら合点がいったらしくて。


「では、どちらになさいます?」


 と、お姉さんは少しだけ、意地の悪い笑みを浮かべてみせて、2つの青い宝石の付く首飾りを箱から出した。

 思わず、えぇっ( ̄□ ̄;)!!となった私だが、そうなるのも仕方ない。

 見せて貰った2つとも、男の人も着用可、なシンプルなデザインで。

 どちらも割と大振りで、美しい青色だ。

 違い、といえば紐の部分と、周りに少しだけ付いた銀の装飾品くらい。装飾品と語ってみても、シルバーリングが三つほど左右に通してあるかどうかで、大差ないものである。

 ほとほと困ってしまって、一度顔を上げ天を仰げば。


「くすくす。貴女、可愛いわねぇ」


 頑張ってね、と彼女は語り。

 えっと…うん、あの、私って、中身がだいぶアレだけど…。が、頑張りますね〜…と。こちらは若干、苦笑を返し。


——えぇと…えぇと、アリアスさんの首飾りって…他に何て言われてたっけ?


 記憶の限りを絞り出す。

 いや、でも、他にって…。と、ぐるっと一周した頃に。つんつん、と頬を突かれ、思い出した小鳥さん。

 ほんのりと光を纏う、幸せの青い鳥…。


 空と海とを通わせる【青金石の首飾り】には。

 幸運、を運ぶ魔法が込められていたという。 


 ラピスラズリは前の世界でも“幸運”と言われていたような気がする…し。

 そしてこの世の彼の信奉者(シンパ)は、それに“空と海”との象徴を当てはめた。

 何で“空と海”だったのか。単純に青いから?

 でもきっと、ブルーサファイアな透明系の宝石などでは、表現されないだろう何かが…。


 ・

 ・

 ・

 ・

 ・


「あ」


 あっ!あるじゃない!!


「こっち!こっちを頂きたいです!!」


 指差したのは、向かって右の方。

 同じラピスラズリでも、こちらの方の石の模様は、下方に白い不純物、上方に黄鉄鉱の粒。白い模様は波のよう、黄鉄鉱は夜空の星を思わせる配置であった。混じり物は似ているけれど、石の表面付近に浮かぶ明らかな模様、配色を見れば。今は天と地、月とスッポン、よく用いられる比喩表現を引っ張ってくるほどだ。

 緑の髪に黒い羽根の飾りを挿した店員さんは、「正解よ!」と笑顔で返し、オルティオくんが貰ったような黒い羽根を取り出した。


「ありがとうございます!」


 ぺこっと頭を下げて、それを受けとろうと手を伸ばした時。


「あっ」

「あらっ」


 タイミングよく春一番が吹き付けて、一瞬で高い空へと飛んで行ってしまう羽根。呆然とそれを見上げる私と店員さんは、お互い「あぁー…」な苦い顔を浮かべて笑い。


「大丈夫よ、予備があるから」


 と。

 今度はしっかり掴んで受け取り、そのまま鞄へ直行させた。

 入った事を確認したら、お店から少し離れて入手の連絡。【青金石の首飾り】を手に入れましたよ!と。丁度、あちらも黒羽根の飾りの付いた魔石のお店を発見したので、これから入る所であったらしい。

 これで残りは、【金の香炉】と【銀の方位磁石】となるが…。

 物品が物品だけに、これは…街の奥。専門店だろうか、と。

 一応、杖のお店を経由し、黒羽根を受け取ったアクセサリーショップの位置は、西門近くにはなるが。早足で門まで行って、そこからどうするか。


——仕方ない。地元民にお願いするか。


 そんな所で落ち着いて。


 やはりというか、西門までの西通り中に目当てのお店が無かったために、その辺の大型店で観光マップを入手して。私は、付近の地元民っぽい住人達をつかまえ歩く。程なく例の魔石店にて【聖炎石】を正解し、三つ目の羽根を手に入れたとのクライスさんからの報告が。

 香炉ならお香の専門店でしょ。そんな話を得ていたために、「私はこのまま街の西側、お香のお店を当たってみます」と。クライスさんは了承の意と、方位磁石を売っていそうなお店の探索をする、そんな旨の言葉を零し通話を切った。

 さぁて、目印の花屋さんとは…と、ジュースを売っていたお姉さんからの情報ならばあの辺り…。しっかりジュースを買わされたのだが、有力な情報だった。うん、美味しい。ジュース美味い。そんな頭でさっさか歩く。

 そんな折り、道の反対側にてふと目に入った集団は、既に五本の羽根を持ち。


——あ、赤い羽根…しかも五本か…!


 先、越されてる!?と焦るのだけど。

 ルートが分かる最初の一本、出された五つの課題からして、まだ全部は集めていない。だから落ち着け!と心に語る。

 その時、目前の集団に居た男性のうちの一人が、同じように“ふと”こちらに視線を合わせ。


「?」


 ふっ、と笑ったような気がした…のは錯覚だったのか。

 すれ違い、そのまま花屋を目指した後ろ姿を、その人が再び見ていた、だとかは全く気付かぬ事だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。